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大気を切り裂くような極夜の吹雪が、打ち捨てられたコンクリート製の地下貯水槽を激しく叩いていた。
数時間前に繰り広げられたルナティックの追撃戦。
エリオットは敵の放った氷結魔術の余波を受け、濁流に飛び込まざるを得なかった。
命からがらセーフハウスへと逃げ込んだものの、彼の身体は完全に芯まで冷え切っていた。
「……っ、くしゅん! あはは……参ったな、本当に凍え死んじゃいそうだ」
エリオットは濡れた金髪を肩に散らしながら、紫に震える唇でいつもの微笑を作ろうとした。
しかし、その端正な顔打ちは青白く、ガチガチと奥歯が鳴るのを止められない。
彼は限界を迎えた指先で、水分を吸って重くなった「Builder Brother’s Pizza」の赤い制服シャツのボタンを一つずつ外し、床へとしずくを滴らせながら脱ぎ捨てた。
白皙の細い上半身が、冷徹な闇の中に剥き出しになる。
「……バカが。意地を張るなと言ったはずだ」
低い地鳴りのような声と共に、背後から巨大な質量が迫った。
ピザガイだ。
男は躊躇なく、自身が着ていた乾いた赤い制服シャツをその分厚い胸板から引き剥がし、震えるエリオットの肩へと無造作に被せた。
「っ、あ……温かい……」
そのシャツには、ピザガイの圧倒的な体温がそのまま残っていた。
それだけではない。
男の銀髪から漂う、長年染み付いた硝煙の焦げた臭い、汗、そしてほんの微かなトマトソースのスパイスが混ざり合った、強烈な「男の匂い」が、エリオットの鼻腔を容赦なく支配した。
エリオットはその強烈な雄の香りに包まれただけで、身体の奥底がじわりと熱くなるのを感じ、思わずシャツの襟元に深く顔を埋めた。
しかし、ピザガイのシャツは、大柄な彼に合わせた規格外のサイズだ。
エリオットが袖に腕を通すと、長すぎる袖口から指先が少し覗く程度で、裾は太ももの半ばまでをすっぽりと覆い隠してしまった。
そして何よりも、広すぎる襟ぐりのせいで、エリオットが身をすくめるたびに、布地がずるりと滑り落ち、その滑らかな白い肩と、鎖骨の深い窪みが完全に露わになってしまったのだ。
「…………っ」
暗闇の中、ピザガイの喉が、ゴクリと重い音を立てて鳴るのをエリオットは聞き逃さなかった。
見上げれば、銀髪の隙間から覗くピザガイの黒い瞳が、尋常ではない熱を帯びてエリオットの肌を凝視していた。
上半身裸になったピザガイの胸板は、歴戦の傷跡に覆われ、はち切れんばかりの筋肉が月光にうねっている。
男の呼吸が、目に見えて荒く、熱くなっていくのが分かった。
外の猛吹雪など、一瞬で消し飛びそうなほどの、濃密な衝動が狭い空間を満たしていく。
エリオットの唇に、いつものビジネスではない、男を狂わせるための歪んだ微笑が浮かび上がった。
「ねえ、ピザガイ……。サイズが大きすぎて、なんだか落ち着かないな。それに、君の匂いが強すぎて、頭がどうにかなりそうだよ。」
彼はわざと、大きすぎるシャツの裾を細い指先で少しだけ持ち上げ、太ももの内側の柔らかい肌を見せつけるようにして、ピザガイを一瞥した。
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ゆ(旧「ゆゆゆゆ」)
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ゆ(旧「ゆゆゆゆ」)
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「……これじゃ、まだ寒いんだ。君の『熱』で、もっと直接、温めてよ」
それは明らかな挑発であり、獣の檻を開けるための鍵だった。
