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長老が去った翌朝。庭には、昨夜の霧の名残がまだ漂っていた
澪は縁側で、静かに空を見上げていた。
(⋯⋯魂を異界に捧げるって、どういうことなんだろう)
(でも⋯⋯私は、もう決めた)
その時、背後からそっと近づく気配。
「澪さん」
「⋯⋯朧さん」
朧は澪の隣りに座り、しばらく黙って空を見つめていた。
「⋯⋯昨夜のこと、驚かせてしまいましたよね」
「ううん。でも、ちゃんと聞けてよかった。知らないままじゃ、選べなかった」
「⋯⋯澪さんは、まだ若い。これからいろんな未来がある。それを私が奪ってしまうのではないかと、怖いのです」
「⋯⋯でも、私が選んだの。朧さんと生きるって」
その夜。
屋敷の奥、静かな神殿のような場所に、ふたりは並んで立っていた。
「ここが⋯⋯”契りの間”?」
「はい。ここで、正式に”花嫁の契り”を交わします」
(⋯⋯これで何回儀式を行ったのって何回目なんだろう⋯⋯異界って大変⋯⋯)
「⋯⋯途中、痛いと感じることがあるかもしれませんが、私がすぐに癒やしますので、ご安心を」
「え⋯⋯?痛い⋯⋯って何のこと⋯⋯だろう」
(でも⋯⋯今は”契り”を交わすのに集中⋯⋯)
澪は朧の手を取った。
「⋯⋯お願いします。私を、あなたの花嫁にしてください⋯⋯!」
朧は静かに目を閉じ、懐から小さな刃を取り出した。
「この刃で、あなたの指先に”契りの印”を刻みます。それは、私の魂とあなたの霊を無ずぶ証」
(痛いかもしれないのはこの事⋯⋯でも⋯⋯朧さんと結ばれるなら──)
澪は指を差し出した。
「⋯⋯お⋯⋯願いします」
朧が刃を走らせると、澪の指先に小さな赤い光が灯った。
同時に、朧の指にも同じ印が浮かび上がる。
「⋯⋯これで、ふたりは繋がりました」
契りを終えたあと、ふたりは静かに見つめ合った。
「澪さん。これから先、何があっても⋯⋯私はあなたの隣にいます」
「私も⋯⋯朧さんの隣にいます。どんな未来でも、一緒に歩きます」
朧は澪をそっと抱き寄せ、その額に唇を落とした。
「⋯⋯ありがとう。あなたが私を選んでくれたこと、決して忘れません」
「私も⋯⋯朧さんに出会えて、よかった」
ふたりの影が、月明かりの中でひとつに重なっていく──。