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#憑依
成瀬りん
633
#家族
たつ
53
#日常
ももは
551
戦場
崩れゆく街。
黒紫の瘴気が渦巻く中、傷だらけの畑中は静かに立っていた。
全身から血を流し、息も荒い。
それでも、その瞳だけは燃えるような闘志を宿していた。
「……グッ……!」
胸を押さえながら、畑中はゆっくりと息を整える。
そして――
全身から漆黒のオーラが噴き上がった。
ネオコード《黒牙(こくが)》――解放。
黒炎のような氣が戦場を包み込み、地面が悲鳴を上げるように砕けていく。
その圧倒的な気配を前にしても、鷹野は不敵に笑った。
「またそれか、畑中。そんな力で僕に勝てると思うのか?」
畑中は血の滲む口元をわずかに緩める。
「ああ……一人ならな。」
その瞬間――
畑中が地を蹴る。
同時に、唯我の龍焉刀 が蒼い閃光を放ち、一祟の神威撃が烈風となって唸る。
三人の攻撃が一点へと収束した。
轟音。
閃光。
衝撃波が戦場を飲み込む。
しかし――
爆煙の中から現れた鷹野は、傷一つなく立っていた。
「悪くない……。けど、足りないな。」
次の瞬間。
鷹野の拳が振り抜かれる。
圧倒的な衝撃波が三人をまとめて吹き飛ばした。
「ぐああっ!」
「くっ……!」
瓦礫へ叩きつけられる畑中。
それでも歯を食いしばり、立ち上がろうとする。
「……くそっ……まだ終わらねぇ……!」
唯我も龍焔刀を支えに立ち上がる。
「公太が来るまで……。」
一祟も血を拭いながら拳を握る。
「僕たちが必ず時間を稼ぎます!」
三人は再び鷹野の前へ立ちはだかった。
暗闇の世界
その頃――
公太は深い闇の中を歩いていた。
どこまでも続く静寂。
果ての見えない黒い世界。
その先に、一人の男の背中が見える。
「……お前は、生きろ。」
静かで、どこか懐かしい声だった。
公太は思わず叫ぶ。
「誰だ……?」
男は振り返らない。
ただ静かに歩き続ける。
「待ってくれ!!」
必死に手を伸ばす。
だが、その背中は闇へ溶けるように消えていった。
次の瞬間――
全身を焼き尽くすような激痛が走る。
「うああああああッ!!!」
公太は絶叫した。
ORVAS医療室
「反応値が急上昇!?」
モニターを見つめていたジュリーが息を呑む。
脈拍。
脳波。
ネオコード出力。
すべての数値が限界を超えていた。
「まさか……公太!?」
ジュリーは医療室へ駆け込む。
勢いよくドアを開けると――
無数のケーブルが引きちぎられ、
警告音が鳴り響く室内で、
一人の青年がゆっくりと立ち上がっていた。
公太だった。
その身体からは静かな、しかし圧倒的な存在感が放たれている。
「……公太?」
ジュリーが震える声で呼びかける。
返事はない。
代わりに、公太の右目が赤黒く輝き始めた。
その隻眼は、世界のすべてを見通すかのような光を宿していた。
ジュリーは思わず息を呑む。
「大丈夫なの……?」
公太は静かに拳を握る。
拳の隙間から、淡い赤い光が漏れ出した。
そして、小さく呟く。
「ああ……行ってくる。」
その声には迷いも恐れもなかった。
公太はゆっくりと医療室を後にする。
自動ドアが静かに閉まり、その背中が廊下の奥へ消えていく。
ジュリーはその姿を見送りながら、小さく微笑んだ。
「以前のあなたとは、まるで別人ね……。」
そして胸の前で拳を握る。
「頼んだわよ、公太。」
運命を背負う最後の戦士が、ついに戦場へ向かおうとしていた。
コメント
1件
おお、第88話!ついに公太が目覚めたな…!あの暗闇で見た背中の人、誰だ?伏線っぽくて気になるわ。畑中たちが必死に時間稼ぎしてるシーンが熱すぎるし、最後の「行ってくる」がめちゃくちゃかっこよかった。覚醒した公太、どんな力を見せるのか楽しみだ🔥