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毎日サイコー!ホント幸せ!
上司は優しいし、先輩も親切だし、お給料も高いし!
定時で帰宅できるし。
あー、転職して良かったぁ!
ドサッと電車の椅子に座る。
あー…このベルベットの、なんとも言いがたい、ふわふわしすぎず硬すぎず。
最高だぁ!
 誰もいないし…
えいっ!
体をベルベットの上に横たえる。
あー…ホント、気持ちいい〜。
この感触〜。
一人きりの車両を満喫していると、視界が陰った。
誰かいたの?!
 急いで体を起こすと、目の前にふわふわの白のセーターに、赤いベルベットのベレー帽をかぶって笑うきれいな女の子がいた。
「やっぱり、優花ちゃんだ」
「楓ちゃん!」
びっくりした。
高校時代から大好きな友達とまた会えるなんて!
やっぱり、転職して地元に帰ってきて良かったぁ!!
「うわぁ!楓ちゃんだ!久しぶり!」
「うん、久しぶりだね」
楓ちゃんは、ブラウンに染めた髪をふわふわ揺らして、隣に座った。
「優花ちゃん、帰ってきたんだね。県外出てたよね?」
「そうなの!先週転職して、またここに帰ってきたんだよ!」
「そっか、だったらまた遊べるね」
「うん!絶対!ゼッタイ遊びに行こう!」
「うん。約束ね。どこで降りるの?」
「次の駅!」
「そう。…良かった。」
「え?」
「ううん。この電車、変な噂があるから…。」
「変な噂?」
「そう。女の人に会ったら死ぬとかね…」
「あはは!懐かしい!そういう怪談あったよね!」
「うん、そうだね。ただの怪談だね。…わたしは、もう少し先まで乗るの。だから、今日はここでお別れだね。」
アナウンスが到着を告げる。
「えぇー…残念。今度、高校の時に行ってたカフェ行こうね!」
「もちろん。またね、優花ちゃん」
「ばいばい!楓ちゃん!!」
ホームに降りて、振り返って、大きく手を振る。
「またねー!!!」
楓ちゃんは、優しい顔で微笑んで、手を振り返してくれた。
楓ちゃんの後ろの女の人がクスクス笑って、その人も手を振ってくれた。
知らない人も、またねー!
あー、最高だよぉ!
す っごく幸せ!
‐ガシャン
時計を見るとまだ、19時30分。
‐きゃぁあー
あー、転職してよかったぁ!
‐やめろー!
こんな時間に帰宅できることなんてなかったもん!
‐ドカッ
騒がしい人の声を後ろに、スキップ踏んで、改札を抜けていく。
「逃げろー!!」
何だろう?
振り返る。
3メートル先から叫び声が聞こえた。
「包丁持ってる!!」
瞬きすると、ものすごいスピードで走ってくる男が、目の前にいた。
「邪魔だ!どけっ!!」
男の手が、私に向かって飛んでくる。
包丁が頬を掠める。 痛い。
よろけて、バランスが崩れる。
躓いて、後ろ向きに倒れる。
体をひねって、体勢を整えようと、手を伸ばした。
手が、エスカレーターの段に当たって滑っていく。
顔が、エスカレーターの角にぶつかって、何かの砕けた音がする。
太ももに何かが突き刺さる。
生暖かい。
鈍い音。
悲鳴。
…止まった。
あ ぁ…全部止まった。
終わった?あぁ…良かった…。