「大丈夫か!?」
日帝は見ていた景色が一瞬にして切り替わったことに驚いている。アメリカの脇に担がれているのに気づくには少し時間を要した。
「腹が立つが、礼を言う。」
日帝は立ち上がり、刀を構えた。
「まずは問題を片付けるぞ」
「もちろん!」
とは言っても、相手はもう満身創痍の状態に見えた。傷口から血が流れ続け、ふらつきながらなんとか立っている。2人を倒すことはおろか、逃げることすらできないだろう。それでも警戒を怠ってはならない。
「行くぞ!」
日帝が斬りかかろうとしたが、前触れもなく響いた声に止められた。
「待て!殺すな!!」
聞き覚えのある声だった。
「国際連盟?」
ひとりきりの部屋で、ソ連は思考を巡らせていた。半身は動かなくなっていて、誰かを頼ろうにもそもそも部屋を出られない。視線の先には『ソビエト連邦宛て』と書かれた封筒と、ビリビリに破かれてまともに見ることもできない写真。
やってしまったな。と、そう思った。感情に身を任せるなどらしくもない。
きっとこの部屋は常人が入ったら直ぐに凍えてしまうのだろう。他人事のように考える。先程まであんなに取り乱していたのに、今は不思議な程冷静だった。こんな状況では運良く誰かが来る以外、何も出来はしないから、悟って諦めてしまったのだ。
寒さや冷たさ、そして痛みは段々と麻痺し始めていた。
ワンチャン死ぬのか?コレ
体の大半はもう氷の膜に覆われていた。
30分程度がたった頃、部屋の扉が開く音が聞こえた。
しかしソ連は喜ぶことなく、更に言ってしまえば嫌そうな表情となった。
「お前かよ、クソ詐欺師」
「酷い言い様ですね。動くことすらままならないソビエト連邦」
入ってきた青年―イギリスはソ連を見下して微笑を浮かべた。
「寒いですね。何したんですか?」
「見れば分かるだろ癪に障る野郎だな」
イギリスは寒さに耐えるように腕をさすり、その後、
「待っていてください」
と言い、去っていった。
ソ連はなんだか嫌な予感がした。アレが考えることなど、ロクなことじゃない。
「戻りました。…なんですかその顔は」
「いや、別に」
イギリスの腕は、少し大きめの容器を抱えていた。中からは水の音がする。
「おい、まさかだが」
「少し我慢してくださいね。なんとかしてあげますから」
イギリスが容器の蓋を開けると、白い湯気が出てきた。彼はそのまま容器をソ連に傾けた。
ドボドボと中の湯が音を立てて流れ出る。まるで焼けるような音がしているが、果たして大丈夫なのだろうか。容器が底をついた後、しばらく沈黙があったものの、やがてソ連が沈黙を破った。
「ふざけるな、死ぬかとっ、思った」
「ああ、凍らなくてよかったですね。あんまり気温が低いと湯が凍るんですよ。やっぱり落ち着くまで様子見してたのは正解でした」
「様子見!?お前、どこから見てた」
「20分くらいは見てたはずです」
「最低だなお前」
前から気づいていたのに全く姿を見せなかっただなんて、紳士が聞いて呆れる。感覚が戻り始めたことで、肌がヒリヒリする。
「いった…お前らのせいだぞ」
「だったらあのまま放置しておいて欲しかったんですか?」
「あーハイハイ、ありがとーごさいます」
「なんの感情もこもってないの逆に凄いです」
「なんでお前が此処に居るんだ!?」
アメリカは驚愕の声をあげる。
「俺を誰だと思っている。アイツより劣っているとは言え、国の居場所くらいは把握できる」
「殺すなとは、どういう意味だ?」
「そのままの意味だ。そいつが死ぬと俺が困るんだよ」
話している間に、フードの者の姿が視界から消えていた。しかしアメリカがすぐ捕らえて気絶させた。
「本当、しぶとすぎるだろ」
「そいつの顔を見れば、俺の言ってることが分かるだろうよ」
日帝はフードを取った。彼は電撃のような衝撃を受けた。
「先輩…」
フードの下の顔は、紛れもなくナチスだった。
コメント
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まじ神...✨️ 今回も最高ッッ✨️