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04. 檻の鍵は閉ざされる
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ひめは、校門の前で立ち止まった。
夕暮れの光が世界を橙色に染めている。
――ねねは、まだ来ない。
待ち合わせをしていたわけじゃない。
でも、ねねはいつも、ひめを見つける。
それは、まるで最初からすべて決まっているみたいに。
「ひめちゃん」
その声を聞いた瞬間、心臓が跳ねた。
振り返ると、ねねが立っていた。
赤く染まった空の下、ねねの髪は淡い金色に輝いていた。
少し駆け足で近づいてくるねねの笑顔に、ひめの息が詰まる。
「待たせちゃった?」
「……ううん」
ひめが首を振ると、ねねは満足そうに微笑んだ。
指先が触れる。
ねねはひめの手を取ると、そのまま歩き出した。
「今日はね、ひめちゃんの家に行ってもいい?」
「……うん」
ねねが望むなら、断る理由なんてない。
ひめが頷くと、ねねの指が少しだけ強く絡まった。
「ひめちゃん、優しいね」
「……そう、かな」
「うん。だから、ねねが守らないと」
まるで呪いのように、ねねは囁く。
ねねが言う「守る」という言葉の意味を、ひめは知っている。
――この手を、もう誰にも触れさせない。
――この心を、もう誰にも見せさせない。
そうやって、ひめの世界を閉ざしていく。
でも、それでいい。
ひめは、ねねの手の中でしか生きられないのだから。