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次の日も、朝から涼ちゃんはベッドの上に小さくなって座っていた。窓の外をぼんやりと眺めるだけで、体も気持ちも重かった。
「今日は手芸、行く?」
𓏸𓏸がそっと声をかける。
涼ちゃんは、遠慮がちに小さく首を振った。
「……行かない」
𓏸𓏸は「わかった。先生に伝えておくね」とだけ言って、
寂しさと心配を隠しながら静かに部屋を出ていった。
その頃、手芸教室では昨日と変わらぬ高校生たちが集まっていた。
ふと誰かが周囲を見回す。
「あれ、今日も涼ちゃん来てない」
「やっぱりまだ具合悪いのかな」
「昨日も途中で帰ったし……」
「なんか、ずっと入院してるみたいだよ」
噂は、また自然と広がり始めた。
「先生も心配してたよね」
「あんなに静かだと、逆に不安になる」
「本当はどんな子なんだろうね……」
手芸の輪の端っこで、
涼ちゃんのことを話す小さな声が、
いつまでも部屋の片隅を漂っていた。
やがて、誰かがふと話題を変え、
またそれぞれの作業へと戻っていったが――
空席の椅子だけが、昨日と同じようにそこに残されたままだった。