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「ただいま…」
5年前と変わらない校舎を見てそう呟いた。5年前にこの梅郷中学校を卒業した私、一ノ瀬悠希乃は今、教育実習生として、母校に帰ってきた。変わらないレンガ造りの正門をくぐり、青々とした葉っぱたちのダンスを眺めながら昇降口へと向かう。
昇降口には話に聞いていた教頭先生と思われる女性が出迎えてくれている。
「初めまして、今日からお世話になる一ノ瀬です。よろしくお願いいたします。」
「よろしくお願いします。教頭の冬野です。では、上がってください。」
「はい、ありがとうございます。」
昇降口を抜け、職員室へと繋がる廊下を歩く。職員室に入るとやはり見知った顔はほとんどなかった。
「本日から教育実習生としてお世話になります、一ノ瀬です。よろしくお願いします」
緊張しつつも先生方の暖かい目線に安堵し、デスクへ向かう。
「おはようございます、悠希乃さん」
隣のデスクに座っていた男性に声をかけられ目を向けると、何度も何度も会いたいと願った高科想先生、私が在学中憧れ、恋していた人がそこにいた。
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