テラーノベル
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契りの儀から数日後。屋敷の空気が、どこかざわついていた。
「⋯⋯空が、赤い⋯⋯?」
澪が空を見上げると、夕焼けをとは違う、不気味な朱が空を染めていた。
「澪さん、屋敷の奥へ」
朧が澪の手を取り、急いで奥の間へと導いた。
「何が⋯⋯起きてるんですか?」
「異界の均衡が崩れました。”人の魂”が異界に入ったことで、境が揺らいでいるのです」
「それって⋯⋯私のせい⋯⋯?」
「違います⋯⋯!あなたは⋯⋯何も悪くない。でも⋯⋯このままでは、あなたが危ない」
すると、屋敷の外から、不気味な気配が押し寄せてくる。
「朧⋯⋯出てこい⋯⋯」
低く響く声。
それは、異界の守護を司る”影の番人”だった。
「人の魂を連れこんだ罪⋯⋯その代償を払ってもらうぞ」
朧は澪の前に達、静かに刀を抜いた。
「澪さん。ここから先は、私が──」
「待ってください!」
澪が朧の袖を掴んだ。
(どうすればいいのかわからない⋯⋯戦い方も⋯⋯だけど⋯⋯!)
「私も戦います⋯⋯!私のせいで起きたことなら、私も責任を持ちたい」
「⋯⋯でも、あなたは──」
「私は、あなたの花嫁です。ふたりで選んで未来を、ふたりで守りたいんです!」
影の番人が放った黒い霧が、ふたりを包み込もうとしたその時──
「⋯⋯っ!」
澪の胸元が、淡く光り始めた。
契りの印が、まばゆい光を放つ。
「これは⋯⋯」
「澪さん⋯⋯あなたの魂が⋯⋯!」
澪の周囲に、桜の花びらのような光が舞い始めた。
「私⋯⋯わかる気がします。この力は⋯⋯あなたと繋がったから、目覚めたんですね」
澪は両手を広げ、光の花を咲かせた。
「この光で⋯⋯あなたを守る。そして、私たちの未来を守る!」
影の番人が、光りに包まれて消えていく。
静寂が戻った庭で、朧は澪を見つめていた。
「⋯⋯あなたは、強い」
澪はくすりと笑う。
「ふふっ⋯⋯以前にも同じようなことを言われた気がします。朧さんがいたから、強くなれたんです」
「⋯⋯ならば、今こそ──」
朧は澪の前に跪き、手を差し出した。
「澪さん。あなたと、真の契りを交わしたい。魂も、命も、全てを分かち合う契りを」
澪は微笑み、その手を取った。
「⋯⋯はい。私も、あなたと生きたい。この先も、どんな未来でも──一緒に」
ふたりの手が重なった瞬間、光が夜空を照らし、異界と人の世を繋ぐ”新たな道”が生まれた。