コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
涼しくなった風に当たりながら、真っ暗な通路を歩いていると、階段のところがエレベーターになっていた。私は首を傾げたが、ボヤけた頭を振って。あまり気にせずにエレベーターに乗り、一階のボタンを押した。
エレベーターの中には、私一人。広さは五人くらいは入れるだろう。ゆっくりと機械音をたてて降下していった。
一階に着くと扉がゆっくりと開いたが、私は外の光景に驚く。そこは、別世界だった。ようやく事態が飲み込めて、背筋に嫌な汗が伝う。あの不可思議な体験だ。
エレベーターの外には、ボロアパートの玄関や廊下はなく、少し先に大きな建造物がある。周りは雑草だらけの広い大地だった。その夜の大地にエレベーターと半壊したボロアパートだけがポツンとあった。
私は震える手でエレベーターの二階のボタンを何度か押したが、まったく反応しなかった。その次は必死に何度も一階の全部のドアを叩いて回るしかなかった。けれども、アパートの住人は一人も居なかった。
どうしても、外にいるしかなかった。
一時間もしただろうか、私の体は夜風で寒くなってきた。恐怖以外の震えでどうしようもなくなってきた。
どうしてだろうか?何故こんな不可思議な体験をするのだろう?これは、現実なのだろうか。それとも夢なのだろうか。私は途方に暮れて、泣きたくなった。こんなことなら、あの時、赤レンガの喫茶店へ入らなければよかった。
夜の風が容赦なく体に冷たい空気を当てる。
そのうち、私は体を震わせ凍死してしまいそうになった。
仕方なく。私は勇気を振り絞り数百メートル先の建造物まで歩いて行くことにした。そこになら、何か暖を取れるものがあるだろう。このままでは死んでしまう。