コメント
1件
語彙力なくてすごいしか言えない
昔から痛みに強いんだと思っていた。
汗だって、あまりかかない体質なのだろうと思っていた。
なのに
「貴方は無痛無汗症です」
その病状を聞き、自分の生活が一変してしまった事を今でも思い出す。
先天性無痛無汗症、簡潔に言えば痛みを感じない、汗をかかないという病気であり、それも名の知れた難病らしい。
体温も感じないから、熱が出た事も分からなければ、ナイフで指を切ってしまった事にも気付かない。
痛いのは嫌だし、痛覚が無いのは些か便利なのかもしれないと思った時もあった。
だけど不気味がられる事も多々あったし、そもそも自分の体調に気付かず無意識に倒れていた事なども度々あって、何気に弱い体なのだと理解した。
だからこそこまめな水分補給は欠かさなかったし、病気だと知らされた時から危険だと思った任務や暗器等には触れないようにした。
勿論、スパイとして狙われる身故にバレないように頑張っていた。
だからこそ苦しくて、辛くて、高校の時には足を洗いたいと強く想っていた。
今では請負人として平和に暮らしているし、VTuberという声の仕事もしている。
正直、怪我をするという仕事とは遠く離れている職業で自分の性にも合っているし、安全に暮らせるという所が今の自分にはありがたかった。
病気のことに関しては事務所の社長やマネージャーには伝えているが、同期や他のライバーには伝えることでも無いだろうと思い伝えてはいない。
伝える必要も無い、これは私自身の事だからだ。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「セラ夫、待って」
「待たない、あんなに腹ぶん殴ったのに何も無い方がおかしい」
腹が気持ち悪い、ぐぷぐぷと胃液が熱い。
何かが出そうだった。
「セラフ、たのむから」
「早く検査しないと臓器が傷ついてるかもしれないって言ったでしょ」
「ね、ぇ、セラ、っ……ゔ…ぇ、」
「っ…凪ちゃん!」
「_____…ぁ゙、?」
なんで、自分は血を吐いているんだろうか
身体に負担がかかった?それとも何か薬を飲んでしまった。
違う、セラフが焦っていた
殴られた場所が痛かったから?
痛覚がないってバレた?身体がおかしいって知られてしまっただろうか。
どうしよう、どうしたらいい?
わからない、ただ頭がぐらぐらと揺れる。
あ、これダメだ。
セラ夫の焦った表情を最後に、そこで意識がぷつりと途切れてしまった。
「先天性無痛無汗症」
生まれつき痛みを感じる神経や発汗機能をコントロールする神経が発育せず、痛みや熱さ冷たさを感じない(感じにくい)、汗をかかないという病気。
火傷や骨折等にも気付かないため、誰かに衝動的に殴られたという感覚が無い。