テラーノベル
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翌日、布団で眼を覚ました俺は、唇をそっと撫でる。
昨夜のキスを想い出し、涼ちゃんと気持ちを通じ合えた事を確認した。
一階へ降りて、居間を見ると、滉斗が昨夜のまま転がっている。
昨日の夜、滉斗がシャワーから上がった後、俺と涼ちゃんは、お互いの気持ちが通じ合った事を滉斗に報告した。滉斗は、涙を流しながら喜んでくれて、その後、涼ちゃんと滉斗が酒盛りをしてお祝いしていた。俺がジュースを持ちながら口を尖らすと、元貴はまだダメ、と涼ちゃんが困ったように笑った。
「そろそろ滉斗起こす?」
キッチンから、涼ちゃんが顔を出す。俺は、その声に振り返って、涼ちゃんの顔を見た途端、顔が熱くなった。俺を好きだと言ってくれた涼ちゃんの顔が、いつもよりもすごく綺麗に見えて。髪をハーフアップにくくり、更に大人っぽくもある。
「…滉斗、あれで寝れてんのかな。」
「どうだろね、僕がやったら身体バキバキになっちゃうだろうけど、まだ若いし大丈夫なんじゃない?」
「…涼ちゃんだって、まだ若いよ。」
「そう?ありがとう。」
柔らかく笑う涼ちゃんに歩み寄って、手を握る。涼ちゃんが黙って、その手をギュッと握り返してくれた。
「…キスしていい?」
「…滉斗、起きないかな…。」
「起きてもいいじゃん。」
「…ダメだよ、恥ずかしい。」
「じゃあ、早くしよ。」
「…うん。」
涼ちゃんが少し下を向いて眼を閉じる。俺より背の高い恋人に悔しく思いながら、ちょっと上を向いてキスをする。
昨日のように、優しいキスだけで終わらせようと顔を離したが、涼ちゃんが少しだけ唇を追いかけて来た。
俺は、そのキスに煽られるように、強く唇を押し付ける。
「ん…。」
ビックリしたような涼ちゃんの小さな声が漏れた途端に、俺の舌を口内へ割り入れる。どんどんと涼ちゃんを後ろへ追い詰めて、キッチンのテーブルに涼ちゃんが後ろ手をついて腰をもたれ掛からせた。俺も涼ちゃん越しにテーブルに両手をついて、少し膝を折って背が低くなった涼ちゃんに、真正面から尚も深いキスを落とす。
「ん…っ…ま…て。」
涼ちゃんが、片手で俺の胸元を押して、制止する。不満そうな顔を浮かべて、俺はしょうがなく顔を離した。
「…ちょっと…やりすぎ…。」
「…もっと。」
「ねぇ…ホントに。」
涼ちゃんが小さく首を振る。そんな真っ赤な顔をして、瞳だって潤んでるくせに。
「じゃあ…夜ならいい?」
涼ちゃんの耳元で、懇願する。涼ちゃんはしばらく考えたのち、眼を伏せたまま頷く。俺は、満足気に微笑んで、最後に軽くキスをし、居間へと振り返って行った。
「おーい、滉斗、大丈夫ー?」
「ん゛〜〜〜…頭いてぇ…。」
「何いっちょ前に二日酔いなってんだよ…。」
「元貴、滉斗にお水持ってってあげて。」
キッチンから声がして、水を取りに行く。はい、と濡れたコップを手渡す涼ちゃんに、ありがと、と言ってもう一度軽くキスをした。眼を丸くする涼ちゃんに、したり顔を向けてから、滉斗の元へと水を運ぶ。
「んー………っふぅ…。ありがと。」
「だいじょぶかよ。」
「朝ごはん、どうする?」
キッチンから涼ちゃんの声が呼ぶ。滉斗は頭を軽く振って、また横になった。
「はぁ、しょうがない、ちょっとゆっくりしよっか。」
「滉斗が一番出かけたがってたのにね。」
涼ちゃんは、トーストを用意しながら、クスクスと笑う。俺は、冷蔵庫に入っているアイスコーヒーをコップに移し、ミルクを注いで用意する。
「涼ちゃんは?ブラック?」
「あ、うん、ありがとう。」
2人分用意して、床に寝そべっている滉斗を避けて、とりあえず俺たちだけ朝食を取った。
今日は、少し雲が空を覆っていて、昨日より陽射しはマシになっている。
