コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
屋上を出て校舎を回り込んだとき、乾いたボールの音が耳に届いた。
柚希が足を止め、そっと視線を向ける。
体育館横のコートで、陽先輩がひとりシュートを打ち込んでいた。
汗を滲ませ、何度もリングに向かって跳ぶ姿。
その一つひとつが、柚希の目には眩しく映った。
思わず立ち尽くし、息を呑む。
その姿を、ただ夢中で追い続ける。
「……瀬戸?」
すぐ横にいた海が、不思議そうに声をかけた。
柚希ははっとして肩を揺らし、慌てて視線を逸らす。
「な、なんでもない」
足早に歩き出す柚希の背を、海は小さく首を傾げながら追いかける。
彼はまだ、あの視線に込められた意味を知らなかった。