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足早に昇降口へ向かう途中、柚希の胸はまだざわついていた。
目に焼きついた陽先輩の姿が、頭から離れない。
けれどそのすぐ横で声をかけてきた海の存在も、どうしてか意識から消えなかった。
(……私、いったい何をしてるんだろう)
分かっているのはひとつだけ。
――あの人の背中を追いかけたくて、この学校に来た。
その気持ちは、まだ揺らいでいないはずなのに。
昇降口を抜けると、夜風が頬を撫でた。
柚希は深く息を吸い込み、かすかに拳を握る。
胸の奥で重なりはじめた二つの影に、まだ気づかないふりをしながら。