「…今日なら行けそう、俺用意してくるわ。」
「外?無理しなくていいよ?」
「大丈夫、日焼け止め塗るから。」
そう言って、玄関の靴箱の上に置いてある日焼け止めを、顔から手脚全てに塗りたくる。これで、火傷まではいかないだろう。
しばらくして、アイスコーヒーだけを飲み干した滉斗が、のそのそと準備をし始めた。首に、フィルムカメラを下げる。
「ん?何それ。」
「昨日、納戸に花火探しに行ったら、あった。」
「たぶん、僕のお父さんの。」
「へぇ、使えるの?」
「うん、いけるみたい。はい、チーズ。」
滉斗が俺らに向けてファインダーを覗く。すぐに2人でピースを作ると、シャッター音が響いた。
外に出ると、涼ちゃんが腰に手を当てて空を見上げる。
「ホントだね、昨日より陽射しがマシだ。」
「んじゃ、トンネルの方から行きますか!」
「お前元気だねー…。」
「お日様浴びたら復活復活!」
「うるせー…。」
「でもホント、お日様気持ちーね。」
先を涼ちゃんと滉斗がサクサクと歩いて、俺はその後を歩く。いつもそうだった。元気な2人に、懸命について行く俺。よーいドン、なんて言われて走り出すと、前を行く2人の姿が見えなくなりそうで、ちょっと怖くなりながら一生懸命に走っていたっけ。
「お、いいもん見っけ!」
「あぶな、滉斗が棒持つとなんか危ない。」
「そんなことねーよーん。」
トンネルに入ると、道の脇に大きめの木の棒を見つけて、滉斗が拾いに戻る。涼ちゃんがそれを待って少し歩みを緩めたので、俺が先頭になった。
「涼ちゃん、覚悟!」
「よし、こい!」
「おりゃー!りゃー、りゃー、りゃー…。」
滉斗が後ろで、涼ちゃんへ向かって真剣白刃取りの真似っこで遊ぶ。俺は振り向きながら、ふふ、と笑って、先を進む。
「おい待てよー。」
「おいてかないでー。」
2人が急いで追いついてくる。たまには先を歩くのもいいもんだ、と俺は2人を待ちながら思った。
分かれ道に着いて、俺は立ち止まる。
「これ、どっち?」
「よし、まかせろ!」
滉斗が棒を放り投げて、左の道へ向かってパタリと落ちた。
「おし、こっち!」
「よーし行こー!」
「ホントかよ…。」
俺は半ば呆れながら、また2人について行く。だんだんと、川辺に近づくのが分かった。俺の足取りが、少し遅くなる。暑さのせいもあるが、それだけじゃ無い。
サラサラと水が流れる音がして、砂利がたくさん敷き詰められた川原に着いた。俺は、近くの大きな木の影に入り、深く息を吐く。
「元貴、大丈夫?」
「うん、暑さにやられただけ。」
「そう?ちょっとここで休んどく?」
「うん、そーする。」
「涼ちゃん来て来て!魚いる!」
「うそ、どこ!?」
滉斗が川縁に立って中を覗き、はしゃいで涼ちゃんを呼ぶ。俺は、嫌な気持ちと共に吹き出す汗を、Tシャツを摘んで顔と一緒に拭いた。
あの時も、こんな風に、俺は離れた場所から2人を見つめていたっけ…。
汗ではない雫が、頬を伝う。2人に悟られぬよう、袖でこまめに目元を拭く。
「元貴ー、大丈夫ー?」
涼ちゃんが、川から声をかけて来た。俺は立ち上がり、ゆっくりと2人の元へ向かう。
「…大丈夫?」
「うん、平気。」
涼ちゃんが、ホッとしたように微笑んで、川縁にしゃがむ。
「ほら、ここにちっちゃい魚いるよ。」
「ホントだ。」
「あ、見て、誰かの釣竿落ちてる。これいけるんじゃない?」
「餌がないじゃん。」
「これでいってみよ。」
「小石じゃ無理だって。」
俺たちが川に向かって釣竿を揺らして談笑していると、滉斗が少し離れた場所から、こちらをファインダーに収める。
石投げをしたり、足を濡らしながら小さな中洲の方へ行ってみたり、随分と久しぶりにした川遊びは、思いの外楽しいものだった。
「暑い!アイス食お!」
