妹が好きな丘に咲く蓮華草にそっと触れてみた。溢れ出す涙が頬を伝う。うちに帰るのが怖かった、無力な兄である僕。
父親の妹へのDVに気づいていたのに15歳の僕にはなす術がなかったからだ。
毎晩毎晩、ベランダにいる傷だらけの妹を慰めてはあと一年たったら2人で逃げようと励ましていた。
ひとつ下の妹は母親の再婚相手に性的虐待を受けていた。
母親も気付いていたが酷いもので見て見ぬふりだ。この男に寄生しないと3人とも野垂れ死ぬと思っていたからだ。
僕が15歳の1月妹はこの世を去った。2年もの虐待の末、自ら命を経ってしまった。
妹の無念は僕に寄り添い、復讐心のかたまりとなり、日に日に悪霊と化していった。
父の父親は、別の事件で刑務所に入り病死した。妹は復讐出来ず、欲求の塊となった。取り憑いては殺し、また取り憑いては殺す。でも妹は成仏できなかった。
「ネギ、その話は本当なのか?」
「はい、お兄さんを夢で呪い殺そうとした、あの女に姉御は追跡術を仕込み、真相を突き止めました。これは浄化の大きな一歩です。」
「あの女の兄が、お兄さんを妹の餌にしたようです」
「おそらく兄は霊能力者で強力な呪いをお兄さんにかけました。最近どこかで不審な男性と接触はありませんでしたか?」
「俺は動画配信で全国で旅をしていたから、どこでそうなったかはわからない。」
「きっとその旅の終盤で呪術にかけられた可能性が高いです」
「プルルルルル」ネギに京子から電話が入る。
「ネギか男の居所はわかった、今からそいつのところにいってくる。」
京子はそう言って電話を切った。
それから1週間、京子の修行部屋で俺は過ごすた。
「お兄さん、姉御がここに来いって言ってます」
京子からのメモにはとう東京駅のとあるカフェの住所だった。
俺は1週間ぶりに外の空気を吸い、東京駅へ向かった。またあの女が現れるのではないかそんな恐怖心はまだ残っていた。
指定のカフェに入り周りを見るが京子はいない。取り敢えず席に座りコーヒーを注文した。
コーヒーを飲みながら窓の外を見ていると、椅子を引く音がが
ギィーっ
「どなたですか?」俺のテーブルに同世代の男性が座っていた。
「あの女から何も聞いてないのか?」
「あの女って京子か?」
「京子っていうのか、金髪のヘビースモーカーの女だ」
きっと京子のことだ、「あなたは誰ですか?」
「俺は簡単にいうと、あんたに取り憑いていた女の兄だ。」
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