実家に帰った時姉が嬉しそうにしていた、なにかあったのか聞くと想い人と恋仲になれたらしい。それに紅葉が綺麗な温泉街に記念に旅行もする計画を立てていたとも言っていた、土産も期待していてと笑っていた。それが俺の中で見た姉の最後の笑顔だった、次に見た姉は生気の無く遺体安置所で寝ている姿だった。恋仲と言っていた男は声にもならないなにかを呟きながら永遠と涙を流していた、この人も辛いだろう。若くして恋人をなくしたことは一生の悪夢になる、姉の恋人は詩軸 矢太郎と言う記者と探偵をしているという異色な肩書きだ。彼の印象は黒髪にやたらと白い肌でここに有るべきなのだとそばかすがある、男じゃなければ自分ですら好意が向くかもしれないと変な思考がとんだ。姉の葬式が行われる日程になってもその男、矢太郎は姿を見せなかった。あんなに泣いていたのに、いや泣いていたから来ないのだろうかと深く考えてしまう。次に矢太郎に出会ったのは病室だった、姉の死後後追いをしようと首を括ったが失敗したらしい。精神的な問題か記憶が一部無いと医者から聞かされた、病室の引き戸を開けると紅葉を見て涙を流してした。その姿は刹那げで痛々しくも感じた、警察機関の上から矢太郎と共に過ごし、事件に関与する事を命じられ監視のために同じ住居に住むことになった。なんとも奇妙なことで最初こそ気まずさがあったがいつの間にか一緒に住むことが当たり前になった。しばらくして矢太郎の異変に気付く、食事は前から細いと言ってあたが近頃は促さなければ一日に一回も食事を摂らなくなった。上からのお達しで遠い北の地に出張に行くことになる、真意は見えない。宿に着き食事をする、少し経ったころ発熱に近い物を感じた。矢太郎はあまり、いやほぼ食べていないのでそこまでではないようだ。熱い、だが熱特有の頭痛や吐き気はないが不思議な感覚だ。矢太郎は早々と布団に入ってしまった、矢太郎の寝顔は幼い。自分よりも年は上で男なのは明確なのにおかしい程に犯したい、だがどうしてそう思うのかわからない。感情が混ざり合い気付けば矢太郎に馬乗りになり首に手を掛けていた、手が熱く汗がじっとりと湧いてくる。姉のこと自分の感情のことすべてがこみ上げ涙腺が崩壊する、矢太郎がうっすらと目を開けた。普通抵抗するかなにかするはず、いやするべきなのに矢太郎は「どうして泣いている」とだけ言って踠く(もがく)こともせずただ受け入れるかのように頬に手を触れた。急に冷静になり感情はまだいるがそれよりこの熱を覚ますため部屋から出た、深いため息が出た。熱が落ち着いたのを感じた、さすがに冷えるので布団に入る。翌朝、矢太郎が先に起きたようで部屋を出た音で目が覚めた。不意に付いていくと凄惨な光景があった女将と思わしき人が冷たくなり矢太郎が今にも倒れそうになっている、矢太郎をどうにか落ち着かせると、もう一人の宿泊者が犯人だと息絶え絶えに言った。その後は忙しくなんとか銀世界を後にし報告を済ませた、帰り際に朝桐さんに声をかけられた。数々の難事件を解決したと有名で名前だけ知っていた、矢太郎との会話を聞いていると能力という話題があった、姉もその能力とやらを持っていると聞いたことがある花が浮いて見えるという大まかな内容しか聞かされなかったがもしやと思い帰宅後矢太郎に聞いた。案の定だった、姉も似た能力だと確信し、同時にどうしてそれを自分に話さなかったという悔しさが頭を占領する。
矢太郎と過ごすうちに食事面も改善し、少しずつ回復しているようにみえる。連日の激務に疲れ久しぶりのまともな休暇、昼過ぎまで寝ていた、矢太郎が起きたのか物音で目が覚める。お互いにあいさつをし欠伸(あくび)をするなにかを思い立ったかのように楽しそうに身支度をする矢太郎に安堵の気持ちが浮かぶ。
どうやら出かけるらしく同行することにした、向かった先はこじんまりとした甘味処で昔の行きつけらしい、正直矢太郎にどう説明するかためらう。今の矢太郎は死亡したということになっている、馴染みの店にいくのは危険だ。後ろから最近聞いた声が聞こえた、朝桐さんだ。この状況を瞬時に判断し矢太郎と待つように言った、「この間に説明をするように」という意図がわかった。正直に事を伝えると矢太郎は悲しさを隠した笑顔を見せた、その後朝桐さんが買ってきた団子を矢太と選ぶ時、朝桐さんと矢太郎の手が触れ、なにかまずいと感じ二人の間には入る。考え無しに入ったので挙動不審になり二人に笑われた。
これが最近の恥ずかしかった話だ
今後、矢太郎が記憶を全て思いだしたら自分は一から十まで話す。そして二度と矢太郎とは関わらないだろう
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