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even the broken shine

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even the broken shine

1 - 第1話

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2025年05月25日

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SHOOTとBUDDiiSと、未来の光へ


東京ドーム公演から、5年が経った。

あの夜、会場を埋め尽くした無数の光と涙に包まれながら、10人が誓った「次の夢」は、いまや世界という名のステージに姿を変えていた。


BUDDiiSは、アジア、ヨーロッパ、北米を巡るワールドツアーを成功させた。

煌びやかな都市のスカイラインを背景に、各国の観客が声を張り上げる。

韓国・ソウルの夜には、照明が雪のように舞い落ちる中でファンが合唱を続け、

パリの歴史あるホールでは、彼らの音に涙をこぼす観客がいた。

ニューヨークのアリーナでは、サビに合わせて虹色に染まったペンライトがうねり、

地響きのようなスタンディングオベーションが、天井を揺らした。


そのどれもが、10人が汗と涙を流しながら積み上げてきた“証”だった。

夢はもはや形を持たない幻ではない。彼らの手の中に、確かに息づいていた。


グループとしての進化も止まらない。

ライブ演出はメンバー主導で企画され、衣装やグッズの一部は自らデザインし、楽曲制作にも全員が名を連ねる。

ひとりひとりの個性は唯一無二の“色”となり、俳優、モデル、音楽プロデューサー、映像クリエイター──さまざまな場面で世界の注目を集めていた。


そのなかでも、SHOOTは静かに、けれど圧倒的な存在感を放ち続けていた。

彼の言葉には重みがあった。彼の歌声には温度があった。

それは決して、完璧であることから生まれたものではない。

むしろ、壊れかけた自分を受け入れたからこそ、彼の表現は誰かの心にそっと届いた。


「強くなったから戻ってきたんじゃない」

「弱さを知ったから、立っている」


──そう語る姿に、人々は自分を重ね、希望を見出していた。


かつて、ステージ裏で涙にくれ、声すら出せなくなったひとりの少年は──

いま、万の声を背に受け、自分の声で人の心を照らす大人へと変わっていた。


それは、奇跡ではなかった。

積み重ねられた時間と、信じ合い、支え合った絆の先に生まれた、必然の光だった。








ドキュメンタリー映画、世界同時公開


東京ドームから世界へ──

BUDDiiSの歩んできた軌跡を余すことなく映し出した長編ドキュメンタリー『The Light We Share』が、ついに完成した。

タイトルに込められた“光”とは、スポットライトのことだけではない。

それは、挫折を知った者が再び前を向くときに灯る、小さくも確かな希望の光。

メンバーたちが交わしたまっすぐなまなざし、ファンが信じ続けた気持ち──

互いに差し出した“信じ合う想い”こそが、この物語を照らしてきたのだ。


映画のプレミア上映会は、ロンドン・レスター・スクエアの歴史ある劇場で行われた。

絢爛なレッドカーペットには、各国のファンや関係者、メディアが詰めかけ、

夜空の下にフラッシュが瞬くなか、10人のメンバーが静かに姿を現した。

その中心で、SHOOTは黒のスーツに身を包み、どこか凛とした面持ちで歩いていた。

スポットライトを浴びながらも、その足取りには不思議な落ち着きがあった。


舞台挨拶の時間──

スクリーンの前に立ったSHOOTは、マイクを持ちながら、少しだけ空を見上げた。

満席の客席が静まり返るなか、彼は変わらぬ穏やかな声で、ゆっくりと語り始める。


「ステージに立つことが、怖かった時期があります。

音も、光も、仲間の声すら、遠くに感じて……

その場にいるだけで、壊れそうだった。」


彼の声は震えてはいなかったが、その静けさには、確かに重みがあった。

観客の多くが息を止めて耳を傾ける。

会場に張りつめた静寂のなか、SHOOTは言葉を続ける。


