呪いを解く方法が見つからないまま、時は静かに過ぎていった。
その間、メイは何かを探すかのように、一心不乱に剣術の練習に没頭していた。
夕刻、彼女は翔太と手合わせをしていた。翔太は部隊の中でも銃の腕も剣の技量もトップクラスであった。
練習を見ていたタケルは、「おまえら、いつまでやってるの?早くエリナちゃんのところに行こうぜ。」
しかし、その声はメイと翔太の耳には届かない。
メイは必死に翔太に食らいつき、攻撃を続けた。
「メイ、強くなったな。」と翔太が感心して言った。
「まだまだ!」メイは汗を拭いながら答えた。翔太はメイが遅くまで自主練をしていることを知っていた。
「そうか、じゃあ行くぞ!」「こい!」メイは力強く応えた。
タケルは寝そべりながら、「あーぁ」とつまらなそうにしていた。
練習が終わると、三人は紅葉庵に向かった。
タケルがメイの話に腹を抱えて笑っていた。「ぶはははは!!」
メイは顔を赤らめながら、「ちょっとタケル、笑わないでよ!」と抗議した。
タケルは笑いを止めずに、「なんで和真先生を襲うんだよ!」とまた大笑いした。
メイは和真との出来事を話していた。「分からないけど、ライオンになったつもりで和真先生を見たらつい...」
翔太も笑いをこらえながら、「メスライオンに見えたの?」と尋ねた。
メイは困惑した表情で、「わからない」と答えた。
タケルは笑いながら、「まぁ和真先生は綺麗な顔してるもんな、オレもイケるかもしれない」と言った。
翔太は驚きつつ、「イケるって?」と聞き返した。
タケルは続けて、「あの顔で恥ずかしがってる仕草されたら、オレも猛獣になっちゃうかも」と冗談を言った。
三人は和真のことを妄想し、顔を赤くしていた。
翔太は同意するように、「た、確かに」と呟いた。
メイは困惑しながら、「翔太までやめて、もう和真先生に顔合わせられない」と言った。
タケルは慰めるように「メイって、すぐ弱気になるから、心配だったんじゃないの?」
「心配って?」
タケル「だって、そういうところを、敵に狙われる危険があるかもしれないだろ。」
「そうかな」メイは彩の地部隊の隊員に拉致され暴行された記憶がよみがえっていた。
あの時、自分がもっと強かったら、体だけではなく心も弱かったメイをあの隊員たちに見透かされていたのかもしれない
タケル「それに和真先生は医者だから、その辺は気にしなくてもいいんじゃない?」
メイは微笑みながら、「そうゆう問題?」と答えた。
三人は笑い合いながら、紅葉庵の温かい雰囲気に包まれていた
「そういえばタケルはエリナちゃんとその...」タケルが自信満々に答えた。
「え!当たり前だろ、もうエリナは俺のものさ。」その瞬間、タケルの頭にお盆がゴンと乗せられ
「いてー!!」とタケルが叫ぶと、エリナが怒りを込めて言った。
「誰が俺のものよ!誤解するようなこと言わないで!ふん。」そして、ぷいっと行ってしまった。
タケルはしょんぼりした顔で言った。「そんなぁ」メイと翔太はその様子を見て笑った
周りの人たちはそのやり取りを明るい雰囲気の中で見守っていた。
そんな中、3人の話題は最近の魔獣の動向に移った。信国では魔獣が増え、
制御できないほど暴れているという。そのため、信国は各地に援軍を要請していた。
その要請が武蔵帝都にも届き、彼らは信国への援軍を決めた。
「他の部隊も合流するってことだよな」とタケルが話すと、
翔太が答えた。「そうだ。特に美智(みち)の国の司令官は相当な切れ者だと聞いているぞ。」
タケルはにやけながら、メイに向かって言った。「メイ、知ってるか?
美智(みち)の国の司令官はすごい美人なんだぞ。その上、ドがつくS嬢だ。
あ~、あの足で踏まれたい~」
翔太「...」
メイ「...た、タケル」
タケル「?」
タケルの後ろには、殺気立ったエリナが立っていた。
彼女は手に持っていたお盆でタケルの頭を叩いた。
「ゴン!」という音が響き渡る。「変態!知らない」と言ってエリナは去っていった。
束の間の友との楽しい時間が終わる、再び魔獣を討伐する日々が戻ってくる。
メイにはまだ呪いを解除する術が分からないものの、自分にできる事を精一杯やろうと心に誓っていた。