コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「だからさ。とりあえず今度のプロジェクトでなんとかもっと業績も利益も上げて親父に認めてもらうきっかけにしたかった」
「だからプロジェクトにあんなに意気込んでたんだ」
「そう。オレもこの環境から逃れられないなら、この環境を嫌がるんじゃなくて居心地よくするしかないのかなって。とにかく今はこのプロジェクトで、もっと自信をつければ親父の前でも堂々といられると思うし。まず自分を好きでいれることが第一条件だからさ」
「うん。自分に自信を持って自分を好きでいれることが一番」
「でさ。さっき病室まで案内してくれたのが親父の秘書の神崎さん」
あっ、さっきのスーツ姿の年上の男性のことか。
「あの人仕事もすごい出来て、昔からずっと親父のそばで支えてくれてさ。オレの兄貴みたいな存在なんだよね」
「そっか。そんな素敵な人近くにいてくれたんだ」
「うん。あの人はずっと昔からオレの事も面倒見て来てくれたからさ。何でも知ってる人」
「頼もしい人にちゃんと支えてもらえてるんだね。会社も樹も」
そういう存在の人がいてくれて安心した。
「あの人に随分オレと親父の関係も取り持ってもらったからね」
「じゃあお父さん同様頭上がらない存在だね」
「確かに」
そう笑って答える樹の表情は、ホントに神崎さんを慕っているようで、ずっと支えてもらった存在だったんだなと伝わって来る。
「それで、多分この先オレ、今のプロジェクトしばらく関われないかもしれない」
「え?」
「親父がこういうことになった以上、社長の代わりを誰かがやらなくちゃいけなくて。これからしばらくオレが出来る範囲でそっちに関わることになった」
「あっ・・そっか・・。そう、だよね。そういうことになるのか」
「神崎さんの話によると、親父ちょっとこうなること予測してたらしくて」
「えっ?もう前にわかってたってこと?」
「うん。親父自身、不調感じてたらしいけど、神崎さんだけはそれ見てて。病院にも行けって言ってたらしいんだけど、忙しくて行かなかったらしい」
「そこまで・・・」
「だからさ。もし自分に何かあった時は、オレに後は任せろって伝えてたみたいで」
「そうなんだ・・。でもそれ、今までの樹の仕事ぶり見て、樹のこと認めてくれてるってことじゃないの?」
「さぁ・・・どうだか。親父的にはオレを試してみたいのかもね。そんな遊びじゃないのにさ」
「だからこそだよ。こんな大きな会社、樹に任せるって決心、なかなか出来ないと思うよ?」
「まぁ・・命には別条あるワケじゃないから、まだ会社継ぐって話ではないし。とりあえず今の社長としての仕事を神崎さんに指示してもらいながら覚えていけっていうことみたい」
「うん。それなら安心じゃん。神崎さんとお父さんに教わりながらその立場の仕事覚えていけるなら、きっとこれからの樹にも役に立っていくと思う」
「そうだね。まぁなんとかやり切るしかないけど」
「うん。応援してる。頑張って」
「ありがとう。・・・でさ。プロジェクト。透子に任せることになって大変になると思うけど・・・」
「あぁ。それは大丈夫。あれから大分進められてるし。大体は把握してるから。チームの皆もいるし、そこは安心して」
「悪い。もしまたなんかあったら聞いて。そこはちゃんと答えられるようにするから」
「了解。とりあえずこっちのことは気にせず社長代理頑張って」
「ありがと。助かる。・・・でも。これから透子と会う時間減るかも」
「あっ、そうだね。それはちょっと寂しいけど、仕方ないよね」
「そっかー。そうだよなー。絶対会える時間減るよなー。くそー」
子供みたいに悔しがってる樹がなんだか可愛くて。
だけど、これから今まで以上にしっかりしなきゃいけない状況で。
大人としての決心した強さと寂しがる子供みたいな可愛さと、どちらも共存している今の樹は、また今まで見たことない樹で。
今まで知らなかった大きなモノを抱えている樹も。
それを乗り越えて頑張ろうとしている樹も。
どんな樹も愛しく想える。
「大丈夫。どんな時も樹のこと想ってるから」
そんな樹が愛しくて、隣の樹に横から腕を伸ばして優しく抱き締める。
「透子・・・うん。オレも」
「大丈夫。絶対乗り越えられる」
そう声をかける私の手に樹もそっと手を重ねる。
大丈夫。
例え少し離れても。
お互い違う場所で頑張るだけだから。
きっとこれがお互いの為になると信じて。
「いつか透子の元に戻れるの待ってて」
「うん。待ってる」
きっといつかまた一緒にいれる時が来るまで待ってる。
それまでお互い頑張ろうね、樹。