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🌋 第二十三章:リヴァイの激怒と、団長室への強襲1. サクラの部屋での異変
早朝。リヴァイ兵士長は、遠隔地での巡回任務を終え、夜明けと共に兵舎へ帰還した。疲労の色は濃いが、彼は休むことなく、いつもの日課であるサクラの起床と訓練準備のために、彼女の部屋へ向かった。
リヴァイは、ノックをする代わりに、合鍵で静かにサクラの部屋の扉を開けた。
「おい、サクラ。いつまで寝ている。もう時間だ。すぐに体を清めろ」
部屋は無人だった。
ベッドは完璧に整えられ、リヴァイが用意した特別なハーブティーのカップも洗って置かれている。しかし、サクラの私物が置かれたままであることから、彼女が長期で出かけているわけではないとリヴァイは察した。
リヴァイの背筋に、冷たい戦慄が走った。彼はすぐに、エルヴィンが自分の目を盗んで何かをしたのだと理解した。
「チッ…あの野郎…!」
リヴァイは、殺気を放ちながら、一直線に団長執務室へと向かった。
リヴァイは、執務室の扉をノックもせず、文字通り蹴破って押し入った。
「エルヴィン!サクラはどこだ!すぐに答えろ!」
エルヴィンは、既に執務机で書類に目を通していた。その顔色はいつもの通り冷静だが、リヴァイの激しい怒りを予期していたかのように、動揺は微塵も見せなかった。
「リヴァイ。君は任務明けだ。すぐに自室で休息を取りなさい。そして、扉を弁償しろ」
「ふざけるな!俺の管理下の兵士が行方不明だ!お前が何か知っているな!」
リヴァイは、エルヴィンの執務机の横にある、仮眠室の扉がわずかに開いているのを見た。
そして、その隙間から、サクラの小さな頭が、白い枕に埋もれて眠っている姿を視認した。
サクラは、エルヴィンの寝間着と同じ生地のブランケットを掛けられ、安らかに眠っている。
リヴァイの怒りは、ついに制御不能の頂点に達した。彼の顔は青ざめ、怒りというよりも裏切られたような、悲痛な表情を浮かべた。
「貴様…!俺の最も嫌悪する行為で…!サクラを、自分の傍に隔離したのか!」
リヴァイは、立体機動装置のブレードを抜く寸前の体勢で、エルヴィンに詰め寄った。
「あの夜のお前の行為は、俺への宣戦布告だったな!俺は、お前の汚い欲望からサクラを遠ざけるために、わざわざ遠征に出た!それなのに、貴様は…!」
エルヴィンは、静かにペンを置いた。
「リヴァイ。君の行動は、**『過剰な独占欲による暴力』だと判断した。君は、私情によってサクラの安全を脅かした。団長として、私は『人類の希望』**を守る義務がある」
エルヴィンは、立ち上がると、リヴァイの眼差しを真正面から受け止めた。
「よって、私は、サクラへの指導権、特に夜間の管理権を、君から全て剥奪する。今後は、サクラは私の執務室に隣接するこの仮眠室で過ごす。私が、一刻たりとも、彼女の傍を離れない」
エルヴィンは、「サクラを独占する」という自分の欲望を、「人類の希望を守る」という団長としての絶対的な大義で覆い尽くしたのだ。
「そして、君の最も嫌悪する**『隔離』**こそが、サクラの安全を守る唯一の手段だと知れ。君の嫉妬は、もはや戦略の障害だ」
リヴァイの全身の力が抜けそうになった。彼は、エルヴィンという男の、冷酷で徹底した戦略と、サクラへの深く静かな独占欲に、完全な敗北を喫したことを悟った。
「…俺の、指導権を…」リヴァイは、言葉を失った。
エルヴィンは、サクラの眠る仮眠室を振り返り、微かに優しい目を向けた。
「サクラは、今夜、私に『異世界の物語』を語ってくれた。君の知っている彼女とは違う、私の知る彼女が、ここにいる。君は、今後、私の許可なく、この部屋に、そして彼女に、一切近づくことを許さない」
リヴァイは、唇を噛み締め、怒りと嫉妬にまみれた目で、サクラの眠る扉と、冷酷な団長の顔を交互に見つめるしかなかった。彼の愛と独占は、今、人類最強の独裁者によって、厳しく封じ込められたのだった。