スマホ,お財布,バッテリー,タオル…最低限の荷物だけでいい。残りは後で買おう。こっそりと家を出て,夜の闇の中へ飛び出した。
タッタッタ…
静かすぎる住宅街に私の足音だけが響いている。誰かに気づかれるかな,いや,どうでもいい。今の私には,この嫌すぎる環境から逃げ出すことしか頭に無かった。それだけを考えながら夜の街を走る。
ハァハァ…
息が切れる。あんまり動くのは得意じゃないから…少し歩こうか。目指しているところまではあと少しだし。
少しずつ歩いて,駅に着いた。良かった…まだ終電じゃなかった。これを逃すとあそこに行けない。少ない人々と一緒に電車に乗った。他の人は疲れているのかずっと寝ていて,何故こんな深夜に高校生が乗っているのかなんて気にしてもいなかった。それでいいから,どうでもいいけど。
ガタンゴトン…ガタンゴトン…
電車が揺れながら夜の中を駆けていく。私が目指す場所へ。
電車が目的地に着いたみたいだ。私はこっそりと電車をおりて駅員に見つかる前に外に出た。眩しいネオンの灯りと騒々しい車の音…そう。私の目的地は『東京』だった。
少し歩くだけでも人混みがすごい。こんなところなんだ…テレビで見た事はあるけどそれでも凄いな。なんてことを思いながら歩いていると道の端っこの方に影が見えた。
「なんだろう…?」
近づいてみると,それは目の綺麗な猫だった。
「どうしたの?迷子?」
話しかけると擦り寄ってきた。そしてタッと走って行った。そこまでならどうでも良かったのに,何故かついて行かなくちゃと思った。
トットット…
裏道に猫の足音と私の足音が響く。
ついて行った先には人影があって,猫はその人に懐いているようだった。
「あ、あの〜すみません…」
その人が振り向いた。
その人は…月明かりの下で照らされて,どこか幻想的な,美しい妖精のような少年だった。
コメント
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1コメ頂き〜!wめっちゃよきよ!