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イステーファル連邦を敵と見立てた俺達は、いくつかの策を弄してから山を下った。

「さて。お馬鹿さんを探しに行こっか!」

馬鹿…?

「セーナさん。ゴミですよ」

ゴミ…?

「そうだ。クソッタレ野郎を探そうぜ」

クソ…?

まさか俺のことじゃないよな?まさかな……

俺が倒れたことにより、みんなは今回の『エリー失踪事件』を俺が気に病まないよう気楽に話してくれている。

それはわかるんだが……

何だか俺のことを馬鹿にしているように聞こえるのは気のせいか?

気のせいだよねっ!?

「俺やライルはいいんだけど、聖奈達までここから行かなくてもいいんじゃないか?」

「始めはそのつもりだったよ。でも、放っておくと セイくんが無茶しちゃうからね。私達はお守りだよ」

子供かっ!!

いや、子供だな…意識外のこととはいえ、癇癪起こしてぶっ倒れるんだからな……

「私が運転しようかっ?!」

「セーナはやめてくれ」「セーナさん。私も事故で死にたくはないので」

「ええっ!?」

やめてくれ。

アンタ1台目のア◯ファードを5分で廃車にしたのを忘れたのか?

聖奈の運転は下手くそ…というより、わざとやっているんじゃないかと思うくらい怖い。

気狂いきちがいに刃物。聖奈に車。

これは同義語だ。




いつも通り、俺の運転で街道を走っていく。

最早自重はしない。

幾人ものすれ違う人達が驚き慌てているが関係ない。

警戒している兵を置き去りにしながら、俺達は大きな街へと辿り着いた。




「じゃあ私は街でライルくんと調査してくるね。夕方にはここへ戻ってくるからお迎えよろしく!」

ここは街から少し離れた森の中だ。

流石によく知らない土地に女性だけを置いて行くのは無理だったので、聖奈ライルペアとはここで別行動となった。

俺とミランはこのまま街道を進んで行く。

次の目的地は未定だが、また大きな街があればそこで調査をする。

「ああ。ここはイステーファル連邦なんだよな?」

「そうだよ。イステーファル連邦の数ある州の一つだね。流石に街の名前はわかんないけど」

連邦制を取り入れているイステーファルは、幾つもの国を併合して大きくなっている国である。

併合した国には州として自治権を残しているので、州により法律が少し違うが、俺達には関係ないことだ。

「大陸地図なんてないからわかんないけど、恐らくこの南西部が地域としては最大だと思うよ」

「その中で最も大きな国なんだよな?頑張って見つけよう」

俺達はエリーを探してはいない。

探しモノは、首謀者ただ一つ。







「見つけました。降りましょう」

ミランの指示に従い車から降りた。

どうやら街を見つけたようだ。

悪路のうえに俺が飛ばしている為、車は跳ねまくっているが、ミランはサンルーフから身を乗り出して街を探してくれていた。

危ないからやめて欲しいが、今は緊急時なので何も言えない。

転移で車を置いてきた後、俺達は街へと向かって歩いた。




「とりあえず宿を取りましょう」

手持ちの魔石を冒険者組合で換金した後、聖奈達との約束の時間がかなり近づいている為、転移用に宿を借りることに。

「なぁ。車を大っぴらに使っているんだから、転移も使えばいいんじゃないか?」

「車であればおかしな魔導具で済みます。しかし、転移魔法はセイさんしか使えません。エリーさんもですが、それを知っているのは私達だけですから、結果使った時点で証拠になってしまいます」