「だけど……そんな僕を受け入れてくれた人たちがいました。

一度立ち止まった僕を、もう一度“おかえり”と言ってくれた人たちがいた。

だから今、こうして歌えているんです。」


スクリーンに映された彼の姿と、いま目の前で語る彼が重なる瞬間。

その変化は、“生きてきた時間”そのものだった。


「僕は……一度、止まりました。でも、だからこそわかったんです。

人は、何度でもやり直せる。

止まることは、逃げじゃない。

だから今、次は僕が誰かの“再スタート”を照らせる人間になりたいと思っています。」


彼が言葉を結んだ瞬間、一拍置いて──

まるで割れるように、劇場中から拍手が湧き上がった。

その音はまっすぐ天井に届き、歴史ある劇場の空気さえ震わせた。

観客席のあちこちから、涙ぐみながら叫ぶ声が飛ぶ。


「SHOOT!」「ありがとう!」

英語も、日本語も、韓国語も、フランス語も──

言葉の壁を越えて、まるで祈りのように、彼のもとへ届いていた。


その瞬間、SHOOTはほんの少しだけ目を伏せて笑った。

照れ隠しのようなその笑みが、彼の歩んできた全てを物語っていた。


そして、舞台の上に立つ彼の背中は、

かつて恐れた“光”を、もう真正面から受け止めていた。








帰郷、そして未来へ


世界ツアーの合間の、ほんの束の間の休日。

SHOOTは静かに、あの海辺の町へと帰ってきていた。


車を降りた瞬間、潮の香りが懐かしく鼻をくすぐる。

誰もいない早朝の海岸線。

空はまだ朝の眠気を引きずったように、柔らかな水色と、わずかに滲む桃色のグラデーションに染まっている。

空と海の境界が曖昧になり、世界がぼんやりと溶け合っていくその風景は、5年前と何ひとつ変わっていなかった。


波は、静かに、しかし確かに寄せては返す。

リズムはゆるやかで、深く深く、胸の奥に沁み込んでくる。

その音に耳を傾けながら、SHOOTはスニーカーを脱いで、裸足のまま砂の上を歩き出す。


朝露に濡れた砂は、ひんやりとした感触を足の裏に伝えてくる。

乾いた風がシャツの裾を優しくなで、彼の黒髪をふわりと揺らした。

頬に触れる空気が、昔より少しだけやわらかく感じられるのは、季節のせいか、それとも心のせいか。


この場所は、かつて彼が“自分”を見失いかけた場所だった。

すべてを投げ出したくなるほど、疲れ果てていたあの頃。

でも同時に、ほんの少しずつ、呼吸を取り戻していった場所でもある。

泣いて、眠って、歩いて、何もしていない時間の中で、

心が、静かに、静かに修復されていった。


彼は立ち止まり、海のほうへ顔を向けた。

まだ陽は低く、水平線の向こうから金色の光が、そっと波の表面を撫でている。

きらきらと揺れる水面を見つめる彼の横顔に、その光が滲むように射していた。


ゆっくりと目を閉じ、深く息を吸い込む。

そして、空を見上げる。

どこまでも澄んだ青のなかに、遠い記憶と、いまの自分が溶けていく気がした。


そして彼は、小さく、誰に聞かせるでもなく、呟いた。


「……夢って、怖いよな。

でも、やっぱり……いいもんだな。」


その声は風に乗り、波の音にかき消された。

けれど、確かにこの空のどこかに届いている気がした。


ふと、彼は笑った。

決して大きな笑みではない。

けれどその口元には、あの頃にはなかった確かな“余白”があった。


過去を背負ったまま、未来を怖がりながらも、それでも進んでいく。

いまのSHOOTは、そのすべてを抱えて、それでも立っている。


彼は背筋を伸ばし、ゆっくりと歩き出す。

朝の光が、前へ進む彼の影を長く引いていた。


──物語は、まだ終わらない。

静かに続いていく日々の先に、きっと新しい光がまた生まれる。

その光は、これからもSHOOTとBUDDiiSと、そして彼らを信じるすべての人たちと共にある。





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コメント

3

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意味が凄く素敵な物語でした!最高です✨

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