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私の名前は佐藤真琴と言います。今年二十歳になる大学生です。趣味は読書と映画鑑賞です。
私が住んでいる所は田舎なのですが、大学の近くにコンビニがありました。私はよくそこで買い物をするのですが、ある日のことレジ打ちをしている店員さんを見てびっくりしました。なぜなら……
「えぇ!? あの人って、『勇者』様じゃないですか!」
そう、なんとその人は、異世界から召喚された勇者様なんです!
「あれ? 君、俺のファン?」
「はい! ファンです! 握手して下さい!!」
「もちろんだよ~」
私は勇者様に握手をしてもらいました。あぁ、やっぱり本物の勇者様の手は温かくて気持ち良いですね。
それからというもの私は毎日のように勇者様のお店に通い詰めました。
そんなある日のことです。私はいつものようにお店で買い物をしていました。今日は何を食べようかな。
ん? 何か視線を感じる。後ろを振り向くとそこには小学生くらいの少女がいました。
「わーかわいい子がいるなぁ」と思っていると、その子が突然こちらに向かって走ってきました。
そしてそのまま私の胸に飛び込んで来ました。
「ぎゅー」
「ど、どうしたの?」
私は困惑しながら訊ねました。
「お母さんが迷子になっちゃったの。だから一緒に探して欲しいの」
そう言って僕の手を握り締めた彼女はとても小さくて……
僕達は母さんを探し回った。
僕は彼女の願いを叶えるために必死だった。
だけど、どれだけ探し回っても見つからないまま夜になり……
結局は警察を呼ぶことになってしまった。
「もういいよ。ありがとうね」
泣きながら笑う彼女に何もしてあげられなくて……
彼女がいなくなった後で気づいたんだ。
あの時もっとちゃんと彼女を見てあげればよかったって。
そうしたらあんな結末にはきっとならなかったはずだから。
僕はずっと後悔しているんだよ。
君に謝れなかったことを――
***
「おい! 大丈夫か!?」
肩を強く揺さぶられて、俺はハッと我に返った。
「あぁ、悪い。ちょっとボーッとしていたよ。」
「……大丈夫?」
心配そうに見つめてくる彼女の視線から目をそらして、僕は言った。
「うん、もう平気だよ。」
「よかった。」
彼女はホッとした様子を見せたあと、笑顔を浮かべた。
僕もつられて笑ったけれど、それはどこかぎこちないものになっていたと思う。
「それでね、昨日お姉ちゃんが……」
嬉々として語る彼女に対して、相づちを打ちながら聞き手にまわる。
これが僕のいつも通りだった。
彼女と過ごす時間は楽しくて穏やかだけど、同時に息苦しさを感じることもあった。
それでも彼女が喜んでくれるならと思い、僕は今日も同じことを繰り返す。
ふとした瞬間に感じる違和感の正体にも気がつかないフリをして。
このままではいけないと思ったときには遅かった。
もう取り返しの付かないところまで来てしまっていたのだ。
「ねぇ、聞いてる?」
「えっ!?ごめん!もう一度言ってもらえる?」
「まったくしょうがないな〜。だから、明日一緒に遊ぼうよって話!」
「ああ、そうだよね。もちろん行くよ。」
「やったー!じゃあまた連絡するね!」
「わかった。」
約束を取り付けてから満足げに帰っていく彼女を見送りつつ、僕はぼんやりと考える。
(明日こそ……)
そう思って眠りについた夜は数知れずあった。それでも翌朝を迎えるたびに同じことを考えるのだ。今日こそ、昨日できなかったことをしよう――しかし結局何もできないまま一日を終えてしまう。そしてまた思うのだ。明日こそ、今度こそは……。
そんなことを繰り返しながら私は歳を重ねてきた。もちろん何かしらの進歩があったわけではない。ただただ無意味な日々を過ごして生きてきただけだ。
いつからだろうか。私はこんなふうになってしまった。子供の頃はもっと前向きだった気がする。少なくとも自分の意志というものを持って生きていたと思う。あの頃の自分に戻れたらと何度思ったことか……。しかしもう遅いのだ。時の流れは止まらない。どんなにもどかしくとも時は残酷に流れ続ける。私がいくら足掻こうとも流れを止めることはできない。ならばせめて過去の自分を羨ましく思うくらいは許してほしい。今の自分が惨めだから昔の自分に戻りたいなどとは決して思ってはいない。ただ少しだけ昔のように明るく振る舞えればどれだけ良いかと思っているだけだ。過去に囚われてばかりいても前には進めないとわかっていてもつい考え込んでしまう。
今年で四十三歳になる私だが、未だに独身である。若い頃は何事もそれなりに上手くいった。勉強だってスポーツだって人並み以上にできたほうだと思う。それなのに何故結婚できないのか? それはきっと私のせいではない。周りの人間が悪いのだ。そうに違いない。学生時代の友人たちは皆結婚し子供まで作っていた。それに比べて私はどうだ。誰一人として結婚した者はいなかった。就職して数年ほど経った頃だろうか。同僚たちが次々に寿退社していく中、何故か取り残されたように独り身のままでいた。職場の同僚たちには陰口を叩かれ、上司からは嫌味を言われ続けた。それでもまだ若かった私は特に気にしていなかった。仕事さえこなしていればいつかは認めてもらえると本気で思っていたからだ。しかし現実は違った。仕事を頑張ったところで何も変わらなかった。寧ろますます悪くなった