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愛の充電器がほしい

42 - 第42話 あたたかい家族

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2025年02月12日

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日曜日の午後のファミレスは、ファミリーというだけ、親子連れで賑わっていた。


まだ正式な家族ではなかったが、美羽と和哉、颯太と紬は、待合室にある番号順に呼ばれる名簿にクスノキ 4人と記入した。


「美羽、少し待ち時間あるみたいだけどここで待つ感じでいいよね」


「私は問題ないけど、どれくらいで呼ばれるの? 長いなら、車で待つ?」


「あと2番目くらいだって」


和哉は仲睦まじい様子を見つめてはニコニコしていた。横にいた紬に話しかける。


「お父さんってさ。美羽といつもあんな感じなの?」


「……は、はい。そうです」


「そっかぁ」


見たこともない笑顔をしていた美羽を見て、和哉はホッとする。実家で過ごしていた時は、無理して周りに合わすことの多い美羽。姉の立場と、血縁関係を配慮しては、いい子を演じて続けてきた。

父の和哉の前では、あまり柔らかい笑いを見えることは少なかった。

幼少期の颯太と比べて、大人になり、スーツ姿が様になっていて、本当にっとしていた颯太なのかと疑わしい。


「颯太くん、今、仕事って何の仕事してるの?」


「あ、えっと、東京でコンピュータープログラマーの仕事をやっています。  主にパソコンでのデスクワークなんですが、本社勤務なので最近は企業同士の接待が多いですかね」


「へぇー、今流行りの仕事だねぇ。都会の人だわぁ」


「そうですかね」


腕組みをして、足を組む和哉はため息をつく。


「颯太くんは、立派な仕事してるし、俺は、農家になるより安心できると思うけどなぁ。最近、母さんは、体調が良くなくて、感情の起伏激しいからさ。気持ちが落ち着かないのよ。昔のこと、気にしてるんだよね」


