結果から言うと、京都旅行初日は俺のせいで散々だった。東京では何も珍しくないこの見た目が、京都ではえらく神秘的なものに映ったみたいだった。行く先々で日本語だけでなく各国の言葉で声をかけられ写真を求められ、その度にもふくんがスマホの翻訳を駆使しながら俺を助けてくれた。
「…もふくん、なんかごめん…」
「いやー、どぬくさんの海外受け抜群な容姿のことすっかり忘れてたなぁ…」
「うぅ…もふくん見たいやつ満足に見れなかったよね…」
「対応忙しかったけどまぁ勉強になったし、ちゃんと見れてるからそこは気にしないでー」
「明日はちゃんと落ち着いて周りたいね…」
「あー、まぁねまぁね」
もふくんは気にしなくていいって言ってくれるけど全然気にする。京都なんて滅多に行けないんだぞ。もふくんに対しての申し訳なさと、もっと2人きりになりたかったという悲しさでどんどんテンションが下がってきた。せっかくの旅行だったのに。俺あんなに勇気を振り絞ってもふくんを旅行に誘えたのに。こっちは勇気とお金とえとさんへの八ツ橋がかかってるんですよ!!!
『でも、ひとつ良いこともあったんだよなぁ』
他県から来た女の子2人組に一緒に写真撮影を求められた時、さっともふくんがその2人の前に立って対応してくれて、ちゃんと俺に撮影していいかって伺ってくれて、OKを出すとスマートに女の子のスマホで撮影してくれた。その女の子のうちの1人ともふくんが撮った画像を確認している時に、もう1人の女の子がこそっと俺に言ってきた。
「ごめんなさい、せっかくの彼氏さんとのデート邪魔してますよね」
「ぅえ!?」
「彼氏さんすごい優しいですね、いいなー」
「ぅあ、…はい…」
もふくんが俺の彼氏さんに見えてたっていう奇跡が、デートっていう言葉が、どんよりしている心の中でもしっかりときらきら輝いているみたいだった。
『明日は絶対に誰にも邪魔されないで2人で京都を満喫したいなぁ…』
もふくんと今以上に仲良くなって帰るっていうミッションを俺はまだ諦めきれていない。
コメント
4件
八つ橋から離れてないどぬくさんも、いつも(以上に?)スマートなもふくんも、応援してくれてるえとさんも、女の子二人組も、みんな可愛くて大好きです(*´꒳`*)
続き待ってます