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〜side叶〜
僕は警察署に向け車を走らせている
急ぎながらも辺りを確信しながら
「まだ‥‥こっちには来てないのか」
警察署に届くと駆け出し、ローレンのいる場所へと向かう
詰所の扉を開けるとローレンが慌てて反対側の扉から出ようとしていた
「ローレン!通達来たか?」
「お、叶さん!来たんだけど、今小柳の声が‥‥」
「え?こやの?」
ローレンが開けようとした扉がエクスによって開けられた
「ローレン!小柳がっ‥‥叶さん⁈丁度良かった!叶さん、早く来て!」
「何?こやに何かあったの?」
僕達はエクスに続きかけ出す
開けっぱなしのドアを潜り、奥の個室に向かう
中が覗ける位置まで行く
ロウの疼くまる背中
もう分かる
背中に何かつけてる?
いや、これは‥‥
「ロウ‥‥ロウ?」
「ゲホッ‥‥はぁ、‥‥叶さん?」
後ろ姿はロウだ
なのにその腰と頭に付けてるものは?
「え、小柳‥‥コスプレしてんの⁈」
ローレンの悪気の無い言葉にエクスが背中を突いた
「んな訳あるかよ!顔色も悪いのに‥‥」
「え、だって‥‥その耳と尻尾は‥‥」
「‥‥‥‥え?」
ロウが恐る恐る頭に手を伸ばす
耳に手が当たるとピクピクと右耳が動く
「‥‥可愛い」
「いや、叶さんも違うでしょ⁈」
「いや、可愛い」
「ローレンは黙って」
白銀のとても綺麗な毛並み
僕はロウの側に行きしゃがむ
汚れた顔をハンカチで拭き、手を取る
「立てる?休憩室に行こう」
「大丈夫です」
手をしっかり掴み、ロウが立ちあがろうとする
「‥‥‥‥っ」
「あ、いいよ。大丈夫」
よろめいたロウに2人も手を添える
崩れ落ちそうなロウの脚の裏に手を添え、一気に抱き抱えた
「2人も休憩室に来れる?話もあるし」
「そうだな。エクスさん、大変な事が起きてるんだ」
4人は休憩室に向かった
窓際に簡易のベッドが2つある
そこにロウを横たわらせる
青白い顔で蹲っている
大きなフサフサの尻尾はぐてんとベッドから垂れ下がってしまう
僕はその尻尾を根本から先まで何度か触り、ロウの足元に寄せる
「今、この世界が大変な事になってる。ローレンはたぶん上層から聞いたよね?」
「あぁ、一通りは聞いたよ」
「ロウにも関係あるかもしれないから、眠りながら少し耳傾けてて」
ロウは薄目を開けて頷いた
「昔、この街とよく似た街があって、そこで起きた『世界統合』って言うのが今この街にも起きてるんだって」
「難しい話‥‥しようとしてる?叶さん」
エクスが難しい顔でこちらを見る
「そうなんだよね。言ったところで湧き上がるのは疑問だけなんだけど、一応話させて」
「分かった」
「その空間の時間軸に干渉出来る何処かの組織が関係しているらしい。そして何度か繰り返しているうちに、時空の歪みかなんかで何故かこちらの世界でも『世界統合』らしい何かが起こった‥‥みたいな話だったよね?」
僕はローレンに確認を取る
「そう。そして歪んだどこかからゾンビやら蝙蝠やらが出てきて、音や血の匂いを探しだし、人を襲うって訳」
「‥‥だからもしかして、その歪みの影響でロウが姿を変えたのかもしれない。昔の街は大体24時間で元の世界に戻ったらしいから‥‥少し様子を見よう。辛いかもしれないけど」
でもどのくらいで収まるかはなってみないとわからない
早くロウを治してあげたいけど、ここの医療では治せない
だからと言って、外の機関に連れて行かれるのも絶対嫌だ
ロウが研究に使われるのはもっての外
ロウが窓を見ている
少し開いた隙間
僕は裾を摘み、ゆっくりとカーテンを引く
先ほどはオレンジ色程度だった月が真上に上がり、真紅の毒々しい色に変化している
ロウが僕の手を爪痕が残るくらいに握りしめた
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