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けれど、それはレオン様への誘惑用であって
ヒロインに「憧れられる」なんて設定、原作のどこにもなかったはずだ。
「わ、私なんかに憧れるより、もっと素敵な人がたくさんいるわよ?」
「いいえ!」
マリンが必死に食い下がる。
「メリッサさんは素敵です! 豪胆で、優しくて、自分の意見を持っていて……私、昨日初めて会った時から、ずっとドキドキしてて……!」
(え、ちょっと待って。この台詞、どっかで聞いたことあるような……)
そう、まさにそれは。
私の最推しであるレオン様が、本来のゲームルートで主人公へ向けるはずだった
「初恋の告白イベント」のセリフに、構成がそっくりだった。
しかも、「ドキドキしてて」というフレーズは、完全にヒロインの純粋な恋心を表すものだ。
「ちょ、ちょちょちょ、ストップ!」
思わず両手でマリンの口を塞いでしまった。
マリンは驚いたように、潤んだ目を丸くしている。
まずい。非常にまずい状況かもしれない。
(まさか、攻略対象に愛されるはずのヒロインが、悪役令嬢を攻略対象として認識し始めた……!?)
私、いつの間に百合ルートの主人公になったのよ!
それもそれでアリだけれど!!
ってそうじゃないそうじゃない。
「……ごほん。あ、貴女にはレオン様が一番お似合いよ? 彼は誠実で、忠義に厚くて、剣術もすごいし!」
「レオン様ですか……? うーん、彼は少し怖い感じがします。それに、私を見る目が、どこか冷たいというか……」
(いやいや! あれは不器用なだけ! 鋼の心の中に優しさが詰まってるツンデレなのよ!)
「それに比べてメリッサさんは、温かいですし、私の話を真剣に聞いてくれますし……!」
マリンの潤んだ瞳が、私を直視する。
ああ、こんな時に限って、悪役令嬢特有の圧倒的なカリスマオーラが出てしまっている気がする!
「な、なので、これからも仲良くできたら嬉しいなって思ったのですけれど……迷惑でしたか……?」
(うっ!! 眩しい……っ!!! そんな捨てられた子犬のような目で見つめられたら、勝てるわけないでしょ!)
「い、いや! そんなことはないわ! 私もマリンさんとは良いお友達になれればと思っているのだから!」
慌てて取り繕うように答える。
まさか私がヒーローポジションに収まり、ヒロインからアプローチを受けるなんて……。
「本当ですか? そう言っていただけて安心しました……!」
パッと花が咲いたような笑顔になり、マリンが飛びつくように私の腕にしがみついてきた。
くん、と甘い香りがして、柔らかな胸の感触が腕に伝わる。
あまりの近さに思考が一瞬飛ぶ。
落ち着け私……
まあ、いいわ。
少し計算が狂っただけ。
ヒロインと仲良くなることは、生存戦略としては大成功なんだから。
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