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それから数日して、樹が社長の息子だということが会社でも噂になってすぐに知れ渡ることになった。
樹は社長業を務めるために、社長室がメインで、元の部署での仕事も出来なくなったので、当然そうなってしまう。
それと同時に当然ながら樹はいつも以上に忙しくなって、連絡も途切れがちになって。
隣に住んでいるのに、また出会う前みたいに偶然でも会えなくなってしまった。
それどころか忙しくて毎日家に帰って来てるのかもわからないほどで。
思ってた以上に樹は忙しくて、まったく会えない日々も連絡も取り合えない時間がどんどん増えていく。
多分樹のことだからきっと寂しくなったら会いに来る。
だけど、それをしないということは今は樹は樹なりに頑張っている時なのだと思う。
だから私が今、会いたいだとか寂しいだとか絶対言えない。
唯一樹の気持ちがわかる自分だからこそ、我儘は言えない。
樹の頑張りを、私はただ見守るしかない。
「望月さん。大丈夫ですか?」
「ん?三輪ちゃん、何が?」
お昼に一緒にランチをしていると三輪ちゃんが声をかけてくる。
「早瀬さん。せっかく二人仲が戻って喜んでたのに、今度はまさかの社長代理なんて」
「あぁ~それね」
「まさかビックリでした。早瀬さんがまさか社長の息子さんだったなんて」
「ホントに」
「望月さん前から知ってたんですか?」
「まさか。社長が倒れた時一緒にいてさ。病院で初めてそのこと聞かされた」
「そうなんですね。もう社内ではその話で今は持ち切りですよ」
「そうなんだ?」
「だって元々エースで人気あった早瀬さんですよ?それがまさかのこの会社の跡継ぎだなんて。前以上に早瀬さん狙いたい女性陣の鼻息が荒いです」
「そんなに?モテモテだね(笑)」
「望月さん。不安じゃないんですか?そんな状況」
「う~ん。不安がないってワケじゃないけど、早瀬くんもそんな相手するほど余裕ないだろうし。まぁ彼のこと信じてるから」
「わお。絆ハンパない! ってか二人の仲公表しちゃわないんですか?望月さんが相手ならそもそも女性陣絶対諦めると思うんですよ」
「そうだね~。今は特にそれで困ってるワケでもないし。公表したところで、お互い負担になることあるかもしれないしさ。今はこのままでもいいかなって」
「なるほど。そういう可能性も確かにありますよね。まぁお二人なら大丈夫ですよね!」
「そう信じてるけどね(笑)」
「あっ、そういえば、今回のプロジェクト早瀬さん抜けた分で、なんか早瀬さん代理で誰か来るって聞きましたけど」
「あぁ。そうみたいね。別に私だけでも大丈夫なんだけどね。皆サポートしてくれるし」
「ですよね。でもその人チームに入れることで、なんか早瀬さんレベルで男性として進めやすい部分もあるとか聞きました」
「ね。なんかそういうとこ理不尽だよね」
せっかく樹と一緒でやりやすかったのに・・・。
別にプロジェクト誰かとやるのは慣れてはいるけど、最初から樹と作り上げて来たプロジェクトを、他の人とまた始めていくっていうのが、なんだか少し悲しい。
「この後その人チームに合流するんでしたっけ?」
「らしいね。やりやすい人ならいいけど」
そしてその後にプロジェクトチームでの会議で、新しいそのサポートメンバーが加わるとのことで皆で会議室に集合した。
そして時間になって会議室に入って来たそのメンバー。
その姿を見て・・・驚愕した。
「どうも初めまして。このプロジェクトチームにサポートとしてこれから参加させてもらいます大阪支社から来ました北見 涼です」
まさかの人物だった。
まさかまた一緒に仕事するなんて思いもしなかった。
忘れたくて仕方なかった人。
もうこれ以上関わりたくなかった人。
ようやく樹と出会えて幸せな時間過ごせてたのに。
なのに。
樹がいなくなったことで、まさかのこの人が代わりに現れるなんて。
・・・神様は意地悪だ。