テラーノベル
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「正直に言ってしまえば、最初から好印象だったかといえばそうではない」
「そうなんだ〜。それでそれで?」
最初に彼について知った時、その情報源は数枚の紙と一枚の白黒写真からなる、履歴書と言えば聞こえがいいような紙切れのみの物だった。
その程度のもので、満足に知れたとは言えないだろう。けども、少なくともその時点で彼を良くは思いはしなかった。苦し紛れに言うなれば、歯応えのある──好敵手になるだろう、程度の認識に収まった。
「転機と言えば、初めての会食だろう。俺があちらへ赴いた時だ」
「ああ、そういえば、当時もそんな話をしていたね。まさかそんな……感情的な思い出だったとは」
「その時は、自覚は無かったのだが」
とにかく、今思えばその時だった。
意識も何も無かった、無自覚な筈なのにここまで鮮明に覚えているのは、恐らくそれだけ心に深く残っているのだろう。
「そういう前置き良いからさ、早く本題に入ってくれない?」
「聞いている側の癖、あまり言うんじゃない」
空港までの迎えは彼の部下のみで、それらは着飾っては居たけども、それでもかなりの雑さを感じた。書類には几帳面な性格だと書いていたのに、こんな対応で終わらせるのかと。
彼の部下らに案内されるがままに歩き、およそ数分が経った頃に漸く店へ着いた。着いてからは予約してあるのもありスムーズだった。だが、その道中もまた退屈に思った。
「文句多くない?」
「黙って聞け」
席には既にナチスが居て、軽い社交的な笑みを浮かべながら手を組んで待っていた。あれ程、まるで物かのように扱われたのは初めてだった。
コメント
1件
ああ、この「語り」形式、いいですね。語り手が「最初は好印象じゃなかった」と明かしつつ、聞き手の軽口でテンポよく進む構成が心地よい。初対面での雑な対応と「ナチス」という呼称のインパクトが強く、「物のように扱われた」という一文で、この後の関係性の変化に期待が高まります。無自覚だったのに鮮明に覚えているという感覚の描写もリアルで、僥倖の予感がした第13話でした。
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