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あの日以来、玲王の行動はさらに加速した。
自分の気持ちを自覚し、潔の首筋に「印」を刻んでからは、もはや周囲の目など(恥ずかしがりつつも)二の次になっていた。
トレーニングの合間、誰もいないストレッチルームの隅。
あるいは、食堂のドリンクバーで二きりになった瞬間。
「……おい、潔。ちょっとこっち来い」
「ん? なんだ、玲王……んっ!?」
ぐい、とジャージの襟を掴んで引き寄せられ、至近距離で唇が重なる。
一瞬の、けれど熱い接触。
玲王は顔を真っ赤にしながらも、満足げに唇を離し、「……お返しの利子だ。忘れんなよ」と吐き捨てるように言って去っていく。
そんなことが一日に何度も繰り返されれば、普通の人間なら「これ、好きってことだよな?」と気づくものだ。しかし、潔世一は究極のサッカー馬鹿にして、恋愛偏差値2の天然男だった。
(……今日も玲王にキスされた。……これで5回目か)
潔は唇を指でなぞりながら、真剣な顔で考え込んでいた。
(……なるほど。御影家っていうのは、受けた恩をこれでもかってくらい細かく、熱心に返す家系なんだな。あの時あんなに服や靴を買ってもらったから、その「お返しのお返し」を、キスっていう『誠意』で返してるんだ。……流石、一流の財閥は礼儀の重みが違うぜ……!)
潔の中では、玲王の情熱的なアプローチが「御影家流・格調高い感謝の儀式」として完璧に変換されていた。
「玲王、今日も丁寧な挨拶(キス)ありがとな! 御影家の礼儀正しさ、マジで尊敬するよ」
「…………は???」
練習後、爽やかな笑顔でそう告げられた玲王は、持っていたスポーツボトルを落としそうになった。
「あ、挨拶……? お前、これをお辞儀か何かだと思ってんのか!?」
「え? 違うのか? だって、あんなに何度も熱心に……。御影家って、義理堅いんだな。俺も負けてらんねーよ!」
そう言って、潔は「俺もお返しのお返しのお返しだ!」と言わんばかりに、自分から玲王の頬にちゅっと軽いキスを返した。
「……っっっ~~~~~!!!」
玲王の顔面は、ブルーロックの照明よりも赤く発光した。
あまりの衝撃と愛おしさに、その場に崩れ落ちる玲王。
「お前……っ、マジで……天然……っ、確信犯だろ……死ぬ……可愛すぎて俺が死ぬ……っ!!」
「えぇ!? 玲王、大丈夫か!? やっぱり御影家の儀式は体力の消耗が激しいんだな……!」
心配して背中をさする潔と、あまりの尊さに悶絶する玲王。
御影家の「マナー」という名の独占欲は、今日も今日とて、潔世一という無自覚な怪物をさらに甘く狂わせていく。