「そうだね。」
「あのバス停で食べよ。」
「買ってくる。」
3人から、2人が離れて行く。
「アイス3つください。」
近くの商店のお婆ちゃんが、怪訝な眼で見つめる。
「3つ…?」
「買って来たよ。」
「ありがとう。」
「いただきます。」
バス停で3人がそれぞれに腰を据えながら、アイスを頬張る。口がひんやりして、少し傾いた陽射しが、影を伸ばす。
「…よし、帰ろっか。」
滉斗がバス停の影から足を踏み出して、俺たちを誘う。アイスの棒を手に持ちながら、俺たちはゾロゾロと家に向かって歩みを進めた。
ふと、遠くからまた祭囃子が聴こえた。お祭りの2日目が始まる。
「…俺、今日お祭り行ってくるわ。」
「え?」
「初恋の子に会ってくる。」
滉斗が、そう言って笑った。踵を返して、お祭りへ向かう道を進んで行く。俺と涼ちゃんは、顔を見合わせて、そっと手を繋いだ。
「気遣わせちゃったね。」
「そうだね。…ありがたく、受け取ろうよ。」
「うん。」
涼ちゃんが微笑んで、俺の手をギュッと握る。俺たちは、しつこく残る蝉の声と、遠くの森から響くヒグラシの声が重なる中を、ゆっくりと歩いて帰った。
家に着いて、まず俺からシャワーを浴びさせてもらう事になった。日焼け止めが肌に纏わり付いて鬱陶しいのと、嫌な汗を全て一度洗い流したかったからだ。
サッと上がって、居間にいる涼ちゃんに声をかける。
「お先。次涼ちゃんどうぞ。」
「うん。」
俺は、涼ちゃんとすれ違い様に、手を取り耳打ちする。
「…涼ちゃんの部屋で待ってる。」
「…うん。」
涼ちゃんは、か細い声で返事をすると、お風呂場へと歩いて行った。
俺は、洗面所で見つけてくすねて来た、シェービングローションを持って、涼ちゃんの部屋へと階段を上がって行く。ドアを開けると、布団が一組敷かれ、学習机や子どもの頃の荷物なんかが少し整理されつつそのまま置かれていた。
俺は、部屋に入ったところで、しばらく動けずにいた。あまりにその匂いが、そのまま過ぎて。あの頃、よくこの部屋に集まっていた。懐かしさに、少し涙が眼に溜まる。
「元貴。」
後ろから、愛しい人の声が俺の名前を呼ぶ。ゆっくりと振り返ると、しっとりと髪を湿らせた涼ちゃんが、立っていた。シャツと短パンで、いかにも部屋着姿。なのに、それはとても妖艶に映って。すぐにその手を引いて、布団に優しく組み敷く。涼ちゃんの眼は俺をしっかりと捉えて、揺れていた。
「…愛してるよ、涼ちゃん。」
「…僕も、愛してる、元貴。」
今一度、確認するように、お互いに気持ちを伝え合う。西陽が部屋を橙に染める中で、俺たちは貪るようなキスをした。部屋を冷やすクーラーの音が、俺たちを包み込む。
涼ちゃんに跨りながら、俺はシャツを脱いだ。ばさりと落ちる前髪を鬱陶しそうに頭を振って避けると、涼ちゃんのシャツにも手を伸ばす。
「脱がせていい?」
「…うん。あ、自分で、脱ぐ。」
恥ずかしくなったのか、涼ちゃんは返事を訂正して、俺の下でモゾモゾとシャツを脱いだ。シャツの下の、まだ日に焼けていない白い肌が現れて、俺の眼は釘付けになる。
「…あんまり見ないで…。」
「白くてキレイ…。」
「いや、元貴の方が白くてキレイだよ。」
涼ちゃんが、俺のお腹の辺りをそっと撫でる。俺も、涼ちゃんの胸元を触る。
「ん…。」
蕾に指が触れると、涼ちゃんの口から声が漏れた。俺は、ゆっくりと顔を降ろして、その蕾に唇を触れた。ちゅ、と音が鳴り、さらに舌で何度も舐め上げる。
「ん…あ…!」
涼ちゃんの身体がピクッと跳ねて、俺の腕を掴む。そのまま胸を舌で玩弄しつつ、手を下へと伸ばす。初め服の上から優しく擦っていたが、焦ったくなって、一気に手をズボンの中へ突っ込んだ。先が濡れて、すでに大きく膨らむそれを、手で包んで優しく扱く。
「あ…ん…、は…あ…!」
