私
達は、この世のあらゆるものを、 たった一つの視点からしか見ることができない。
それはまるで、檻の中に閉じ込められた囚人のように。
どんなに小さな視点でも、物事の本質を見抜くことさえできれば、 人生は決して不幸ではないはずだ。
「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くが如し……」
『徒然草』にはこんな言葉がある。
この言葉の通り、人は誰しも人生の重みに耐えながら生きている。
しかし、人によっては、「自分の人生を背負えるほど強くはない」と思う人もいるかもしれない。
そんな人たちのために、わたしたちはいる。
あなたたちが望むものは、なんでも叶えてあげるよ。
どんなものでも、必ずね。
たとえ命だって……。
だけど忘れちゃだめだよ? あなたたち人間には、ちゃんと寿命があるからね! あなたたちには、いつか死が訪れる。
だから、今のうちに楽しんでおかなくっちゃ!! さあ、お好きなものを言ってごらんなさいな? あなたたちの欲しいものをあげましょう。
あなたの望むことを教えてください。
あなたの夢を聞かせてください。
あなただけの物語を見せてあげよう。
それこそが、最高のプレゼントなのだから。
「ねぇ、お兄ちゃん!あの雲はなんの形に見える?」
妹の声が聞こえた気がして空を見上げると、そこには大きな入道雲があった。
「んー……そうだね、あれは飛行機じゃないかな?」
「えぇ!?どこからどこまでが飛行機なのぉ〜?あんなに大きいよ!」
「さぁ?あの高さだと……多分、翼の部分だと思うけど……」
「じゃあさ!あそこにあるのは何に見える?ほらっ!指差している人がいるじゃん!!」
妹の指す方向を見ると確かにいた。
それも一人ではなく、何人も。
まるで何かに取り憑かれたかのように一点を凝視していた。
「あそこは……マンションかな?うん、きっとそうだよ」
「ふぅ~ん……そっか!ありがとう!!私ちょっと行ってくるね〜」
「あっ!待てっ!まだ話は終わっていないぞ!!」
僕の制止を振り切り妹は駆け出した。
そして案の定と言うべきか、足を滑らせて盛大に転けた。
僕は慌てて走り出し、なんとか間に合ったのだが……
「痛ったいなぁ〜もう!なんで邪魔するのよ!」
地面に倒れたままの妹は僕を睨んで文句を言う。
しかし、転ぶ原因となった張本人は、そんなこと意にも介さず、ずっと同じ所を眺め続けていた。
「ほら、早く起きろって」
手を掴んで引っ張ると、妹は勢いよく立ち上がった。
「うわっととと……よし、ありがと」
「まったくお前は……一体何を見ていたんだよ」
呆れた顔で問うと、妹は少し恥ずかしそうな顔をした。
「だって……僕はもう……」
諦めかけたその時、 突然目の前に現れた不思議な女の子。
彼女は僕に手を差し伸べてくれた。
それは救いの手だったのか? はたまた悪魔の誘惑だったのか? どちらにせよ、僕の答えはすでに決まっていた。
―――僕は彼女の手を握り返す。
そうして生まれたのがこの物語だ。
さあ行こう! 新たな旅の始まりだ!!
「ねえ、一緒に冒険しようよ!」
『うん!』
「これからよろしくね!」
『こちらこそ!!』
こうしてふたりの冒険が始まった。
しかしそこには想像を絶する困難が待ち受けていて……!?
「えぇ~っ!?」
『なんで?』
「ちょっと待って!!」
『まだ何も始まっていない』
「どうしてこうなった?」
『これが運命だから』
「誰か助けてーっ!!!」
果たしてふたりの旅路の行方はいかに?
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