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朝。
「……ん……」
いつもなら先に起きてくる柔太朗が、今日はベッドから出てこない。
勇斗は不思議に思いながら寝室を覗いた。
「柔太朗?」
返事がない。
近づいて額に触れた瞬間、勇斗の表情が変わった。
「熱っ……!?」
柔太朗の頬は赤く、呼吸も少し苦しそうだ。
「はやちゃん……」
「ちょっと待ってろ」
勇斗は急いで体温計を持ってくる。
表示された数字は38.7℃
「ごめん……」
「なんで謝るんだよ」
勇斗は困ったように笑いながら柔太朗の頭を撫でた。
「今日は絶対安静にしてて」
「学校……」
「休み」
「でも…」
「休み」
有無を言わせない口調だった。
-–
朝食は勇斗が用意した、
お粥とスポーツドリンク。
「食べられる?」
「ちょっとだけ…」
柔太朗はスプーンを持つが、力が入らない。
すると勇斗が自然に椅子を引いた。
「俺食べさせる」
「えっ」
「はい、あーん」
「む、無理!」
真っ赤になる柔太朗。
熱があるのに急に元気だ。
「じゃあ自分で食べろ」
「……食べさせて」
「どっちだよ」
勇斗は笑いながらお粥を柔太朗の口元へ運んだ。
-–
数時間後。
柔太朗を寝かせた勇斗は制服に着替えていた。
本当は学校なんて休みたかった。
ずっとそばにいたかった。
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luv
でもテストも近い。
欠席できない事情もある。
「柔太朗」
「ん……?」
「昼には帰れないけど、何かあったら連絡して」
「うん…」
勇斗はしゃがみ込んだ。
「ちゃんと寝てろよ」
「わかった」
「無理するなよ」
「うん」
「俺いなくて寂しくなったら電話して」
柔太朗は少し笑った。
「それ、はやちゃんじゃない?」
図星だった。
勇斗は黙った。
「……行ってくる」
「いってらっしゃい」
そう言われてもなかなか離れられない。
結局、額に軽くキスしてから家を出た。
-–
教室。
いつも隣にいるはずの柔太朗の席が空いている。
それだけで違和感がすごい。
「佐野」
「……」
「佐野?」
「……」
「聞いてる?」
「聞いてない」
友達が呆れた。
「重症だな」
「うるさい」
即答だった。
-–
昼休み。
柔太朗がいないので一緒に昼ご飯も食べられない。
勇斗は机に突っ伏した。
「寂しい」
「本人いないのに言うな」
「寂しい」
「知ってる」
「柔太朗不足」
「新しい病気か?」
クラスメイトたちは笑っていた。
しかし勇斗は本気だった。
いつもなら、
『はやちゃん、それ美味しそう』
とか、
『一口ちょうだい』
とか言ってくるのに。
今日は何もない。
静かすぎる。
「帰りたい……」
「まだ昼だぞ」
-–
放課後。
チャイムが鳴った瞬間。
勇斗は誰よりも早く教室を出た。
「帰宅部最速記録更新だな」
という声が聞こえたが気にしない。
家へ一直線だった。
-–
「柔太朗!」
ドアを開ける。
するとソファに座った柔太朗が顔を上げた。
「おかえり」
その瞬間。
勇斗は安心して力が抜けた。
「よかった……」
「?」
「ちゃんと起きてた」
「子供じゃないし」
柔太朗が笑う。
勇斗はすぐ隣に座った。
そしてぎゅうっと抱きしめる。
「わっ」
「寂しかった」
「え?」
「めちゃくちゃ寂しかった」
隠さなかった。
柔太朗は目を丸くする。
「半日だけなのに?」
「半日だからだろ」
勇斗は柔太朗の肩に額を押し付けた。
「学校に柔太朗いないの無理」
「そんなに?」
「そんなに」
即答だった。
柔太朗は照れながらも勇斗の背中に手を回した。
「僕も少し寂しかった」
「少しかよ」
「ふふっ」
「笑うな」
そう言いながらも勇斗は嬉しそうだった。
結局その日、
勇斗は夕飯を作って、薬を飲ませて、何度も熱を測って。
柔太朗が眠るまでずっと隣にいた。
そして寝る前。
「はやちゃん」
「ん?」
「看病ありがとう」
柔太朗が微笑む。
勇斗はその笑顔を見て、優しく髪を撫でた。
「早く元気になれよ」
「うん」
「明日は隣にいて」
柔太朗は少し照れながら頷いた。
「はいはい」
その返事に満足した勇斗は、そっと柔太朗を抱き寄せた。
今日はいつもより少しだけ強めに。
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コメント
2件
うわあ、めちゃくちゃ良かった……! 風邪ひき柔太朗を看病する勇斗の、あの過保護で真っ直ぐな優しさがとにかく刺さりました。「柔太朗不足」って新しい病名を生み出すほど寂しがるところとか、帰宅後ギュッて抱きしめて「半日だから寂しかった」って即答するシーンとか、二人の距離感が愛おしすぎる。設定も無理がなくて、自然な日常の一片を切り取った感じが心地よかったです。続きが読みたい……!