テラーノベル
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軽食を少し食べ薬を飲むと、フィル様は眠ってしまった。顔色はまだ悪いが、呼吸は落ち着いている。しかし触れた額が熱い。やはり発熱しているようだ。先ほど飲んだ薬の中に解熱薬も入っていた。すぐに下がってくれるとよいが…と白い頬に触れながら思う。 俺は椅子を運んできて座り、フィル様の寝顔を見つめた。
フィル様は、もっと太った方がよい。今は愛する人と幸せな暮らしをしているのだから、たくさん食して眠り、よく休養するべきだ。フィル様の身体は細くて心配なのだ。腕など強く掴めば折れてしまうのではないかと不安になるのだ。
しかし昔から体調が悪い時はあまり食べなかったが、普段出された料理は全て食べていた。それなのにずっと細いままだ。もしかすると今までは呪いの影響があったのかもしれない。だが今は呪いも解けたのだから、もっと太って健康になってもらいたい。
「あの王子がフィル様を甘やかさないはずがないのだがな…」
いつもの|癖《くせ》で、無意識に伸ばした手で銀髪に触れながら|呟《つぶや》く。
バイロンの第二王子はフィル様に甘い。フィル様が仮死状態になって以降、特にフィル様の体調を気にかけている。少しの変化も見逃さず、またフィル様の好物を集めては食べさせているはず。それでもフィル様が太れず体力も完全に戻らない理由はなんだろうか。理由があるなら、解決してやりたい。
その時、フィル様が「ん…」と声を|漏《も》らして横を向いた。銀髪を撫でていた俺の手のひらに柔らかいものが当たり、一瞬で身体が熱くなる。
俺はそっと手を引き抜くと、ベッドから離れ部屋を出た。閉めた扉にもたれて固く目を閉じる。フィル様の唇が手のひらに触れた。そこがジンジンと|痺《しび》れている。
改めて実感する。俺はこんなにもフィル様を愛している。決して手には入らないけれど、これからも愛し続ける。俺の人生はフィル様のためにある。今、俺がフィル様にできることは何だろうか。倒れたり熱を出さぬよう、元気になってもらうにはどうすればいいだろうか。
俺は扉から離れると、医師のいる部屋へと足を向けた。
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