唇の隙間から強引に差し込まれた舌が、橋本の舌にいやらしく絡み、卑猥な水音をたてた。
バコンっ!
「いった~!」
宮本はしゃがみこみながら、橋本に殴られた頭に手をやり、うんうん唸った。
「夜とはいえ、人目のあるところでのスキンシップはやめろって、いつも言ってるだろ!」
橋本の激しい怒声が闇夜の街中で虚しく響き渡り、宮本は眉根を寄せながら肩を竦める。
「だって……」
「中坊じゃあるまいし、理性のコントロールもできないのかよ」
「陽さんが、かわいすぎるのがいけないんだ……」
「なんだって!?」
顔を逸らしながら呟いた宮本の言葉は、橋本に聞こえなかったらしい。その後も糠に釘のようなやり取りが、数回続いたのちに――。
「雅輝、反省したのかよ」
「しました、一応……」
「一応だと?」
「きちんとしました、ですっ!」
痛む頭を撫でつつ立ち上がり、涙目でじっと見つめる宮本に、橋本は明後日のほうを向きながら口を開いた。
「反省したのなら、おまえの言うことをきいてやってもいい……」
蚊の鳴くような小声に目を輝かせながら、マッハで反応した宮本。橋本の右手を握りしめるやいなや、ホテル街と思しき場所に引っ張る。
「やっぱり陽さんは優しいな」
弾む足取りの宮本とは裏腹に、橋本は引きずられるように歩いた。
「コンビニに寄ることを忘れるなよ。日頃の憂さ晴らしを兼ねて、飲みまくってやる!」
「わかってますって!」
当初の目的とは違うデートになったふたり。さてさて、このあとはどうなるのでしょうか!?