横から、美羽は顔を出して、間に入る。


「昔って、従兄の翔太郎おじさんのことでしょう」


「そう」


「お待たせいたしました。4名でお待ちのお客様。ご案内いたします」


レストランの店員さんに声をかけられると、4人は、そのまま、静かに着いていった。

奥にあるふわふわのソファが置かれた座席に案内された。

4人用にしてはテーブルは大きめだった。


「広くてちょうどいいね」


「そうだな」


「ご注文が決まりましたら、ベルでお知らせください」


店員は、水が入ったコップ4つと箸とスプーン、フォークが入ったカトラリーケースを置いていく。

紬は楽しそうにお子様セットのメニューをマジマジと見た。


「紬ちゃん、何食べたい?」


「私、このハンバーグセット。ジュースが付いてくるやつかな」


「全部食べられるのか?」


「うん。お腹空いてるから大丈夫」


「今日は、俺が出すから、好きなのを頼みなさい」


「え、父さん、いいよ。生活大変なんでしょう。私が出すから」


「良いから。出させて。たまにしか会えないんだからこの時くらい良いでしょう。」


「んじゃ、お言葉に甘えてごちそうになります」


「素直でよろしい」


和哉はメニューの金額を見て、ドキッとしたが、気にせず注文するように促した。


「すいません。ありがとうございます」


「おう、気にしないでどんどん頼んで」


颯太と美羽は、頼んでいいと言われたが、遠慮しつつ、レストランの定番でお得なメニューを選んで頼んでいた。

和哉はミニまぐろ丼を注文して終わらせていた。


「それだけでいいの?」


「最近、食べすぎだって健康診断で言われたからさ。今日はこれだけにしとくわ」


「今日くらい内緒で食べたらいいのに」


「そ、そうだよな。母さん、結構、厳しいから。お茶碗に乗るご飯も少なくて……。食べても怒られないもんな。見てないし。んじゃ、マグロの刺身定食にしよう」


「マグロは譲らないんだね」


注文を終えて、改めて、話の続きをした。

紬は、その間、颯太にスマホを預けられてイヤホンでアニメ映画を見ていた。

大人な会話はなるべく聞かない方がいいなという配慮だ。


「んで、さっきの話の続きだけど、俺は、別に2人は結婚しても良いと思うの。ただ、母さんが気にしてるのは、昔の話で、颯太くんが引っ越したって言ってただろ」


「そうですね。あの時、母から突然、引っ越しするよって言われました」


「そう。あの時、結構修羅場でねぇ……。仲が良かったママ友だったから困ったもんだよ」


「私も話聞いてたよ。颯太さんのお父さんとウチのお母さんが従兄妹同士だったって」


「うん。そう、俺も、その時初めて知ったよ。あいつ、黙ってたんだよ。知ってたのに。後から、聞いたらさ、学生時代に2人は付き合ってたんだってさ。従兄妹だけど」


「あー、そうだったんですか」


「お母さんと颯太さんのお父さんと付き合ってた?! てか、血繋がってても付き合うんだね。好き合ってたってことか。

ん?ちょっと待って、お父さん。学生時代に付き合ってただけじゃ引っ越しにはならないよね」


和哉は、紬の横に移動し、イヤホンの上にさらに両手で耳を塞いで話す。


「密会……してたらしい」


「マジっすか」


「ドロドロのドラマみたいじゃない」


「どこでバレたの?!」


「母さんが、颯太くんのお母さんと鉢合わせしたって自宅で……」


「うわ、最悪……」


「あちゃー…。父さん、やってしまったのか」


颯太は目を覆う。美羽は、開いた口が塞がらない。


「そういうのがあったから関わりたくないって母さんはいうわけ。でもさ、結局は結婚って1番大事なのは本人同士でしょう。親は関係ないと俺は思うわけ」


「まぁ、確かにね。え、でも、父さん、良くお母さんを許せたね」


「それは、美羽のおかげな部分もあるんだ」


「私?」


「そう。血の繋がっていたら、逆に離婚してたかもしれない。でも、美羽は身寄りは無いし、どこにも預け先ないんだ。

それを考えたら、俺は、別れちゃいけないって思ってさ。母さんの行動も目をつぶることにしたんだよ。そもそも、恭子に

寂しい思いをさせた俺の責任でもあったから」


「え?」


「俺も悪さしてたからさ」


「えーーー?! 悪さってどういうことよ」


「もう、紬ちゃんに話聞こえるだろ。この話するのやめよう」


和哉は耳を塞いだ手をよけた。紬は夢中になって映画を見ていたため、気にしてなかった。


「つまりだ。親同士の関わりが少なければ、結婚はすんなりできるんじゃないかと思われる」


「あ、すいません、重要なこと言い忘れたんですが……」


「え? 何?」


「俺の両親ですが、高校生の時に交通事故で亡くなってます」


「え?! え、えーー?!」


和哉のびっくり度合いは半端なかった。颯太を二度見する。


「でも、亡くなったからと言って、母の償いは終わって無いですし、良くない気がしますよね。お母さんに認められない結婚は幸せになれない気がします」


「亡くなったの? それはそれで良いんだか悪いんだか複雑だね。ご両親がいないのに、しっかりしてるね。颯太くん、シングルファーザーってことだろ」


「全然、そんなことないです。毎日失敗の連続です。仕事は失敗は少なくできるんですが、育児となると、学校の持ち物渡し忘れたり、給食着アイロンしないで持たせたら、担任の先生に怒られまして、まだまだです。わからないことだらけで

恥ずかしい話、紬と先生に怒られてます」


「ちゃんとお父さんしてるじゃない。俺なんて、全部母さんに任せっきりだったから。すごいと思うよ。感心するわ」


「そうだったんだ」


美羽は、そこまでミスが多いとは思わず、母性本能が目覚め、なおさらやってあげたい気持ちが込み上げた。


注文していたメニューが次々と運ばれてきた。4人分のメニューが揃った。


両手を合わせて、いただきますと言うとタイミング悪く、和哉のスマホが鳴った。


「なんだよ。これから刺身定食ありつこうと思ったのに。ごめんね、みんな先に食べててね」


和哉は、レストランの外まで出て、電話に出た。屋根のあるところに雨宿りしながら電話で話していると、弱かった雨がどんどん強くなり、土砂降りになっていく。


「わかった、行くから。落ち着けって。琴音、そこで待ってて」


屋根の淵からぽたんぽたんと雨粒が地面に落ちていく。和哉の表情は険しくなっていた。


美羽と颯太は、満腹セットと言われるハンバーグとエビフライなどお得にプレートに乗っている定食に舌鼓を打っていた。

紬は、可愛い国旗がついたハンバーグセットを食べて笑顔が溢れていた。


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