涼ちゃんから惜しみなく嬌声が漏れ出て、俺はどんどんと情欲が昂っていく。
涼ちゃんのズボンを下着ごと除けると、硬くなったモノを口に含んだ。
「あ、わ…!」
涼ちゃんが驚き、色気のない声を出したが、俺が舌を纏わらせて頭を上下に動かすと、すぐに甘い声に変わった。
「あ…っ!ん…、んん…!」
ビクビクと身体を震わせ、快感が限界に達する前に、ちゅぽん、と口を離す。
「あ…ぇ…?」
「まだイかせない。」
握ったまま、ニヤリと笑うと、涼ちゃんが困ったように眉を下げた。
「…いじわる…。」
「だって、俺ので気持ち良くなって欲しいもん。 」
顔を近づけて、キスをする。一度身体を離して、シェービングローションを手に取り出す。
「…それ…よく見つけたね…。」
「流石に唾だけじゃ痛そうだし。」
手に取り出すと、少し粘度が高すぎるそれに、唾液を垂らして柔らかく滑りやすくした。
「…なんか、元貴慣れてる?」
「まさか!」
慌てて涼ちゃんに近付き、ここ触って、と自分の胸元を指し示す。涼ちゃんの手が、ヒヤリと当たり、俺の速くなってる鼓動を感じさせる。
「慣れてたらこんなんなってないって。」
「…うん、ごめん。」
そのまま顔を近づけて、首筋にちゅ、ちゅ、と唇を寄せながら、涼ちゃんの孔に指を沈めていく。くちゅくちゅと音を鳴らして、しっかりと柔らかくなるよう解す。
指を増やして、さらに押し広げていく。流石に苦しいのか、涼ちゃんの顔が少し歪む。
「大丈夫?」
「ん…う…。」
「気持ちいとこ教えて?」
「や…むり…!」
「涼ちゃんに気持ち良くなって欲しいの。どこ?ここ?」
「…そ…な…わか…なぃ…。…ぁあっ!」
この辺かな、と予想を付けてグニグニと指を動かしたところが、どうやら当たったらしい。腰がビクンと跳ねて、一際大きな声を出した。
「や、な、なに…だめ…、あぁ…!」
「うそ、ダメじゃ無いでしょ、ここ気持ちいんだ。」
「や、も…だめ…元貴…っ!」
強めに名前を呼ばれ、指の動きを止めた。肩で息をする涼ちゃんが、手を伸ばして俺を呼ぶ。微笑みながら、その腕に絡め取られる。
「…なぁに?」
「…も…入れて…。」
「…いいの?」
こくこくと、小さく頷く。俺は、短パンのジッパーを降ろして、下着も一緒に脱ぎ去る。手についたローションを、自身によく塗りつけ、涼ちゃんの孔の潤いも指で確認する。脚を広げて、腰を前に進めながら、涼ちゃんのナカヘ入り込んで行く。
「ぅ…ん…ぅ…。」
苦しそうな、切ないような声を漏らして、涼ちゃんがゆっくりと俺を受け入れてくれる。半分ほど進んだところで、俺は涼ちゃんの身体を引き上げた。
「え…?」
「自分で入れた方が、痛く無いのかも。やってみて?」
うまく身体を起こせなくて、ちゅぽ、と繋がりが抜けてしまった。改めて、俺が胡座をかいた上に、涼ちゃんが跨る。俺の肩に手を置き、俺がモノを固定して調節しながら、涼ちゃんがゆっくりと沈んでいく。
「は…んぅ…。」
「いける?」
「うん…あ…。」
「…入った。」
二人で、しばらくぎゅう、と抱き合った。俺が顔を上に向けて、涼ちゃんが上からキスを落とす。涼ちゃんの方から舌を絡ませてきて、俺も負けじと涼ちゃんの舌を味わう。
「動ける?」
「うん…。 」
ぬちゅ、とゆっくり涼ちゃんが上下に動く。
「あ…ふ…っ…。」
「涼ちゃん…いたい?」
ふるふると頭を横にしたので、俺は両手を後ろについて、軽く腰を上に突き上げてみる。
「あっ!んっ…!あ、は…あっ!」
涼ちゃんから嬌声が上がり、俺に縋り付くように抱きついてくる。外から、きゃあきゃあと、子ども達がはしゃぎながら祭りへ走っていく声が聞こえてきた。俺に揺さぶられながら、ゆらりと涼ちゃんが顔を正面に持って来る。僅かな間にすっかり暗くなった部屋に、柔らかな外灯りが入ってきて、涼ちゃんの輪郭だけを緩やかに浮かび上がらせた。ピンクと赤のグラデーションの髪が、涼ちゃんの顔に掛かって、目元が隠れている。ゆるく開いた唇が、厭に煽情的で腹の奥がゾクゾクと疼いた。
