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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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打たれた頬がじくじくと痛む。

熱くて痛い、でもそんなのより

心臓が握り潰されているような痛みの方が強かった。


「なら私の事、殺してくれませんか」


ぽつりと吐いた言葉は止められなかった。

3人ともこちらを見ている。

だけど、ごめん。

私、もうむりだ


「奏斗の銃なら1発で死ぬし、たらいが使ってる包丁でも殺せる。

セラ夫なら、すぐ楽にしてくれるでしょ」


きっと今、酷い顔をしていると思う。

涙でべちょべちょで、まともに息も出来なくて。

ほぼ過呼吸になっているような、そんな感じ。

震えた足を何とか動かして、目の前に立っているセラ夫の服を弱々しく掴んだ。

お願いだよ、もう楽にして。

お前たちといるのは楽しい、これからも沢山遊んだり仕事したりした。

でももう、嫌だ。

もうこれ以上、苦しみたくは無い。


「ころして」


ずるずると足元にしゃがみ込んだ。

たらいが名前を呼んでくれる。

返事する余裕なんてなかった。

身体を無理やり引っ張られて、床に叩きつけられる。

首筋にツンとした痛みが走った。

いつの間にかセラ夫に馬乗りにされてて、首元に彼がよく使うナイフが添えられていた。

殺してくれる、楽にしてくれる?

彼は優しい、あの時からずっと。

努力家で、何でもしようとして、優しくて、頼りになって。

そんな彼の近くにずっと居ていいのかなって、たまに思ったことがある。

血の気が引いているのか、頭がぼんやりとする。

事務所、どうなるんだろう。

何も跡継ぎとか、そういうのしてない。

詰まってる仕事も何も解決してない。

でも、もうそんな辛い事とか、苦しい事から、彼は解放してくれる。

酷いな、自分勝手だ。

自分が一番嫌いだ、迷惑をかける自分が、大嫌い。

たらいと奏斗が話いるのが聞こえる。

セラ夫は、何も喋ってない。


「俺らが傷付けてたの」


そんなんじゃない、ただ私が1人で苦しんでただけ。

勝手に苦しんで、迷惑をかけてただけ。

違うと首を振る、皮膚がナイフに掠れて、ぷつぷつと切っていく。


「俺とはもう、一緒に居てくれないの」


死んでもきっと、地縛霊みたく傍にいるよ

貴方達に見えないだけ

だから早く、地獄にいかせて

そうはくりと小さく息をしながら、そう言った。

早く死にたかった、ただそれだけだった。

ぐっとナイフが強くくい込んで来る。

やっと殺してもらえる、解放される。

ごめんねセラフ、最後までこんな事させて

不甲斐ない相方でごめん。

でもきっと、今の貴方なら私が居なくてもいいんだよ

もう、いいから

涙は止まらなくて、ただセラフの頭を弱々しく撫でた。

このふわふわとした髪を触るのも、もう終わり。

もう二度と、触れないから

目を閉じる。今まで色んなことがあった。

楽しい事も、苦しいことも、辛いことも、嬉しいことも。

全部、四季凪アキラという男には満足するくらいの思い出がある。

だから終わりにする。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


かつんと首元からナイフが落ちていった。

浅く切られた首からはただ血が流れていく。

なんで、まだ死んでない。

いつの間にか、セラフに抱きしめられていた。

震えてる、自分よりも大きな身体が、寂しそうに。

なんで?違う、貴方を苦しませたい訳じゃない

なんで、セラ夫


「なんで、ないてるの」


驚くくらい、小さな声だった。

震えてた、自分の声も。


「まだ一緒にいたい、そばにいたい。ねぇ、はなれてかないでよ」


泣かないで

セラフを泣かせたかったわけじゃない。

ちがう

私、いつもこうだ。

だから、使えないだとか、要らないだとか、そんなこと言われる。

ごめんなさい

ごめんなさい、セラフ


ごめん。


「_____、めん、ごめん」


かひゅりと喉から音が出る。

泣かないで、悲しまないで

ほんとは1人になんてさせたくないよ

私だってそばに居たい

でもそばにいたら、私がくるしくなるんだよ

どうしたらいいんだろうね、どうしたら、幸せになれるのかな。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


呼吸もままならず、様子が急変した四季凪の背中をセラフは撫でた。

自分も目に涙を溜め込んでいるが、そんなこと気にする余裕がなかった。

明らかな四季凪の取り乱しと精神状態の不安定、酸素が取り込めていないのが分かる。

どうしてこんなにも苦しんでいるのだろう。

どうして、1人で溜め込んじゃうの

ゆっくりと背中を撫でる、大丈夫だと声をかけながら、優しく。

ひくりと嗚咽している四季凪に掛けられる言葉なんて見つからなかった。



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主さんの書く世界観好き

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