テラーノベル
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ゆゆゆゆ
朝の支度は、いつの間にかノスフェラトゥの役目になっていた。
スペクターの私室。
赤いカーテンの隙間から、
薄い朝の光が差し込んでいる。
部屋の中央では、
スペクターが椅子へ腰掛けていた。
脚を組み、
赤いシルクハットを机へ置き、
楽しそうにこちらを眺めている。
その足元。
ノスフェラトゥは膝をついていた。
「……」
静かな呼吸。
視線は落ちている。
昔なら、
考えられない姿だった。
かつて。
ノスフェラトゥは跪かせる側だった。
古代吸血鬼。
反逆者。
虐殺者。
誰かへ頭を垂れることなど、
屈辱以外の何でもなかった。
なのに今は。
スペクターの足元で、
革靴を丁寧に持ち上げている。
「今日はずいぶん静かだね」
スペクターが笑う。
ノスフェラトゥは答えない。
代わりに、
スペクターの足へそっと靴を履かせる。
指先が触れる。
それだけで、
胸の奥が妙に熱くなる。
スペクターはそれを知っている顔で、
わざとゆっくり脚を動かした。
革靴が喉元近くを掠める。
「……っ」
ノスフェラトゥの肩がわずかに震えた。
「敏感」
「……黙れ」
低い声。
だが迫力はない。
スペクターは喉の奥で笑う。
「でもちゃんと履かせてくれる」
ノスフェラトゥは唇を噛む。
悔しい。
本当に。
なのに。
この役目を他の誰かへ渡される想像だけは、
妙に嫌だった。
アズールがスペクターのネクタイを直す姿。
ホスフォラスがワインを注ぐ姿。
それを考えるだけで、
胸の奥がざらつく。
だから結局。
自分からやってしまう。
スペクターの衣服を整え、
コートを羽織らせ、
襟元を直す。
そのたび。
スペクターの視線が、
静かにノスフェラトゥを撫でる。
まるで。
“ちゃんと自分から跪いている”ことを、
確認するみたいに。
「ノスフェラトゥ」
低い声。
「ワイン」
「……」
ノスフェラトゥは無言でグラスを手に取る。
赤い液体。
それを静かに注ぎ、
スペクターへ差し出した。
スペクターは受け取らない。
代わりに。
「飲ませて」
楽しそうに笑う。
ノスフェラトゥの眉が寄る。
完全に遊ばれている。
だが。
拒否しない。
片膝をついたまま、
そっとグラスを傾ける。
スペクターがワインを口に含む。
その喉が上下するのを、
ノスフェラトゥは無意識に見つめていた。
スペクターは満足そうに息を吐く。
「うん」
「いい子」
その言葉だけで。
ノスフェラトゥの背筋へ熱が走る。
最悪だった。
褒められるだけで、
身体が反応してしまう。
しかも。
跪いたまま。
見上げる姿勢のまま。
スペクターはそんなノスフェラトゥを見下ろし、
赤い瞳を細めた。
「ねぇ」
「昔の君が見たら、どう思うかな」
「……」
「誰にも従わなかった怪物が」
スペクターの靴先が、
ノスフェラトゥの顎を持ち上げる。
「今は私にワインを捧げてる」
「……っ」
ノスフェラトゥは息を呑む。
羞恥。
屈辱。
それなのに。
胸の奥では、
もっと見てほしいと思ってしまう。
もっと褒めてほしい。
もっと、
“役に立つ”と思われたい。
その感情が、
じわじわ身体を侵食していく。
スペクターはゆっくり立ち上がった。
長いコートが揺れる。
そして。
跪いたままのノスフェラトゥの頭へ、
そっと手を置いた。
撫でる。
優しく。
「本当にかわいくなったね」
その瞬間。
ノスフェラトゥは目を閉じた。
悔しいほど。
その言葉が、
嬉しかった。
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**タイトル**: 執事 **何話目**: 第19話 ──もう無理…😭💕✨ ノス♡♡♡トゥが“履かせる側”から“履かされる側”に落ちてるのエモすぎん?? 昔は虐殺者だったのに今はスペクター様の革靴にそっと触れてる…そのギャップで心臓持ってかれた🥺💔 「飲ませて」って甘えてくるスペクター様も尊いし、それに従っちゃうノス♡♡♡トゥも沼すぎる…「いい子」の一言で背中に熱が走る描写、解像度バグってる天才か?! 悔しいのに嬉しいっていう感情の複雑さが刺さりました…続きが気になりすぎますぅ…!🌸