テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
臼柏 千布「何事や!まったく、次から次に…最近ほんま忙しいなぁっ」
地下町が崩壊するなんて、俺が生きてて初めてや。金銭問題や、品問題。色々抱えた時期はあったけど、こんなん、経験したことないから、どう収めていこか…。部下が上客を地上へ案内しとるみたいやな。俺の指示無しにここまでやってくれるなんて、な。ちょっと感心してもうたわ。
見張りA「町長!!あのバケモノが原因ではないのでしょうか?!」
臼柏 千布「…?って、なんや!?あの黒いバケモンは!!!」
起こったことのない状況、得体の知れないバケモン。何しとるんや!俺は町長やぞ?!こんなところでグズグズしとったらアカンやろ!指示無しで動いてくれとる部下の上司が無能とか駄目やろ!!!でもこれ…どうやったら…?
臼柏 千布「俺、あのバケモンところに行ってくるわ。一度試してみたい。どれぐらいの相手なんか」
見張りA「町長、くれぐれもお気をつけて下さい!!」
見張りB「おい!町長一人じゃ…」
見張りA「町長のことだ、簡単には死にやしないさ。冷静なご判断をなされるんだぞ」
見張りB「ですが、心配です…!」
臼柏 千布「アンタらは、押し除けられそうな瓦礫を見つけて少しでも道を整備してほしい」
見張りA「はい!」
見張りB「何かあったら駆けつけます!町長!」
臼柏 千布「ほな、任せたで」
急がななっ!!デカさはドアより少し高いぐらい…。2メートルぐらいか??しかも、デカいだけじゃなく、威力も有りそうや。油断しとったらすぐ吹っ飛ばされてまうな。
ようやく着いた俺は、扇を構える。
登子 流華「どうしよう!!」
出られそうな場所はどこもない。せいぜい見つかったのは、猫が入れそうな小さい穴だけ!
神様…。私はここで死ぬ運命なのかも…。絶対やだよ!!まだやり残したことあるのに〜!
順番ずつ正方形の個室を見て回っていたら、一人の人が背を向け、小窓をじっと覗いている。逃げ遅れた人なのかな?!とにかく私以外にも人がいたなんて!次郎君、見落としてたのかな。
登子 流華「あ、あの〜」
桜江 與慧「おや?貴方は?こんなところで何してはるん?」
いや、こっちも聞きたいよ。
登子 流華「貴方こそ何やってるんですか」
桜江 與慧「僕?あぁ〜僕はなんか地下町でおもろいことやってるなと思って来ただけの暇人です〜」
彼は今のこの状況を飲み込めていないかのような態度っぷり…。
登子 流華「怖くないんですか?」
桜江 與慧「ええ。なんせ、崩壊寸前の旅館。僕自ら入ったぐらいですもん」
え?自分で???
桜江 與慧「貴方、名前は?」
登子 流華「登子 流華です…」
桜江 與慧「僕、桜江 與慧(さくらえ ともえ)って言うんですぅ。與慧の與は旧字のままで…。なんせ、僕、結構長生きしてるんですよ?君よりかは。刺激を求めてる日々です〜」
登子 流華「私、ここから出たくて…玄関までの道、塞がっちゃったんですよ」
桜江 與慧「ほな、出ます?僕が出してあげます♪」
登子 流華「え?」
破壊音と同時に、壁が壊れ、出ると左奥から電気の木漏れ日が、影の方にうっすらと照らされている。私、出られたんだ。
登子 流華「ありがとうございます!!」
桜江 與慧「いえいえ、僕は出来ることをしたまでですから。あ、何か御恩に下さるんでしたら、ドーナツにしてくれます♪?僕、ドーナツ大好きでして♪」
登子 流華「この事件が解決してから、プレゼントしてあげますね!!」
桜江 與慧「事件って、向こうにおる黒い化け物のことですか?あれここの伝統的なペットとかじゃないんですか!?!?」
登子 流華「な訳あってたまるか〜!…って…」
桜江 與慧「あら?あそこに立っとるの僕のお友達の町長殿ではないですか〜♪何やっとるんやろ」
登子 流華「まさか一人で…!」
桜江 與慧「そら、危ないわ。町長殿も誰かを頼りはったらええのに。例えばこの僕とか?」
登子 流華「與慧さん!行きましょう!」
桜江 與慧「せやね」
結構手応えあるな…。せやけど、このまま、やっとったら潰されてもおかしない!!いつまで持つか…。
「オラッ!!!」
『グアアアアアアアアッ!!!』
何もんや?
