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#見捨てられた
リコりす@アナログタノピイ
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#shedletsky
ゆ(旧「ゆゆゆゆ」)
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神をやめてから。
シェドレツキーの人生は、一変した。
「ビルダーマン!」
朝から元気な声が広場に響く。
「見てくれよ!」
大量の設計図を抱え、シェドレツキーは満面の笑みで駆け寄る。
「『Sword Fights on the Heights』!」
「コード全部書き直した!」
ビルダーマンは設計図を受け取り、静かに目を通す。
数秒後。
「……。」
さらに数秒。
「……これは。」
ゆっくり顔を上げる。
「素晴らしい。」
「だろ!」
シェドレツキーは得意げに胸を張る。
「処理速度も改善されている。」
「うん。」
「バランス調整も完璧だ。」
「もちろん。」
「この発想力は見事だ。」
「えへへ。」
「クリエイティブディレクターとして申し分ない。」
「だよね!」
広場では拍手が起こる。
「さすがシェドレツキー!」
「すごい!」
「新マップ楽しみ!」
住民たちが集まり、口々に称賛する。
そこへデュセッカーもやって来た。
「相変わらず仕事が早いな。」
「だろ?」
「今度一緒に新企画を考えよう。」
「いいね!」
さらにブライトアイズが笑顔で駆け寄る。
「シェドレツキー!」
「お疲れさま。」
「ありがとう。」
自然に並んで歩く二人。
周囲は笑顔。
拍手。
歓声。
その輪の外。
壊れかけた柱の影で、一人だけ黙って見つめる影があった。
1x。
半透明の身体を黒緑の炎が静かに包んでいる。
「……。」
赤い瞳は笑っていなかった。
(変わった。)
神だった頃のテラモンは。
もっと馬鹿だった。
もっと適当だった。
くだらないことで笑って。
自分を見つけると、必ず目を合わせてきた。
手を握る時も。
頭を撫でる時も。
ちゃんと。
自分だけを見ていた。
でも今は。
その目に映るのは。
拍手。
称賛。
評価。
笑顔。
「……。」
そこに、自分はいない。
その日の夕方。
開発室。
シェドレツキーは机いっぱいに設計図を広げていた。
「次はここを書き換えて……。」
ぶつぶつ呟きながらペンを走らせる。
そこへ。
「おい。」
「ん?」
「バカシェドレツキー。」
顔も上げずに返事をする。
「何?」
「忙しい。」
「見れば分かる。」
1xはしばらく黙る。
「……。」
「……。」
「お前さ。」
「うん。」
「最近。」
少しだけ声が震える。
「俺のこと見ないよな。」
ペンが止まる。
「見てるよ。」
シェドレツキーは軽く笑う。
「今だってここにいるじゃん。」
「違う。」
低い声。
「そういう意味じゃねぇ。」
シェドレツキーはようやく顔を上げた。
「?」
「見直せって言ってんだよ!!」
ゴォッ!!
黒緑の炎が一気に噴き上がる。
床の絨毯が腐食し、黒く崩れ落ちる。
「うわっ!」
シェドレツキーは慌てて立ち上がった。
「やめろ!」
「コードが傷む!」
その一言で。
1xの表情が凍った。
「……は?」
「コードが汚れるだぁ?」
炎がさらに揺れる。
「前は。」
赤い瞳が震える。
「俺の炎を見て。」
「綺麗だって笑ってたじゃねぇか。」
一歩近付く。
「なんだよ。」
もう一歩。
「その目。」
「邪魔者でも見るみたいな顔しやがって。」
震える手を伸ばす。
胸ぐらを掴もうとして。
スッ。
何も触れない。
もう一度。
スカッ。
また抜ける。
「……。」
1xは自分の手を見つめる。
半透明の手。
誰にも届かない手。
神だったテラモンは触れられた。
でも。
今のシェドレツキーには、その力がない。
「……ほら。」
シェドレツキーは目を逸らした。
「だから言ったろ。」
「今は無理なんだ。」
その声は。
どこか面倒そうだった。
(なんで。)
シェドレツキーは心の中で思う。
(どうして。)
(まだ俺の前にいる。)
(俺は変わった。)
(もう神じゃない。)
(新しい人生なんだ。)
(なのに。)
目の前の存在だけが。
過去を連れてくる。
神だった頃。
弱かった頃。
恐れていた頃。
全部思い出させる。
「……。」
自然と眉が寄る。
それを見た1xは。
全部理解してしまった。
「向こう行っててくれ。」
シェドレツキーは小さく言う。
「みんなに見られる。」
「……みんな。」
1xが笑う。
乾いた笑いだった。
「ブライトアイズ?」
「デュセッカー?」
「お前を持ち上げてくれる奴らか?」
「違う!」
シェドレツキーが顔をしかめる。
「みんな仲間だ!」
「じゃあ。」
1xが叫ぶ。
「俺は何なんだよ!!」
部屋中が震えた。
「神の時も!」
「人間になっても!」
「ずっと隣にいたのは俺だろ!!」
涙がこぼれる。
黒い炎になって床へ落ちる。
「俺は!」
胸を叩く。
「お前の一部だ!!」
「なのに!」
「なんであいつらばっかり見て!」
「俺だけ!」
「俺だけ日陰なんだよ!!」
シェドレツキーも思わず叫び返した。
「だってお前は!」
息が詰まる。
「俺の。」
その言葉は。
口にした瞬間。
取り返しがつかなくなった。
「不純物だろ!!」
静寂。
「……。」
1xは動かない。
黒い骨が。
パチ。
パチッ。
静かに軋む。
「……。」
赤い瞳から。
黒い涙が流れた。
「……そうか。」
笑う。
壊れたように。
「不純物。」
もう一度笑う。
「そうなんだな。」
ゆっくり背を向ける。
「好きにしろ。」
「完璧な人間。」
肩越しに振り返る。
赤い瞳だけが光る。
「でも。」
静かな声。
「覚えとけ。」
黒緑の炎がゆっくり燃え上がる。
「お前が俺を捨てても。」
「俺は。」
笑う。
悲しい笑顔だった。
「絶対離さない。」
炎が部屋を照らす。
「お前も。」
「お前の世界も。」
「全部。」
その声は愛情にも。
呪いにも聞こえた。
「食い破ってやる。」
黒緑の炎だけを残し。
1xは闇へ消えた。
部屋には静寂だけが残る。
シェドレツキーは震える右手を見つめていた。
「……。」
胸が苦しい。
間違えた。
そう思う自分がいる。
でも。
認めたくない。
机の引き出しをゆっくり開く。
奥に隠していた一冊の本。
黒い革表紙。
2x2が記していた禁断の研究書、その写本。
『ネクロブロキコン』
「……俺は。」
震える手で表紙を撫でる。
「間違ってない。」
そう言い聞かせるように呟く。
「もっと力があれば。」
「もっと完璧になれれば。」
「全部守れる。」
「全部正しくできる。」
その囁きに応えるように。
閉じられていた本が、ひとりでにゆっくりと開いた。
黒い文字が、まるで生き物のようにページの上を這い始める。
その瞬間。
誰にも聞こえないほど小さな声で、本は笑った。