「今日の依頼はー、、うん、あとヒルチャール討伐だけだね。まだお昼だし、終わったら魈のところにでも行く?」
「おうっ!ついでに昼飯と夜飯食べに行こ〜ぜー!!」
絶対についでじゃないでしょ。。と思いながら、自分のまわりをぷらぷらと上機嫌に飛ぶ相棒を見る。
今日の依頼は大きくわけて2つで、そのうちのひとつは午前中に終わらせた。
次は璃月近くのヒルチャール討伐だったので、ついでに魈のところによることにしたのだ。
パイモンは料理がメインじゃないの?と聞くと、
「!?そ、そんなわけないじゃないか蛍!早く依頼クリアするぞ〜!!」
とわざとらしく目をそらす。
そういう所もかわいいなと思ってしまう私はおかしいのだろうか、、?
「ここ、、ら辺かな」
依頼場所に向かう途中に見かけた綺麗な花も、魈に渡すために大切に持っていく。
「・・・でもおかしいぞ、蛍。
ヒルチャールなんて一人もいなくないか?」
・・・そうなのだ。
なぜかヒルチャールが一体もいない。
だれかが先に討伐してくれたのか?
それとも敵の策略なのか?
策略だとしたら、ヒルチャール以外にもファデュイがいる可能性もあるのか、、?
いろいろ考えてみるが、どうも頭が働かない。
「・・・パイモン、なにか嫌な予感がする。」
そうなのだ。重だるいというか、なんというか。
とにかく、ここに長くいちゃいけないと本能が訴えていた。
「じ、じゃあ冒険者教会に戻ってキャサリンに事情を話すか、、?」
「・・・うん、そうしよっか。」
というと、あからさまに目を大きく開いて喜ぶから、任務なんてもういっかな、とまで思いそうになってしまう。
「やった〜!!蛍!早く帰るぞ!!美味しいご飯がオイラを待ってる〜!!」
「まっ、待ってパイモン、私飛べないんだけど!?」
崖ですらスイスイと登っていく非常食は、私のことなど1ミリも気にかけていなかった。
仕方ないので自分も歩きだすが、到底追いつけそうにないのでゆっくり歩く。
「・・・っ!?」
急に辺りが暗くなる。
いや、自分のまわりだけ?
いつものように頭が働かず、何が起こっているのか理解するのに時間がかかった。
そのまま身動きが取れずに辺りを見回していると、
上から焼けるような熱さが自分の身に襲いかかった。
アビスだ。
なぜアビスがここに?
ヒルチャールではないの??
頭の中は混乱に混乱を重ねて、既にキャパオーバーだった。
背中がジリジリと痛むけれど、今はこのアビスを倒すことに意識を傾けた。
「やぁっ!!」
と剣を振るうが、宙に浮いているアビスには全く届かず、
逆にアビスの攻撃が自分の身を焦がしていく。
「いっ、、!!」
アビスが杖を投げ、それが運悪く蛍の手に当たってしまった。
しかも剣をもっている右手に。
ジリジリと痛むけれど、構っている暇はない。
剣を取りに行こうと走り出すが、
「ドスッ」
と、鈍く重量感ある音が地面に響く。
遺跡守護だ。
「なんっ、、でっ、、」
蛍は自分の目を疑ったけれど、目の前にいるのは遺跡守護で間違いなかった。
しかも自分を見ているのだ。
上にはアビス、隣には遺跡守護。
もう蛍はどうしていいか分からず、なにもできなかった。
そんな蛍を敵が待つわけがなく、どんどん蛍に攻撃が当たる。
「〜〜!?!?」
声に出ないほどの痛みに悶絶するも、相手はそれを笑うだけ。
今まで助けた人、迷惑をかけた人、お兄ちゃん、そして魈。
もう、会えなくなっちゃうのかな。
そう考えただけで涙が零れ落ちていく。
蛍の頬を伝って地に落ちた涙は、一瞬のうちに吸収されていた。
私の命もこうやって消えゆくのだろうか。
そう考えたとき、ここで死ぬ運命なのか。という考えが頭の中に浮かんだ。
「ーーーーー最後に、魈にだけは、、、あい、たかった、な、、、」
そう、ぽつりと言い残すと、いつもより力強い、けれど優しく暖かい風が蛍の頬を撫でた。
神様がお迎えに来てくれたのかな、なんて気楽に考えていたが、どうもそういう訳ではないらしい。
「お前はほんとにっ!?」
と息を切らしながら肩で息をする彼。
しょ、、う、、?
そう言葉にしたかったのだが、実際は口をはくはく動かしているだけで声にでていなかった。
「も、、げんっ、、、か、、」
そう言い残すと、蛍の意識は途絶えた。
「ーーる!!ーたる!!」
そう、自分の声を呼ぶ声が聞こえる。
嬉しいけど、少し焦れったい。
私の大好きな声だ。
「ーーーーしょ、、、う、、?」
「!!!よかった、、、」
と一言言うと、パタリと座り込んでしまい、眉間に皺を寄せて蛍を睨んだ。
けれど、嫌悪の睨みではなく、
『なぜ我を呼ばなかった』
という心配が見えて少し、いやかなり嬉しくなった。
「、、ご、め、、、しょ、、」
「もういい、喋るな。」
痛みが感じられないほど怪我をしているようで、ついでに身体が熱く、痙攣している。
「・・・発熱しているな、なぜ我を呼ばなかった。なぜお前は無理をする?」
そう言う彼の言葉には、感情の起伏が激しいのがよくわかるほど怒りが満ち溢れていた。
いや、怒りなのか?
本当は心配なのかもしれない。
そうだったら嬉しいな、なんて考えていたら、それが表情に出てしまっていたようで、
「・・・なにを笑っている。我は本当に」
「ぁり、、がと、、しょ、、」
そう、笑いながら。
彼に不安を、心配を与えないように。
だんだん体から力が抜けていくのを感じる。
もう、本当に死んじゃうのかな。
でも最後に会えた。
「・・・しょ、、」
「なんだ」
そういい私を抱える彼は、見るまでもなく焦っていた。
それが嬉しい。
私のために来てくれて、心配してくれて。
私は、、そんな優しい彼が大好きだ。
このおもいを伝えずに死ねない、そう思って。
「だい、、す、き、、」
そう言葉をこぼす。
なぜか涙も溢れてくる。どうしたものか、こんな顔見られたかった訳じゃないのに。
魈は目を大きく見開いたあと、頬を赤く染めながら
蛍の目にキスを落とした。
「・・・我もだ」
もしかしたら風に飛ばされてしまうかもしれないほど小さな声でそう呟く。
いや、もしかしたらこの声も幻聴?
「・・・ぁ、」
嬉しすぎて忘れるところだった。
そうだ、花をまだ回収していない。
あんなに大切に持っていたのに。
「喋るな、安心しろ。我が連れていく。」
そう優しく微笑む顔を見て、顔に熱が集まるのを感じる。
ーーーいまだけは、こうしていたい。
また今度でいっかな、と心の中で呟き、暖かな風を感じながら空を飛ぶ。
心地がいい。魈の顔を見ながら、二人で空の旅なんて。
まあ私は血まみれだけれど。
やっぱり、私は魈がすきだ。
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