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瑠璃🍫✨💭ྀི
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広睦くんはチラっと私の背後を見て、私に向き直った。私はまだ声も出せずにいた。少し焼けた肌が痩せたようにも見せた。
「あ、旅行はどうだった、どこへ行ったの」
自分でも的外れな質問なのはわかっているけど口を突いて出てきたのがこれだけだった。
広睦くんが力なく眉を下げる。
「聞きたい? それ」
「うん。でもまずはそこじゃない、よね」
広睦くんはわずかに微笑んで直ぐに深刻そうな表情に戻った。遠慮がちに距離を置いて私の横に座る。
「今は違うから」
「……うん」
「あの日、なんで怒らないんだよって自分の事を棚に上げてイラっとした。怒ってくれたら言い訳もできたのにって。けど、気づいちゃったんだ。春美さんが怒るわけないじゃんって。どのみち別れるつもりで、別れるきっかけ探してる人が怒るわけないよなって。……俺に気持ちが無い人が俺の動向で何か感じるはずがない、って……」
ずっと、別れなきゃ、と思っていたことが広睦くんにも伝わっていたんだろう。
「そんなことないよ。私が怒らなかったのはそんな権利が無いから。それと……広睦くんの気持ちがわかってたからだよ。最初から違和感があったの、だってあなた、私を手放さない行動を取るばかりで一度も好きだって言わなかったじゃない。騙しきれてないのよ。そういうとこ、人の好さが出ちゃったんじゃない? 嘘つけないとこ」
広睦くんは目を見開き、バツが悪そうに顔を逸らした。
ずっと私に押しが強いふりをしながら肝心な一言が無かった。あれだけわかりやすく感情表現をするんだったら好きだって何度も言いそうなのに。
それに……キス以上の事はしなかった。しようと思えばいくらでも出来たのに。
「言わなくったって態度でわかるだろ」
「はは、だからー、わかったんだよ。態度で。だてに年食ってないよ私。そりゃあ、年齢より恋愛経験少ないかもしれないけど、相手が自分の事好きかどうか、言葉より態度の方がわかる時あ……る……」
思い出しながら顔を上げるとそこには私をまっすぐ見つめる広睦くんのすがるような瞳がある。私、何かを……見過ごしている。
熱を孕んだような目に涙が滲んでいる。
「頼むよ、ちゃんと、見て。俺の気持ちを軽く扱わないで」
広睦くんとの日々が次々と脳裏に浮かぶ。
でも、あの時は……。それから、あの時だって……。
パチパチと瞬きして広睦くんの顔をよく見ようとする。
自分に向けられる相手の目が自分をどう思っているか言葉にされるよりわかる時がある……。夢中になっている相手に向ける目には……。
「あなたは確かに……私を……。広睦くん、私を好きになったのね? 」
途中まではなんでそんなに私にこだわるのって思っていた。ムキになってるような嫌がらせに近い行動はいつしか、何とか振り向かせたい、気にかけて欲しい、そんな態度に変わった。
「そうだよ……」
恨めしそうに、でもはにかむように広睦くんが頷いた。
「そうだよ、振り向かせたいのは仕返しじゃなくて、俺の方を見て欲しいからだって気づいた時には好きになってた。結局さ、好きになったら俺が振られるんだ」
私が振ったことになるの、か……?
別れなきゃならないのに煮え切らなかったのは私の方だ。 顔を歪ませる広睦くんの髪にそっと触れる。広睦くんがその手に自分の手を重ね、目を閉じた。わずかに唇が震えている。
「ね、聞かせて。広睦くんの言い訳」
そう言うと綺麗な目を開き、うんと頷いた。
「元カノ、入籍した人の事だけど。あの人と別れてからも何人か彼女が出来たんだ。けど、だいたい向こうから熱烈に言い寄ってきてそのくせ『思った人じゃない』とかすぐに終わって。俺とつき合うことをステイタスみたいに友達に会わせる人、SNSに乗せる人。そんなのが続いて。イライラしてた。みんな俺の気持ちなんてどうでもいいんだよ。極めつけ、元カノな。あの人、その後どうなったと思う? ……最近結婚したらしいんだけど、相手俺の2つ上だって。結局俺と年齢2個しかかわんない相手と結婚したんだぜ? 俺が振られたのって何だったの」
広睦くんは乱雑に髪をかき上げ、ため息を吐いた。
「多分……多分だよ? 広睦くんと別れて色々探したけど結局その年の子としかうまくいかなかった……んじゃないかな? 」
「俺もその後、あの年上の元カノを引きずったまま他の人と付き合って大した恋愛してないから、人の事言えないのかもしれないけど」
「前に私に話してくれたことだね」
「うん。年下の男ってそんな軽く見られることなの。俺と一緒にいられないのは何十年後かに俺が若い女と浮気するに違いないからだって決めつけて、その時の自分の心配で、さも未然に防いで俺との別れを最善の選択とばかり満足されて、別れ以外正解はないみたいに……若いから何。まだまだこれから出会いがいっぱいあるから何。次々に誰か寄ってくるから何。 俺の気持ちなんて片手で払いのけられてしまって、何で俺は振られて平気だって気にも留めてもらえないの。俺の希望は聞いてもらえないの。一緒にいたい、それが叶わないの。貴重な時間を使えないってなんだよ、俺だって時間が無限にあるわけじゃないだろう。俺の今の気持ちは……これからいっぱい出会いある、じゃなくて。今目の前の人と一緒にいたいって言ってんの」
広睦くんのため込んでいた気持ちがあふれ出る。『復讐』広睦くんが言った意味がわかる。私はことごとく広睦くんの地雷を踏み抜いていったってこと。
「ごめん、広睦くん。ごめん……」
何て言っていいかわからなかった。
「俺ね、嬉しかったんだよ。あの日、春美さんに告白されて。ぱっと目の前が明るくなって、きっとこの人は違うって。……嬉しかった」
「それなのに、あなたの年齢を知ってすぐに告白をなかったことにしようとした」
「うん。あー、そう。ってね……それなら思う通りにしてやるよって。俺と同じように、それ以上に傷つけばいい……って。でも、春美さんにとってどうでもいい奴が大きな傷なんてつけれるわけがなかった。あと、ちょっと友達に言ったのはごめん。俺は復讐してやるぞって決意表明をさ、友達の前でしたんだ。それだけだったんだけど、馬鹿だった。本当にごめんなさい」
私は何度も首を横に振った。
コメント
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読み終えました……広睦くんの本心が一気にあふれ出た回でしたね。彼の「年下だから」って理由で軽く扱われる苦しさが、すごく胸に刺さりました。「今目の前の人と一緒にいたい」って叫び、まっすぐすぎて泣きそうになった。春美さんの「態度でわかる」って言葉がまた、後半でがらっと意味を変える仕掛けも好きです。お互いがお互いをちゃんと見ようとし始めた、そんな希望のあるページでした。