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『おはようございます。』
『やはり、誰もいませんか。』
今日も早く来すぎてしまった。
私が早いのか、皆さんが遅いのか、微妙なところである。
早く来てしまったけれど、やることはない。
いつも通りだ。
いつも通り、窓の景色に目を向けながら皆さんを待つ。
今日の世界会議の会場はイタリア。
やはりイタリアの景色は、絵画に出てくるような素敵な景色だ。
流石、イタリア君の国である。
「おはよう日本。」
『おはようございます。』
ドイツさんだ。几帳面で真面目な性格で、信頼できる人である。
「今日も早いんだな。」
『ドイツさんこそ。』
『私は変に早く起きてしまうだけですよ。』
いつも通り、平凡な会話する。
今日も、いつも通りの毎日である。
そう、いつも通り…
であるはずだった。
今日もイタリア君は遅刻だろうか。
ドイツさんも少し痺れを切らし始め、足踏みをしている。
アメリカさんは沈黙に耐えられず、誰彼構わず話しかけている。
イギリスさんは独り言を言い始める。
彼が言うには、あれは妖精達と話しているらしい。
「Ciao〜!」
「イタリア君。おはようございm…
「イタリアァァァ!」
「今何時だと思っているんだ!」
「ヴェ…」
これも、いつも通り。
うんざりしてしまうするようで、安心する。
この瞬間、私は国の化身として生まれてよかったと思うことができる。
皆さんと一緒にいられるのは、運命であると、必然であると、信じていたい。
そんなことを考えていたら、会議は着々と進んでいく。
「これで会議を終わる。」
「各自解散するように。」
ドイツさんの声が部屋に響き渡り、それを合図に賑やかになる。
「日本〜!」
『おや、イタリア君。どうかしましたか?』
「今日暇〜?遊びに行こうよ〜!」
『ふふっ、いいですよ。』
笑顔で話しかけてくるイタリア君に、私は首を縦に振る。
イタリア君と話していると、孫ができたようで、不思議と心が弾む。
日差しが眩しい中、そんなものなど比べ物にならないほど眩しい笑顔のイタリア君が隣にいる。
会話は弾むが、イタリア君の様子は何処か可笑しかった。
大丈夫ですか、と声をかけると少し俯いてしまったが、何でもない、と言っていつもの笑顔に戻ってしまった。
その時のイタリア君の顔は、彼には珍しい、少し悩んでいるような、思い詰めているような顔であった。
「日本?日本〜?」
先程のことについて、考え事をしていた。
気づいた頃にはカフェに着いており、イタリア君が心配そうに私の顔を覗き込んでいる。
「日本?大丈夫?」
『ええ、大丈夫ですよ。』
『それと、ここでは「菊」ですよ。』
『フェリシアーノ君。』
イタリア君は、あ、そうだった、と少し恥ずかしそうに笑った。
国の化身が存在していることを国民は知っているが、近くで生活しているということはあまり公にしてはいけない。
騒ぎになったり、必要以上に国民と絡んでしまうからだ。
今までにも、国が国民との一線を超えてしまうことがあった。
そんな出来事があったため、私たちには偽名が与えられたのだ。
「菊。」
しばらくたわいのない会話をしていると、イタリア君は突然真剣な顔をして、こちらを真っ直ぐに見つめ始めた。
『なんでしょうか。』
何故か、嫌な予感がする。
この話を聞いてしまうと、こうやって気楽に二人でカフェに来ることが出来なくなるような、そんな気がする。
「大事な話があるんだ。」
私は固唾を飲む。
このまま聞いてはいけない気がする。
このまま消えてしまいたい。
穴があったら入りたい気分だ。
緊張で声が出ない私を置いて、イタリア君は口を開いてしまう。
「俺ね…」
気がついたら、席を立っていた。
危機感を感じたからだ。
何かを話そうとするイタリア君を置いて、
私は走り出してしまう。
嗚呼、私はなんて無責任なんだ。
あの顔は、余程重要な話をするつもりだったのだろう。
イタリア君なりに、勇気を出して話そうとしてくれたはずだ。
ごめんなさい、イタリア君。
私は、とても悪いことをしてしまいました
イタリア君の言葉を遮るならまだしも、逃げ出すなんてことを。
今の私には、多分、イタリア君の言葉に答える権利などありません。
今だけは…今だけは…
あなたの言葉から目を逸らさせてください。
ごめんなさい。
こんな私でも追いかけてくれますか?
コメント
2件
早速タイトル回収…面白いですね😏 毎回毎回書くのうますぎません??笑