テラーノベル
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午後、ブルーロックの図書室、人気のない資料コーナー。潔がサッカーの戦術本を熱心に読み耽っていると、背後から音もなく近づく影があった。
「……おい、潔」
「うわっ、玲王か。びっくりした……」
振り返ろうとした潔の肩を、玲王の両手ががっしりと掴んで固定する。
「動くな」
低い、どこか切迫した声。玲王の視線は、潔のシャツの襟元から覗く「うなじ」に釘付けだった。数日前にあんなに激しく刻んだはずの紅い痕が、今は薄いピンク色に変わり、消えかかっている。
それが、玲王にはどうしようもなく我慢ならなかった。
自分の所有印が消えていく。それは、潔がまた「誰のものでもなくなってしまう」ような焦燥感を煽った。
「……れお……っ?」
返事をする間も与えず、玲王は潔の項(うなじ)へと顔を埋めた。
そして、柔らかい産毛の生えるそこを、容赦なくガブリと噛みついた。
「あ、っ…………は、んぅ……っ!?」
潔の口から、自分でも驚くような、脳の芯まで痺れるような「甘い声」が漏れた。
単なる悲鳴ではない。ゾクゾクとするような快感と驚きが混ざり合った、無防備で熱っぽい声。
「……っ!!??」
その声を聞いた瞬間、玲王の顔面は爆発したように真っ赤になった。
あまりにもエロすぎる。あまりにも、自分を求めているかのような響き。
「お、お前……! 今、なんて声出したんだよ……バカ潔……っ!!」
「えっ、あ……ご、ごめん……。なんか、急に噛まれたから……びっくりして……」
潔は顔を真っ赤にしながら、自分の口元を両手で覆った。
「……なんか、変な感じしたんだ。首の……あそこ、なんかゾワゾワするっていうか……熱いっていうか……」
潤んだ瞳でそんなことを口にする潔。その「ゾワゾワ」の正体が、自分への反応だとは露ほども思っていない天然ぶりに、玲王の理性は再び限界を迎える。
(……クソ。……こんな声、他の奴に聞かせてたまるかよ……っ!)
「……消えかかってんだよ、跡が。……だから、もう一回だ」
玲王は今度は優しく、でも逃がさないように、潔の項の同じ場所に吸い付いた。
ジュウ、と湿った音が静かな図書室に響く。
潔の身体がビクンと跳ね、再び「……ん、ぅ……っ」と、甘い吐息が玲王の耳元をくすぐった。
「……これでよし。……明日も、ちゃんと見せつけろよ」
玲王は真っ赤な顔のまま、今度は噛み跡の横に、さらに濃く、深い紫色のキスマークを「上書き」した。
潔は、自分の首筋がドクドクと脈打つのを感じながら、「御影家のお返しって、どんどん激しくなるんだな……」と、やっぱり見当違いな感心をして、真っ赤な顔の玲王にされるがままになっていた。
玲王は自室に戻っても、まだ指先に残る潔の項の熱を反芻していた。
(……なんだよ、あの声。……人生で、こんなに心臓がうるさかったことなんてねーぞ……っ!)
御曹司として、欲しいものはすべて手に入れてきた。でも、潔世一という男だけは、手に入れるたびにさらに欲しくなる。
一方、そんな玲王の焦りを知ってか知らずか、蜂楽は軽やかな足取りで潔をゲーセンへと連れ出していた。
「ねぇねぇ、潔! あのクレーンゲーム、一緒にやろうよ!」
「お、いいな! 蜂楽、あれ狙ってるのか?」
休日のゲームセンター。騒がしい電子音の中、蜂楽は当然のように潔のパーソナルスペースをゼロにする。
「友情」という盾を使いながら、肩が触れ合い、腕が絡まるような距離。潔は「蜂楽はいつもこうだよな」と、疑いもせず笑っている。
「あ、惜しい! あとちょっとだったのに」
「えー、潔、下手くそ〜。貸して、俺が手伝ってあげる」
蜂楽は潔の後ろに回り込み、潔の手を上から包み込むようにしてコントローラーを握った。
実質、バックハグのような体勢。
「……っ、蜂楽? ちょっと近くないか?」
「え? だって、こうしないと狙いが見えないもん」
蜂楽はケラケラと笑いながら、わざと潔の耳元に顔を近づけた。
「ねぇ、潔……。昨日の玲王ちゃんとの『お返し』、まだ首に残ってるね」
低く、甘く、囁くような声。
蜂楽の熱い吐息が直接耳の奥に吹き込まれ、潔は思わず肩を跳ねさせた。
「っ、……びくっ、……な、何だよ急に……!」
「あはは! 潔、耳弱いの? 可愛い〜。……玲王ちゃんには、こういうことされてないんだ?」
蜂楽の瞳の奥が、一瞬だけ鋭く光る。
潔は、耳元に残るゾワゾワした感触と、蜂楽のいつもより少しだけ強引な距離感に、顔を赤くして動揺した。
「……されてない……っていうか、……玲王は、もっと、その……強引っていうか……」
「ふーん。……じゃあ、俺はもっと『優しく』してあげよっか?」
蜂楽は潔の耳たぶを、唇が触れるか触れないかの距離でなぞる。
潔は「……っ、ん……っ」と、昨日玲王に噛まれた時とは違う、くすぐったくて、でも身体が熱くなるような感覚に、さらに顔を赤く染めた。
そこへ、我慢できずに後をつけてきた(あるいは奇跡的に遭遇した)玲王が、般若のような形相で現れる。
「……おい。……蜂楽、テメェ……潔から離れろ!!」
「あ、玲王ちゃんだ。お買い物?」
「買い物なわけねーだろ! 潔、お前も! ……そんな顔して、こいつに何されてんだよ!」
玲王は真っ赤な顔で、潔を蜂楽の腕の中からひったくるように引き寄せた。
潔はまだ耳元が赤いままで、「……いや、蜂楽がゲームのコツを教えてくれて……」と、やっぱり何も分かっていない。
玲王は、潔の赤くなった耳を見て、嫉妬で発狂しそうになりながらも、再び潔を自分の背後に隠した。
「……帰るぞ! ゲーセンなんて、菌がうつる!」
「えぇ!? どんな理由だよそれ!」
玲王は人生最大のドキドキと、人生最大の嫉妬を抱えながら、潔の腕を強く掴んでその場を後にするのだった。
蜂楽はその後ろ姿を見送りながら、指先をペロリと舐めて、「……次はもっと、深く行っちゃおうかな」と不敵に笑っていた。
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