「白川がやり過ぎたな…」透が疲れた顔で呟いた。
「やっぱり、彼の力は…」朱音も心配そうに言う。
「しかし、あれだけ強いと何を考えているのか分からない…」百鬼が苦々しく言った。
その時、拠点の警備システムが反応した。警報が鳴り響き、誰かが侵入してきた。
「またか…」透が身構えた。
「確認しよう。」朱音が指示を出す。
白川は一人、拠点の中庭で静かに瞑想していた。突然、周囲の気配が変わり、影が彼の周りに渦巻いた。影の中から現れたのは、見慣れない敵「無音」だった。
無音は、音のない存在で、周囲の音を完全に消し去り、静寂を支配していた。漠然とした黒い影のようで、見える形を持たない。
「お前が無音か…」白川は冷静に立ち上がり、相手を見据えた。「音もなく消えたいなら、早くこい。」
無音は無言で近づき、その影から刃が放たれた。白川は攻撃を感知することができたが、通常の攻撃とは異なり、影の刃は瞬時に体内に侵入し、内側から破壊を始めた。
「音がない…感じ取れない…」白川が呻いた。
拠点内で、透と朱音、百鬼は急いで白川の位置を特定しようとしていたが、その時、突然、通信が遮断された。
「白川と連絡が取れない…?」透が焦燥感を露わにしながら通信機器を操作する。
「危険だ…急ごう!」朱音が指示を出し、全員が急いで中庭へ向かった。
白川は無音に対抗するために全力を尽くしていたが、その能力の前に次第に追い詰められていた。無音の影の刃は、彼の体内で暴れ、内蔵を破壊し始めた。
「くそ…このままじゃ…」白川は苦しみながらも、最後の力を振り絞り、術式を発動しようとする。
その瞬間、透と朱音、百鬼が到着した。しかし、彼らが見たのは、白川が膝をつき、息も絶え絶えの姿だった。
「白川!」透が駆け寄り、白川の元へと向かう。
「遅い。」白川は力なく呟いた。「俺の運命か。」
「こんな…」朱音が涙をこらえながら言った。
「頼む…」白川が言葉を切りながら、最後の力で手を伸ばす。「…頼む…」
無音はその間も静かに見守っていた。影の刃が再び白川を襲うが、透がその影を払いのける。
「白川…!」透が叫び、朱音が治療を施そうとするが、もう手遅れだった。
「見届けたかっただけさ…」白川は最後に微笑み、息を引き取った。
白川の死は、部隊全体に深い影を落とした。戦いの最中で、彼の存在がどれほど重要だったかを改めて感じる瞬間となった。
「白川…」透が白川の亡骸を見つめながら呟く。「どうして…どうしてこんな形で終わるんだ?」
「彼は、最後まで孤独だった…」朱音が涙を流しながら言った。
「彼が遺したものは、私たちが背負うことになる…」百鬼が静かに呟く。
無音は消え去り、音のない静寂が拠点に広がった。白川の死は、戦闘の終息ではなく、新たな試練の始まりを告げていた。
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