アル「平気か?臼柏町長」
エル「僕達が援護しに来たわ!」
アル「エル…ここは私が、」
エル「アル、信じて頂戴!次こそ」
アル「はぁ、ヘマだけはするなよ」
アル、エルか…以前、一度だけ会ったことあったな。
アルはバケモンに剣を振り翳して大打撃を負わせる。これがかなりのダメージを相手へ与えることが出来た。
『ウ゛〜〜〜ッ!!』
アル「臼柏町長!トドメを!!!」
俺はバケモンに上から技を仕掛けようと扇を振るにも中々捌き切れない。
アル「エル!臼柏町長にバフを!」
エル「分かったわ!」
エルのおかげで気が高まった俺は、切り裂けることに成功し、バケモンはうつ伏せにして大きく倒れた。
登子 流華「臼柏さん!」
臼柏 千布「登子…。それに、與慧。なんで、アンタかおんねん…」
桜江 與慧「服が汚れてしまってますねぇ、町長殿。お隣のアル殿とエル殿は無傷ですか」
エル「僕は裏でサポートしてただけよ」
アル「私達はそもそも、駆けつけるのに遅れてしまった。少々盗人二人を取り締まっていてな」
臼柏 千布「忙しい中、来てくれてありがとう」
アル「いや、これぐらいどうってことなかったな」
桜江 與慧「流石は、上級者は格が違いますねぇ」
アル「だが、私はまだまだ上を目指せるとそう思っているからな」
エル「アル、向こうの方の治療を手伝いに行きましょう?」
アル「だな。では、私達はこれで。その黒化怪(こっかかい)はもう息をしていない。死体の処理は問題ない。この類は基本的に威力が大きい割には防御力は、成る前のその人の身体能力とリンクしている。つまり、その黒化怪の前の姿はそれほど頑丈では無かったということだ。安心しろ」
エル「死体の方は、自然と欠けて天に帰るわ……って!アル!待って頂戴!」
エルさんはアルさんの後を追いかけた。
登子 流華「これで…事件解決?」
臼柏 千布「一旦はな。周りにこのこと伝えといてくれるか?俺はやりたいことがあるから、旅客と部下の援助を」
登子 流華「はい!」
桜江 與慧「友人の願いですわ、折角なんで僕も手伝ってあげましょか」
俺はこの場を離れ、旅館へ戻ろうと人影のない、薄ら暗い元来た道を行く。
一時はどうなるかと思ったけど、援助のおかげで早く終わることが出来た。ホンマにこれに関しては恩いつか返さなな、無傷で済んだんや。
俯き顔を上げたと同時に横から誰かが歩いて俺の前に立ち止まる。そこで、俺も立ち止まってしまう。
臼柏 千布「…ッ!!あ、あアンタは…!」
「久しぶりだね、”お兄さん”」
仮面が薄らと笑っている。不気味過ぎる…。
「旅館、倒壊しちゃったね。死人も出ちゃったみたいだし」
臼柏 千布「死人…おるんやな…」
「妹さんは?」
臼柏 千布「俺は見とらんけど、多分、避難しとるやろ。ていうか、避難しててほしい」
「残念ながら、今回の加害者さ」
臼柏 千布「…ッ!?何やって?!そんな訳…」
「そして君も、僕も。彼女に対して被害を加えた加害者。お揃いだね」
臼柏 千布「お、俺も…?」
「勿論だとも。臼柏君が僕に恩返しをしてあげたと思ってよ」