「一緒に帰った弟……さんは?」
「あ、あいつは……」
不思議だ。
さして親しくもない、今日会ったばかりの人物とこんなに近い距離で、遠慮がちとはいえ顔にまで触れられているのに。
それなのに不快だと感じない。
「さっきまでここにいたんだけど。義弟は用事で……」
「こんな暗い道に白川さんひとり置いて?」
「いやぁ……私は大丈夫だよ。い、いざとなったら不思議な力に目覚めたり目覚めなかったりするつもりだし……ははっ」
まっすぐ見つめられて、星歌の笑い声は途切れた。
「しょ、翔太さん、手はなして……」
あっと小さく呟いて、翔太がまるで火傷でもしたかのように腕ごとのけぞらせる。
「ご、ごめん……」
うつむく翔太。
数秒、気まずい空気が場を支配する。
そんな中、彼はパクパクと口を動かした。
「サンはいらないよ……」
「えっ?」
「ぼ、僕のことは、翔太って呼んでくれたら、いい……から」
「一緒に帰った弟……さんは?」
「あ、あいつは……」
不思議だ。
さして親しくもない、今日会ったばかりの人物とこんなに近い距離で、遠慮がちとはいえ顔にまで触れられているのに。
それなのに不快だと感じない。
「さっきまでここにいたんだけど。義弟は用事で……」
「こんな暗い道に白川さんひとり置いて?」
「いやぁ……私は大丈夫だよ。い、いざとなったら不思議な力に目覚めたり目覚めなかったりするつもりだし……ははっ」
まっすぐ見つめられて、星歌の笑い声は途切れた。
「しょ、翔太さん、手はなして……」
あっと小さく呟いて、翔太がまるで火傷でもしたかのように腕ごとのけぞらせる。
「ご、ごめん……」
うつむく翔太。
数秒、気まずい空気が場を支配する。
そんな中、彼はパクパクと口を動かした。
「サンはいらないよ……」
「えっ?」
「ぼ、僕のことは、翔太って呼んでくれたら、いい……から」
続いて強い力で後方へと引っ張られる。
前方にいる翔太が唖然と口を開ける様を視界に捉えつつ、とっさに両足を踏みしめてバランスをとった。
振り返りかけた星歌の髪に、低い声が降り注ぐ。
「探したよ、星歌」
声は硬く、僅かに怒りを含んでいるのが伺えた。
行人である。
義弟の登場にホッとしたのは確かだ。
だが、彼の身体がいつになく強張っていることに、星歌は怯えた。
「よ、用は終わったの?」
問うと、行人は小さなため息。
フウッと吐き出す中に苛立ちの感情を込めて、それは体内から負の感情を追い出す儀式にも見受けられた。
「心配したよ。星歌の家に行ったらまだ暗いし、俺ん家にもいないし。何回も電話したけど繋がらないし。まさかと思って戻ってきたら、まだこんな所にいたなんて」
一息に喋るも、少し呼吸が乱れているのが分かった。
自分を探して走ってくれたのか、そう思うと不思議なことに指先が震える。
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