「…お前が誘ったんだ、エリオット」
ピザガイの理性の糸が、音を立てて弾け飛んだ。
大きな手がエリオットの顎を強引に掴み上げ、強烈な力で唇が重ねられた。
それはキスというにはあまりにも獰猛で、互いの肉を貪り合うような暴力的な口づけだった。
ピザガイの熱い舌が、エリオットの口内を容赦なく蹂躙し、支配していく。
血と硝煙の味が混ざり合うなかで、エリオットは苦しげに鼻を鳴らしながらも、その圧倒的な質量に溺れるような快感を覚えていた。
「ん……っ、あ……、は……っ、ピザ、ガイ……っ!」
唇が離された瞬間、エリオットの唇からは、ビジネスではない、本能が剥き出しになった艶っぽい喘ぎ声が漏れた。
しかし、ピザガイは彼に息を整える時間さえ与えなかった。
大きな手が、エリオットが着たばかりの自身のシャツを、さらに乱暴に左右へと押し広げる。
ボタンがいくつか千切れ飛び、コンクリートの床に小さな音を立てて転がった。
広げられたシャツの隙間から、エリオットの引き締まった細い胴体が完全に露出する。
ピザガイはその大きな手のひらで、エリオットの脇腹から胸元、そして敏感な先端へと、ザラついた愛撫を這わせた。
「あッ……! あ、痛い、よ、力が、つよ……っ」
「痛いなら、俺に縋れ。お前が俺を挑発したんだ、手加減など期待するな」
ピザガイの低く掠れた声が首筋に突き刺さると同時に、彼の鋭い歯が、エリオットの鎖骨の皮膚を強く噛み締めた。
鋭い痛みがエリオットの脳髄を貫き、直後、それを上書きするような強烈な快感が全身の神経を駆け抜ける。
「あ、ぐ……っ! ああ、いいよ……もっと、君の印を、僕に、ちょうだい……!」
エリオットは真っ赤に上気した顔で、長い金髪を狂おしく揺らしながら、ピザガイの逞しい背中に両腕を回した。
ピザガイの大きな身体が、エリオットの細い肉体を完全に床へと押し潰す。
防寒ベストも、アサルトライフルも、赤いバイザーも、すべては2人の熱情の邪魔物として周囲の闇へと蹴り飛ばされていた。
衣服が擦れ合う激しい音と、肉体と肉体が衝突する生々しく重い衝撃音。
コンクリートの冷たさなど、もう誰も覚えていなかった。
エリオットの太ももを強引に割り開き、自身の凶暴なまでの質量を押し付けていくピザガイの熱量は、外の地獄のような寒波を完全に消し去っていた。
「お前は、俺の、ものだ……。ルナティックにも、他の誰にも、指一本触れさせん……」
「うん……っ、僕は、君だけの、トッピング……だから、激しく、仕込んで、ピザガイ……っ!」
凍てつくセーフハウスの奥深く、お互いの存在を肉体の最奥で確かめ合うように、二人は激しく交わり続けた。
コインランドリーの割れた窓から吹き込む極寒の風など、もはや2人の肌に届く前に蒸発していた。
床に投げ出されたアサルトライフルの金属質な冷たさとは対照的に、エリオットの背中はピザガイの太い腕によって完全に床から浮かせられ、男の分厚い胸板へと強く押し付けられていた。
サイズが大きすぎる赤い制服シャツは、完全に前が開いた状態でエリオットの細い腰に辛うじて引っかかっているだけだ。
白皙の肌は、ピザガイが容赦なく刻みつけた赤黒い歯型とキスマークで まるで新しいトッピングのように情欲的に彩られ、汗の雫が月光を浴びて淫らにきらめいている。
ピザガイの愛撫は、およそ繊細さとは程遠い。
ピザ生地のガスを抜くときのように、力任せにエリオットの引き締まった脇腹を掴み、指頭を肉にめり込ませる。
だが、その乱暴な強さのすべてが、エリオットにとっては脳髄を焼き尽くすほどの極上の愛撫だった。
「は、っ……あ、そこ、だめ……ッ、あは、頭が、おかしくなっちゃう……!」
「ダメなわけがあるか。お前が俺を呼んだんだろ……!」
