テラーノベル
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🩷
「ふ。可愛いな」
スマホの画面を覗き、阿部ちゃんが不敵に笑っている。こういうニヒルな笑顔を浮かべる人だなんて、最近まで知らなかった。
今は絶賛ライブ中。
いざ本番が始まるまでは、音響チェック、照明や効果のチェックと俺たち演者が必要ない時間帯もかなりあるので、そういう空き時間には基本的に楽屋で待機したり、照みたいにトレーニングをぶっこんで来るメンバーもいる。
あ、そういや、涼太は風呂行ってたな。去り際に流し目をもらったような気がするが、行くのはやめとこう。どことなく身の危険を感じる。
(……)
しばらく涼太のことを思い浮かべていたら、目の前の阿部ちゃんがその場にしゃがみ込んでいた。呻くような悶え声が足下から不気味に聞こえる。身体をくねくねさせながら悶えているから、おそらく考えてるのは翔太のことだ。
「うー。でもなー。あんまりかまってもなぁ…」
………控えめに言ってだいぶ気持ち悪い。
阿部ちゃんがこんなに変態で、突っ込みどころ満載だなんて涼太と付き合い始めるまで知らなかった。それまで俺は、阿部ちゃんをどこかの理想の国の白馬に乗った王子様みたいに思っていたから。
「阿部ちゃん、どうした?」
いつまでもくねくねしているかつての王子様に声を掛けると、ニマニマとした、明らかに緩み切った阿部ちゃんが嬉しそうに立ち上がる。さっきチラ見した、スマホの画面には翔太のインスタストーリーが映っていたから、おそらく翔太絡みであろうという予測は当たっていた。
「佐久間ぁ、見て見てコレ♡」
差し出されたスマホの画面には、阿部ちゃんのソフビが無残にも首を180度回されたり、逆さまにされている写真が写っている。
「インスタ?」
「そうなの~。翔太がさ、俺の持ち込んだソフビで遊んでるんだよね~」
語尾に全部ハートマークがついているかのような喜びよう…。そしてその口調はちっとも怒っておらず、いやむしろ嬉しさでいっぱいに聞こえた。
「こんなの全世界に発信するなんて、翔太はほんっっっとうに俺のこと大好きだよねぇ?」
「……そーだね」
適当に話を合わせれば、阿部ちゃんのくねくねが倍の激しさに変わる。
「そうなのぉ~可愛いよね?俺の翔太、やっぱり可愛いよねぇ~~!!!はぁ~!ほんとに、どうしてやろうかしら♡♡」
上機嫌の阿部ちゃんは、語尾がゲイバーのママみたいになっていた。俺の引き攣った顔などには目もくれずお構いなしに喋り続ける。
「ここでさ、俺がさ、あんまり公に返しちゃうとアレじゃん?だ・か・ら」
人差し指を立てる姿は相変わらずあざといけど、阿部ちゃんはやっぱり可愛い。しかしその愛らしい顔立ちからちょっと意地悪な作戦が告げられる。
「あーえーて反応薄めにして、寂しがってるところを…ねっ?佐久間ならわかるでしょ?」
「え…わかんない」
突然きゅるん、とした瞳の矛先が向かって来たけど、応えられない。
「ふふふ…。佐久間も協力してね♡」
翔太。
なんだかわからないけど、身の危険が迫ってるぞ…。
ーーーー
💙
ライブ終わり。
風呂を済ませて、楽屋に戻ると……そこには誰もいない。
「?」
不思議に思って、パーテーションの裏とかも見たけど、そこはほんとにもぬけの殻かのように誰もいなかった。風呂で会ったのはめめだけだったから、他のメンバーは楽屋にいるはずだと思ったのに。
(まぁ、そのうち戻ってくるだろ)
気にせずスキンケアを始めると、鏡の奥に誰か人影が映った気がした。
メンバーが戻って来たのだろうと思っているうちに、いきなり後ろから大きな手が覆って目隠しされた。
「おい!!阿部だろ!?」
「りょ、う、へ、い♡」
「やめろ!!!こら!!あぅ!!!」
強引に横を向かされた鼻先に、一瞬阿部の顔が見えた。咄嗟に目を瞑ると、阿部は俺をぎゅっと抱き寄せて、首の角度を変え、容赦なく舌を入れ込んでくる。
(だめだって、、、)
声にならない息が漏れて、俺と阿部の熱い息が俺の感覚を遮断した。
恥ずかしい。
ここ、楽屋だし。
え?俺、来るとき、ドア閉めたっけ?
まだライブが終わってから大して時間は経ってない。うかうかしているとメンバーも戻ってくるし、もっと下手するとスタッフだって立ち入るかもしれない。
冷静に焦る理性と、阿部の巧みな舌遣いに気持ちよくなっている自分とがいて、マジでもうホントに勘弁してくれって感じだった。
ーーーー
💚
唇が離れると、翔太の白くて細い首筋にキスを落とす。翔太の目はわかりやすく蕩けていた。俺の胸を押す手に力が入っていないのがその証拠だ。
「ほーんと可愛いね、翔太。俺のソフビでイタズラなんかして…楽しかった?」
「ちが…んぅ…っ」
「違わないでしょ。もっと正面から甘えてきてもいいのに。そういう奥ゆかしところも大好きだよ」
「やぁ…めっ…あっ」
背中に指を立てて小ぶりな臀部へとバスローブ越しになぞり落とせば、細い腰がビクッと跳ねる。翔太はめちゃめちゃ敏感なのだ。そしてこの、楽屋というオープンスペースで行われようとしている情事の背徳感にわかりやすく感度が増していた。
形のいい耳の淵が赤く染まる。俺に何かを嘆願するような瞳は潤んでいてこれでもかと俺の劣情を誘った。
「ほんと、飽きないよ。お前は」
「んぅ!!やら、、、ってばぁ!!!」
イヤと言いながら身体は少しも離れない。何なら少し反応している下半身が、俺の太腿に当たった。
視線の先のドアを見る。
一つしかない入り口はぴったりと閉じられてはいるが、鍵は掛けていない。壁掛けの時計を見ると、佐久間との約束の時間が迫っていた。
「あん…っ…はあ…んんっ…」
尻を撫で、わざと窄まりに指をあてると、翔太の腰が無意識に揺れる。ライブへのリハ続きで、解消されていなかった欲が俺にも翔太にも溜まっていた。
(このまま致したいのはやまやまだけど…佐久間とも約束したしな…)
すっかり頬が上気した愛しい人を見下ろして、額にキスをした。
「翔太。続きはこの後ホテルで…ね?」
「んぁ?」
うるんだ上目遣いにまた欲望に簡単に負けそうになるが、こういうお預けもスパイスだと自分に言い聞かせる。翔太は明らかに翻弄されたことで、ばつが悪いような、それでいて安堵したような様子でやっと俺から離れた。
「阿部ちゃんの……ばか」
口を尖らせてそう呟く後ろ姿に、生唾を飲み込んだのは俺だけの秘密だ。
・
・
・
・
数時間前。
バックステージにて。
「わかった。じゃあ、〇〇時までは二人きりになれるよう根回しするけど、絶対にそこで…その、そういうことしちゃだめだからな?」
「……」
「ここ職場。なっ?」
「……ふぁい」
「なんて?」
「わかったよ……」
#からぴちBL
果汁
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コメント
14件
えげつない焦らし
❤️🩷の方が驚きだった😂