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#異世界転生
しめさば
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#ロマンスファンタジー
花月夜れん
361
榎本くもり
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光の精霊の国、ライトコール。
この国の第二王子として僕は産まれた。
その身に、聖なる力を宿して。
「何故、女ではなかったのか」
「あの耳、この国での加護は期待できぬ。女なら、聖女として光の精霊様に――」
「申し訳ございません」
大人達の会話が、聞きたくなくても僕の耳に入ってくる。
「アリスト」
「アリスちゃん」
「アリスト様」
皆が居てくれるから、僕はこの国を嫌いになんてなれないけれど。
ーーー
滅びの予言を回避するために、聖女を呼び出す。
そう決まって、僕は反対出来なかった。色々な国を探してはみたけれど見つからなかったから、この国を守るためには仕方がないと思った。
すべてを救ってくれる聖女が現れると信じて。
聖女召喚の儀式を行った日、僕達の前に現れた少女は、聖なる力はあるが魔力がほとんどない、不完全な聖女だった。
ーーー
「どうして、こんなことに――」
目の前に広がる絶望の光景。
真っ黒に染まった自分の国。家族や民達は魔物へとその姿を変え、希望の光など何もない世界。
「やり直したい、こんなことになったのはきっと聖女が不完全だったからだ。僕は、こんな未来なんて、――いらない!」
「僕達が力を貸そうか?」
どこからか、声が聞こえる。
「ただし、過去を変えるとなると代償はついてくるよ? それに君が思った通りになるとは限らない」
「それでも、構わない。僕は過去を変える」
「そう、なら契約しよう。君なら僕達を呼ぶ力があるからさ」
「契約すれば、過去を変えられるんだな?」
先ほどの声が答える。
「あぁ、けれど君の未来と聖なる力すべてを払ってもらうことになるよ。大魔法使いの子孫、そして竜の血を引く子」
「なんだい、それは――」
目の前に、竜のような人のような、不思議な人物が立つ。
「時の精霊が仕えるのは竜の血を持つものだけってことさ」
「僕が…………」
「契約の指輪だ」
そう言って、時の精霊は僕と契約した。
「僕は、過去を変える。例え、どんな犠牲を払っても――」
ーーー
「ここは何処だい?」
「ここは時の中、過去へと向かっている」
「そうか――――」
「契約したあの瞬間から、君の未来はすべて消失した。今の君は切り取られた時の精霊、つまり僕と同化した存在だ」
「ふぅん」
「さぁ、ついたよ」
見覚えがある。ここは、聖女召喚の魔法陣の部屋だ。
「アリスト、君が、過去に召喚するんだ。聖女を」
「僕が?」
「そう。不完全な聖女を完全にする存在を」
「…………」
「この召喚をすれば、君という存在は僕にかわり、僕はこの時間に囚われる」
最愛の人の記憶とすべての魔力、僕にはもう不要なものだ。
ーーー
「いたっ……ぁ……」
僕が見た聖女とは違う女性が、魔法陣に落ちてきた。
彼女が――。
現れたもう一人もまた、不完全だった。
そして僕じゃない、過去の僕と彼女は出会い、恋に落ちた。
僕が出会えなかった。出会うことが出来なかった彼女と。
ーーー
過去を変えた。それがまるで波紋のようにひろがり、世界が僕の知る世界とは別の形へと姿を変えていく。
あの時間がくると、僕はまた過去へと行き、また、繰り返す。
その度に、違う未来が、似ているけれど違う世界が増えていく。
「あの先に、僕が行けないように、あの時間アリストという存在は消える」
僕の願いは、過去の僕を巻き込んでしまった。
ーーー
僕はそっと、魔法陣に触れる。
「白いリングが現れなかったのは僕の聖なる力を、過去を変える代償に使ってしまったから」
「魔力は?」
「……逆転の儀をするとね、魔力だけは戻るんだ。ただ、未来の僕という行き場を失った魔力は過去の自分へと紡がれる」
「この世界は」
「何度目かな…………。リサに出会った他の僕達は、皆、彼女に出会うためにまた過去に彼女を召喚をするんだ。きっと君も――」
青い眼は強い光を輝かせている。
「そうだね」
コメント
1件
切なくて美しいお話でした……。「僕が出会えなかった彼女」という一文に、胸がぎゅっとなりました。過去を変える代償として自分自身が時の精霊と同化し、別の未来に進む自分だけが幸せを掴んでいく——その構造がもう、言葉にできないくらい切ないです。何度も繰り返すその輪廻の中で、彼は何を思いながら魔法陣に触れているんだろう。アリストの存在がだんだん薄れていく感じが、読んでいてじんわりと効いてきました。素敵な番外編をありがとうございます🌷