ピザガイは低く地鳴りのような声を上げると、エリオットの細い片脚をその逞しい肩へと強引に担ぎ上げた。
無防備に開かれた最奥へと、男の凶暴なまでの質量が限界まで押し込まれる。
「ひ、あぁぁぁあッ……!!」
エリオットの口から、割れた硝子のような、高く甘い悲鳴が迸った。
あまりの衝撃に、青い瞳が大きく見開かれ、涙がボロボロと溢れて長い金髪を濡らす。
頭の先からつま先まで、ピザガイという存在だけで完全に満たされ、蹂躙される感覚。
内臓を直接灼かれるような熱さに、エリオットは身悶えし、余ったシャツの袖を必死に口元に咥え込んで声を殺そうとした。
しかし、ピザガイはその手を伸ばし、エリオットの口から乱暴に布地を引き抜いた。
「声を、隠すな……。お前のその声も、全部俺が買い占めてるんだ」
「ん、あ……っ、ふ、あぁぁ! ピザガイ、激し、すぎるよ……っ、でも、いい、もっと、もっと奥まで……ッ!」
エリオットは狂ったように首を振り、男の銀髪に両手を絡ませてその顔を強く引き寄せた。
自ら唇を塞ぎにいき、互いの唾液が熱く交ざり合う。
息が詰まるほどの深い口づけの最中にも、ピザガイの腰の駆動は一瞬たりとも緩まない。
容赦のない、重く正確なピストンが、エリオットの最も敏感な一点を幾度も、幾度も、執拗に抉るように突き穿っていく。
「ピザガイ……、あ、あ、もう、僕、だめ……っ、いっちゃう、いく……っ!」
エリオットの限界を察したかのように、ピザガイの黒い瞳がギラリと暗く据わった。
彼はエリオットの細い腰を両手でギリギリときつく掴み、逃げ場を完全に無くした状態で、最後の一撃を最も深く、 激しく突き立てた。
「お前を……誰にも、渡さん……ッ!」
「あ、……ッ、んぁああ…ッ!」
2人の身体が激しく硬直した。
エリオットの口から、この夜で一番甘く、高い鳴き声が弾け飛ぶ。
と同時に、彼らの境界線から、熱い生命の奔流が溢れ出た。
エリオットの視界が、快楽のフラッシュで真っ白に染まる。
ピザガイもまた、エリオットの首筋に顔を埋め、獣のような低い咆哮を上げながら、自身のすべてを恋人の奥深くへと注ぎ込んでいた。
数分後。
激しい嵐が去ったあとのように、静まり返ったコインランドリー。
ハァ、ハァ、という2人の荒い呼吸の音だけが、白く冷たい霧となって闇に消えていく。
エリオットはピザガイの逞しい胸に完全に抱きすくめられたまま、心地よい疲労感のなかで目を微かに開いた。
はだけた赤いシャツの隙間から、心地よい男の匂いがまだ濃厚に漂っている。
ピザガイは無言のまま、床に転がっていたチタンプレート入りの「赤いバイザー」を拾い上げると、埃を優しく払い、エリオットの乱れた金髪の上にぽん、と載せた。
そして、余った大きな制服シャツのボタンを、今度は驚くほど優しい手つきで、上から一つずつ、丁寧に留め直していく。
「……冷えるぞ。次はちゃんと留めておけ」
ぶっきらぼうに呟くピザガイの耳元が、心なしか赤い。
エリオットはバイザーのつばを指先でくいっと上げると、真っ赤に上気した顔のまま、いつもよりずっと深くて甘い、心からの笑顔を浮かべた。
「あはは……。ありがとう、ピザガイ。でも、これじゃあ明日の『開店準備』のとき、腰が痛くて動けないかもしれないな」
「……その時は、俺がお前を背負って戦うだけだ」
銀髪の男はフンと鼻を鳴らし、エリオットの細い身体をさらに自分の腕の中へと引き寄せ、温めるように強く抱きしめた。
外の世界は相変わらず地獄のままで、明日になればまたルナティックやゾンビとの命がけの配達(戦闘)が始まる。
けれど、この冷めない熱量がある限り、2人の「Builder Brother’s Pizza」が閉まることは、決してないのだった。