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心が折れそうだった時、見計らったかのように綺麗なクセ字でファンレターくれる女がいた。
心が洗われるような、空色の便せんと封筒。
なんの変哲もない淡い空色のシンプルな便せんに綺麗なクセ字。
自分の名前を書く時に変な所でハネるクセがある。結構可愛くて俺は好きや。
ああ、彼女からの手紙やってすぐにわかる。空色の封筒とクセ字。今日はどんなことを書いてくれているのかと、封書が届くたびに嬉しくなった。
いつの頃からか俺は、空色の手紙を心待ちにするようになった。
なぜ気になったのかはわからない。便せんが綺麗やったからとか、多分そんな理由。
似たような内容のファンレターでも、彼女がくれる手紙はどういうわけか他と違っていた。
研ぎ澄まされていて美しかった。
ずっと応援しています、頑張ってくださいって、デビューした時から変わらない空色の手紙を送ってくれた。
誕生日の時だったか……一緒に送られてきた手作り菓子を食べてみたら、味は良かったのに死ぬ程固かった。歯が折れるかと思った。
強烈なインパクトを残してくれた、空色の女。
どんな女か想像しては、楽しんだ。
綺麗な字を書くから可愛いじゃなくて、美人系。
切れ長の瞳は、メイク映えする一重に決まってる。菓子作りは下手やけど。激堅クッキーは俺のために頑張ってくれた証拠や。
俺は黒髪好きやから、長い黒髪やったらいい。胸は白くて大きく揉みごたえがありそうな感じかな。
お前を想像して歌も作った。
歌詞の中に出て来る女は、俺だけを愛してくれる空色の女。
吉井律――まさか目の前に、俺の想像通りの本物の女が現れるなんて。
しかも十数年以上俺を好きだと言い続けておきながら、他の男と結婚しているなんて――