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「あーっ! 楓の方がお肉大きいです、ずるーいです!」
「そんなことないよ。椿、箸で狙いを定めるのはやめて!」
「ほーら、かえちゃん、つーちゃん、そんなことで喧嘩しないのー。そんなことしてると――」
「「ごめんなさい!」」
時折ある日常。
兄妹で食卓を囲みながらの食事中の一コマ。
楓と椿は息ぴったりに、守結に対し焦って謝罪の言葉を口にしている。
「そういえば、みんな学校はどうだ? 転校したばっかりでなんか不便に思ってることとかあるか?」
そう切り出したのは、兄貴だった。
口のなかに物を入れたまま話す癖を直してほしいところだ。
「うーん、これといってなにもないかなー」
「まあ、守結はそうだろうな」
「私もないよー。ちょーっと座学で赤点ギリギリだったぐらいかな!」
「そうですね。私も同じです!」
「いやいや、それは元気よく言うことではないだろ。2人は志信から一体何を教わってるんだ? ちゃんと勉強しろ」
「「はーい……」」
しょんぼり視線を落とす楓と椿を見て、守結はクスリと笑みを零している。
「志信はどうだ?」
「……僕も特にはなにもないよ」
「……そっか。そういや、話が変わるけどそろそろあの時期だな」
「あれねーそういえばそうだね」
「前回は大分適当な感じだったからなぁ……今年はどうなるんだろうね」
「え、なんですかなんですか! 何か面白そうなことが起きるのですか!」
「私も気になるー! 教えてよー!」
楓と椿の好奇心が前に出始め、それに対して兄貴が説明を始めた。
「ああそうか、楓と椿は初めてだったな。第七都市の各学園では、毎年夏休み前に行事が催されるんだ」
「ほおほお、面白そう!」
「学園祭ってことですか!」
「んー、別の都市じゃあそういったこともあるみたいだけどな。っとまあ、料理が冷めちまうから食べるぞー」
兄貴の合図と共にご飯に食らい付く楓と椿。
いつもと変わらずの景色。
ここだけは、ここだけが本当にいつも変わらなく、心が休まる唯一の時間。
――そんな賑やかな時間はあっという間に過ぎた。
騒がしい楓と椿は部屋へ戻り、兄貴も同じく自室へと向かって行った。
台所にて僕は皿拭き、守結は洗い物をしていると、他愛のない会話の最中にハッとなにかを思い出したかのように話し始めた。
「あっ、完全に忘れてた」
「ん? なにかあった?」
「うん、お父さんとお母さんから置手紙があってね。忙しいみたいで、期間は分からないけど家を空けるっていう報告だったんだよね」
「そうなんだ。いつものことだし、明日の朝でも大丈夫じゃない?」
「それもそっか――よし、洗い物終了っと。そろそろ宿題やんないとだなぁ」
「そうだね」
最後の皿を水切りかごへ置いて家事は終了。
「それじゃ、おやすみ」
「おやすみ」
そう挨拶を交わして僕は先に自室へ向かう。
こうして今日も変わりなく安息の時間が終わりを迎えた。