イタ王が目を覚ましたのを見て、ナチスは胸を撫で下ろした。
「あ、おはよう。ナチ。イオやらかしちゃったみたいなんね。」
「…心配させやがって」
「もしかして、イオのこと、付きっきりでみててくれたんね?」
「うぐ、それくらい当たり前だ」
「あはは、ありがとうなんね。」
ナチスは呆れたように額を抑える。イタ王は相変わらずヘラヘラと笑みを浮かべたままだ。
「笑ってないでさっさと治せ」
「分かってるんね 『全体主義と未回収 』 」
「ったく、便利な能力だが頼りっきりだと痛い目見るぞ?」
イタ王の能力は傷を治すことができるが、あまりに重すぎる傷は痛みが消えなくなってしまうこともある。
「でも、だからこそこうやってナチが処置してくれたんでしょ?」
「でもなあ、」
「素直に『怪我してほしくない』って言えないんね?」
「…そ、そんなことより封筒があったぞ?」
ナチスが話を逸らすように封筒を取り出した。封筒には『イタリア王国宛て』と書いてある。
イタ王はそれを受け取って、封筒を開けた。
写真に写った青年はイタ王そっくりだったが、サヴォイア家の紋章が鷲に変わっていた。
「……」
イタ王は無言で写真を封筒にしまった。ナチスは封筒を取った。彼なりの気遣いだ。
「これは国連達に渡しておく」
「分かった。そういえば、日帝はどこに行ったんね?」
イタ王はここに居ない枢軸の仲間の名前を口にした。ナチスは少々渋りながら言った。
「犯人の追跡だ」
「えっ?それって」
「お前が居た場所から痕跡を探しながら追っているらしい」
「危険なんね!止めなかったんね!?」
「国連と話し合った結果、アメリカを同行させることになった。」
「それはまた、不仲な組み合わせを」
「だが、戦闘になればこの上なく頼りになるのは事実だ。」
そこまで聞いた後、イタ王は黙り込んで考えはじめた。自分が見たフードの下の顔について。
信じてもらえないかもしれない。
疑われてしまうかもしれない。
それでも、イタ王は勇気を振り絞って話すことを選んだ。
「ナチ、実は―」
「なあ、日帝。お前速くね?」
「何を言っている。一刻も早く犯人を見つけださねばならないのだ。」
人っ子一人いない田舎の山で、風を切って走る日帝とアメリカ。風の音にかき消されないように、少し大きな声で会話をする。
イタ王の居た地点からかなりの距離を走った。どうやら犯人は随分と遠い場所に居るらしい。
「これホントにこの道であってんのか!?」
「つべこべ言うな。斬るぞ?」
「血の気が多すぎるだろ!機嫌悪いなあ!」
「当たり前だ。仲間が傷つけられた上に、貴様などと組まなくてはいけないなんて」
「ひでぇ!!」
共闘するというのに、いつもと変わらず喧嘩になっている2人。だが、急に静かになった。
「見つけた」
「みたいだな」
犯人と思しきフードの人物が遠くに見えたのだ。日帝は一気に距離を詰め、抜刀した。
「はやっ!」
「覚悟!」
気づいたところで遅い。日帝はそのまま刀を振り下ろした。
血の花が咲いた。
斬られた体は力をなくし、転がり落ちた。
「手応えは!?」
「確実に斬った!致命傷だ」
出血が多く、転がり落ちた場所には血の道ができていた。2人は血の道を辿り、犯人を確認しに向かう。近づいたことで、ソ連が言っていた者とは別人だということが分かった。ソ連の話よりも小柄だ。これで複数犯説は確定したか。
フードを取ろうとしたその時、フードの人物は弱々しくこちらへ手を伸ばした。
伸ばされた手には武器など持っていなかった。
ただ、封筒が差し出されていた。
その封筒には、『大日本帝国宛て』と書かれていた。
日帝がその封筒を取った瞬間、フードの人物はナイフを取り出し、振りかぶった。
まずい、避けられない。
日帝は身構えたが、その体に傷がつくことはなかった。
「『明白な天命』」
コメント
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まじ最高すぎる、🫶🏻️︎ ぐへへ( ◜ω◝ )