テラーノベル
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静岡の細く靭やかな指先が、流れるような動作でキーボードを叩き、モニターの群れが深い青から「玉響」の象徴である禍々しい紅へと染まっていきます。
「……神など居ないも同然。なにせ、彼等は見ているだけなのだから…ね」
静岡の瞳には、獅子奮迅の構成員たちが脳内で繋がっている巨大なネットワーク図が映し出されていた。数千という光の点が、網の目のように蠢いている。
「彼等がチップを通じて得ているのは『命令』だけじゃない。恐怖を揉み消し、痛みを遮断するための『安定した波形』。……なら、そこに少しばかりの『不協和音』を混ぜてあげよう。」
静岡が最後の一打をエンターキーに叩きつける。
その瞬間、中部地方全域の電波塔を経由し、目に見えない電子の猛毒が獅子奮迅のネットワークへと放流された。
「……反撃の狼煙だ」
その頃、岐阜と長野の県境付近。
闇に乗じて侵攻を開始しようとしていた獅子奮迅の先行部隊に、異変が起きた。
無表情に銃を構え、統率の取れた動きを見せていた男たちが、突如としてその場に膝をつく。
「……ア、ガッ……ガ……ッ!!」
感情を殺されていたはずの彼らの口から、獣のような悲鳴が漏れ出す。
静岡が送り込んだのは、脳内チップの制止機能を強制解除し、これまでに受けた「全ての負傷」と「死への恐怖」を一気に脳へフラッシュバックさせるという、残酷なまでの電子の罠だった。
「……うわ、見てよ岐阜。静岡もよくやるよね〜」
暗闇に潜んでいた長野が、双眼鏡を覗きながら口角を上げる。
先ほどまで機械のようだった敵兵たちは、今や己の身体を掻きむしり、幻覚に怯え、味方同士で銃を向け合う地獄絵図へと変わっていた。
「静岡、やりすぎだ。……だが、効率はいい。」
岐阜が冷徹に告げ、インカムのスイッチを入れる。
「総員、ターゲットの統制は完全に崩壊した。これより清掃を開始する。……一人も残さず、ぶっ潰せ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「うふふ………君が大事に育てた人形たちは、自分自身の意識という『檻』の中で発狂している……実に愉快だねぇ」
静岡はモニターの向こう側、獅子奮迅の本拠地へとハッキングの矛先を向ける。
「さて……次は君達の心臓部を直接叩こうか。山梨、準備はいい? 私が今から、本拠地のセキュリティ・ゲートを『招待状』代わりに全開放する」
『待たせすぎだぜ静岡、玉響の教祖様がお通りだって、派手に触れ回ってやれよ?』
爆音と共に、山梨のバイクが夜のハイウェイを疾走し、獅子奮迅の本拠地へと突っ込んでいく。
◆◇◆◇◆◇◆
「さぁ!! 門限破りの時間だぜ!!!」
静岡のハッキングによって、電子の城壁がガラス細工のように砕け散る。
獅子奮迅の本拠地——要塞化した巨大な廃ビルへ、山梨の大型バイクが正面ゲートを粉砕して突入した。
背後からは静岡が手配した「玉響」の実行部隊、通称『信徒』たちが、黒い防護服に身を包み、無機質な軍隊のように追随する。
やい
マカロン
5,031
パンプキン
515
「偽物の神に操られてる連中に、神罰ってモンを教えてやれ。神は、俺達玉響だけだってなァ!!」
山梨がバイクのハンドルから手を離し、走行中に二丁のサブマシンガンを抜く。
迎撃に現れた獅子奮迅の構成員たちは、静岡の「不協和音」によって脳を焼かれ、銃を構えることすらおぼつかない。そこへ山梨の弾丸が正確に突き刺さり、血の花を咲かせていく。
「引っ込んでろ三下ァ!!」
バイクを横滑りさせ、敵の防衛線を強行突破。
山梨はそのままエレベーターホールへと踊り出る。そこに待ち構えていたのは、他の構成員とは明らかに違う、強化型の外骨格を纏った数人の「守護者」たちだった。
『山梨、気をつけろ。その連中、チップが二重に埋め込まれてる。私のノイズを遮断して、強制的に戦闘継続してるみたいだ』
インカム越しに静岡の警告が飛ぶ。
守護者たちが重機関銃を向けた瞬間、山梨は不敵に笑い、懐から黒鉄色に輝く手榴弾——玉響の秘宝を模した特製爆弾を取り出した。
「二重だろうが三重だろうが関係ねぇ! 纏めて地獄へ送ってやるよ!」
山梨が空中へ放り投げた爆弾が炸裂する。
ただの爆風ではない。中には静岡が開発した「指向性電磁パルス」が仕込まれており、至近距離で浴びた守護者たちのチップが火花を散らしてショートした。
「……あ、ガ……」
最強の防壁だったはずの守護者たちが、沈黙した機械のように動かなくなる。
「静岡! 頂上までのルートは!?」
『確保したよ。最上階、獲物の部屋まで直通のエレベーターが動いてるよ。……それから、山梨。首領から伝言。——「ゴミ一つ残すな」だって。』
「ハッ!了解だ。……掃除の時間だな」
山梨は動かなくなった死体の山を乗り越え、最上階へと向かうエレベーターに乗り込んだ。その拳は、獲物の首を獲る興奮で熱く震えていた。
コメント
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第4話、読み終わりました……! 静岡の「不協和音」で敵兵が崩れ落ちる場面、読んでいて背筋が冷えました。あの「神など居ないも同然」という台詞も、静岡の冷たい諦念と狂気が混じっててすごく好きです。それでいて、動き出す山梨の「門限破りの時間だぜ」の掛け声が痛快で、一気にスピード感が変わるところがたまらなかった。アクションの切れ味と、各県のキャラの温度差が絶妙ですね。続き、めちゃくちゃ気になります!