エリーは転移魔法どころか魔法を使わせて貰える状態ではないのだろう。

ここまで用意周到にしてきた実行犯が、魔法使いの口を塞がないとは考えられない。

「最悪の事態での言い逃れの為か…」

犯行を行った人物が特定できない場合、この国の上層部の人達には消えてもらう。

恐らく建物や街ごと。

その時にバーランド王国の犯行だとわかっていても証拠を残さない為に、転移魔法は大っぴらに使えないという話だった。

立場上守らなければならないモノが多いのはわかっているつもりなんだが、仲間一番大切なモノの為なら全ても捨ててもいいんだけどなぁ。






「じゃあ報告するね」

聖奈達を迎えに行き、宿から城へと転移した。

今は話し合いの時間だ。

「市井の人達の話では、変わったことはないって言ってたよ。時間がなくて上の人達のことは調べられなかったの」

「それは仕方ないな。明日は俺達がいる街を調べるんだろ?」

「そうだね。その前に、罠にニワトリが掛かっていないか確認してからね」

ニワトリなんていいもんじゃないだろ。う◯こだ!うん◯!!






「じゃあ頼んだ」

昨日の宿へ戻ってきた後、俺とミランは車を降りた場所へと転移した。

「よし。サクサクいくぞ」

「はい!見張りは任せてください!」

うん…あまり張り切って、車から落ちないでくれよ?

南西部の…この国の街道は、北西部とは違いほぼ真っ直ぐ敷かれている。

大陸を分断する山脈を越えてこちら側へ入ってからは、山と言える山を見ていない。

砂漠というわけではないが、サバンナのように起伏が少なく森も少ない。

時々見える小さな山には草が生えている程度で密集した木などは確認できず、岩肌が丸見えだ。

街の建物も木造ではなく、大きな岩を削り出したような造りや石を組み合わせて組み上げた建物ばかりだった。

「この国は何だかおかしいですね」

「そうだな。元帝国でもここまでではなかったな」

元帝国とはバーランド王国の前の国のことだ。

「活気が少ないといいますか…何だか何か見えないものに縛られて暮らしているように感じます」

「優しい言い方だな」

ミランは言葉を濁しているが、明らかに軍事力を背景に国民を統制している。

「殆どの国民がここしか知らないからな。知っていればクーデターなりなんなり起こして、自由を手に入れようと動くだろう」

「はい…地球とは違い情報を手に入れる術が少ないですからね」

それだけではない。

国外に行くなんてことは、この世界ではハードルが高いからな。

地球でいえば宇宙に行くことくらい普通の民間人には難しいことなのだろう。

俺達がこの国に入った手段は密入国だ。

国境での出入りは国が管理しているから証拠が残ってしまう。

逆に街などに入る時には商人カードを提示している。

俺とミランの場合はミランのカードを。

聖奈達はライルのカードを。

街は入る時に身分や職業を確認するくらいで、帳面に記載することもされることもない。

街に入るのに一々そんなことをしていては、紙が高価なこの世界では金が掛かって仕方ないからな。

これは北西部でも同じだが、バーランド王国では紙が安い為、街に入る時も情報が記載される。

ちなみにライルとミランの商人ランクは両者ともランク3だ。

国王である俺と取引すればランク4だが、態々自分の店との取引でランクを上げなくてもライルやミランの名義の店を作っているから勝手にランクは上がる。

それにランク4だと目立つからな。

ランク3でも目立つが4よりは悪目立ちしない。

こんな時の為の身分証としても使えるし。

俺があれこれ考えて気分を落ち着けていると、ミランから声が掛かった。

「軍隊です!止めてください!」

「軍隊?」

少し予想外な言葉だったので理解するのに時間は掛かったが、理解する前に車を停めて二人とも降りた。

「俺には見えないが…いたんだよな?」

「はい。恐らく一万人規模の軍勢だと思います」

こんな荒野に何の用だ?演習か?

「殆どそうだが、ここも例に漏れず隠れる場所がない。一旦車を置いてくるよ」

「わかりました。恐らく一キロ以上離れているので時間はあります」

ミランは車の上から見ていたのだから、恐らく向こうからはまだ視認出来ていないはずだ。

そもそもミランは双眼鏡も使っているし。

兎に角急ごう。


俺は軍隊と聞いて少し昂った気持ちを抑えながら、転移魔法を発動させた。

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