「涼ちゃん、大好き。」
「ん…元貴、大好きだよ…。」
大人びた声で、静かに愛を囁きながら、俺の唇を食べる。むちゅ、くちゅ、と音を立てて唇と舌を交合わせながら、涼ちゃんを支えて布団にその身体を下ろす。
脚を広げて、ゆるゆると抽挿を繰り返すと、涼ちゃんの呼吸が荒くなる。涼ちゃんの膝を抱えたまま、手を布団に着いて腰を強く動かす。水音を含んだ打擲音が、部屋にこだまする。
「あ、あ、ん…あぁっ!」
「涼ちゃん、涼ちゃん…!」
「元貴…!」
お互いにしがみついて、俺は夢中で腰を振った。涼ちゃんが苦しいかも、なんてもう頭には無くて、俺のどろどろとした欲で涼ちゃんのナカを満たしたい、ただそれだけで動いていた。自分勝手に腰を振り続け、限界に達した時、涼ちゃんの奥へとそれを全て吐き出した。俺も、涼ちゃんも、ビクビクと身体を震わせて、潰れるんじゃ無いかと思う程に、抱きしめ合っていた。
一度、涼ちゃんの中で果てた後、しばらくは抱き合って横になっていたが、俺が涼ちゃんの腰を後ろから持ち上げると、静かに後ろを突き出して、それに応えてくれた。俺たちは、時間の許す限り、何度も形を変えて、全力で愛し合った。自分の身体に、相手の体に、全てを刻みつけたくて、必死になって抱き合った。
最後に、涼ちゃんが俺の上に乗って抱きつく形で、涼ちゃんの中へ何度目かの欲を吐き出した。二人とも、肩で息を繰り返して、涼ちゃんもぐったりと俺に乗り掛かったまま動かない。
ゆっくりと俺をナカから引き抜いて、涼ちゃんが横にパタリと倒れ込む。俺は、涼ちゃんの方を向いて、ギュッと抱き締める。
外から、ぽん、ぽん、と、祭りの最後を告げる花火が遠くから聞こえた。
「…滉斗、帰ってくるね…。」
「…スイカ、半分残ってたよな。」
「うん、切っといてあげようか。」
「…じゃあ、一緒にシャワー浴びちゃお。」
おでこにキスをすると、涼ちゃんは嬉しそうに、うん、と笑った。
「ただいまー!」
玄関から、いつもよりも大きな声で滉斗が帰宅を知らせる。きっと、俺たちへの牽制だろうと思うほどの声量だった。
「おかえり、スイカ切ってるよ。」
「あ、マジ?!やった!」
「手洗って来い。」
「はいはーい。」
スイカを居間に運びながら、ふふ、と涼ちゃんが笑う。
「なんか、僕らの子どもみたいだね。」
「ま、そんなようなもんだろ。」
「誰がやねん!」
滉斗がツッコミながら居間へ戻って来た。縁側で三人並んで、スイカを食べる。草むらからは、虫の声。どこかで花火でもしているのか、火薬の匂いと子どものはしゃぐ声が聞こえる。
「夏だねー…。」
「そうだね。」
「…明日、何する?」
俺たちは、言葉少なげに、今日が終わるのを、俺たちの夏が終わるのを、惜しみながら、夜を過ごしていた。
明日で、帰らなきゃ…。
誰も口にはしないが、きっと皆の頭に浮かんでいる事。風鈴だけが、ちりりん、と素直に寂しい音を奏でていた。
コメント
5件
ちょっともっくんがもうこの世に居ないみたいな感じになってませんか???みんな2人だけが見えているような。もうもっくんはこれが終わったら永遠に会えないとか。引っかかるんですけど、、
夜の更新はもしや?!と察しましたよ🤭❣️ ♥️💛が幸せそうな反面、限りがあるんだろうな感が否めず、もう切ないです🥲 明日楽しみなのですが、なんかもう寂しいです😇
あとがき センシティブは夜、なのを忘れてて、予告なく急いで夜に上げました笑 明日も、朝と夜にあげられたら、最後まで上げちゃおうと思います☺️ 最終話まで、あと二話、お付き合いくださいませ🥰